人気芸人「ぼる塾」のメンバー4人によるリレーエッセイ連載。
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今回は、あんりさんのターン!
誰に対しても臆せずに突っこんでいる姿が印象的なあんりさんだけど、幼い頃はとっても人見知りだったとのこと。今はだいぶマシになったというその訳は?
「私の友達は私の友達。あんりの友達は私の友達よ」 by 田辺さん
CanCamをご覧の皆さま、お疲れ様です。
2023年の目標は、フットワークの軽い人間になり、新しい友達を作ることです。
田辺さん「私ね、最近あんりについて気付いたことがあるのよ」
2022年が終わる頃、田辺さんが私のところにやってきて言った。
いつも田辺さんは私をチラチラと見てくるのだが、このときは真っ直ぐに正面から見つめてきた。
一体何に気付いたというんだろう。
田辺さん「あんりって、ガード固いわよね」
予想外の言葉になにも言えずにいると、田辺さんは続けた。
田辺さん「やっぱり自覚ないのね。あんた、だいぶ人見知りよ」
田辺さんは、たまに勘が鋭い。
大人になってから誰かに人見知りだと言われたことはなかった。
でも私は子供の頃は特に、結構な人見知りだった。
田舎に行って親戚の集まりに参加したときもひとりじゃ居られなくて、おじいちゃんの横にひっついてた。
食事のときもおじいちゃんの隣、大人が集まって難しい話をしているときも遊んでる子供たちのところへは行かずにおじいちゃんの隣にいた。
大人の難しい話し合いを聞き流して、自分の世界に浸るのが好きだったから、全然苦じゃなかった。
自分の世界の中の私にはたくさんの友達がいて、輪の中心で楽しく話している。
自分の世界は自分の思い通りだ。
親戚の人たちはそんな私を見て、「甘やかされすぎだ」「もっと社交的にならなきゃ」と注意したが、おじいちゃんは自分に懐く孫をとにかくかわいがってくれた。
そんな人見知りの子供あんりに、ピンチが訪れる。
家族で遊園地に行くと、私だけが絶叫系が苦手なので、いつもお母さんとお父さんが二手に分かれて、2人のお兄ちゃんとジェットコースターに乗って、どちらかが私と一緒に待ってくれた。
でも、ある日ジェットコースターの列がものすごく長かったときがあった。
いつもの乗り方をしたら、結構な時間を使ってしまう。
どうしようか悩んでるお父さんとお母さんの会話が聞こえていたのか、遊園地のスタッフさんが私たち家族に声をかけてくれた。
スタッフさん「よかったら、娘さんとここでお待ちしていましょうか」
お母さん「いや、でも悪いですよ」
お父さんとお母さんと遊園地のスタッフさんで数分の会議が行われる。
大人たちが話している時間は自分の世界に入れる時間だ。
ジェットコースターを余裕で楽しく乗りこなす自分を想像する。
お母さん「じゃあ、あんり。お姉さんと一緒にいいコで待っててね」
そのひと言で自分の世界から現実に戻ってきた。
でも戻った頃には家族はもう私に笑顔で手を振りながら、ジェットコースターの列に向かっていた。
その背中が遠ざかるほど、私の絶望も大きくなった。
スタッフさん「ババ抜きできる?一緒にやりながら待とうか」
私の背中に絶望が見えていたのか、遊園地のスタッフさんは私の人見知りにいち早く気付き、会話があまりいらないトランプを提案してくれた。
無理に会話をしようとはせず、ただ無言でも緊張感が出てしまうから、遊園地のスタッフさんは鼻歌を歌いながらババ抜きをしてくれた。
そのおかげでなんとなく楽しいような雰囲気になってきて、私の固かった表情もいつの間にか緩んでいた。
遊園地のスタッフさんの手札が残り2枚になり、ババじゃないほうをわかりやすく上に出してくれた。
その優しさにまだ幼い人見知りの私はめちゃくちゃ戸惑う。
ババじゃない方を取ったら、スタッフさんが負けてしまう。
ババを取ったら、スタッフさんの優しさを無視してしまう。
これは一体どうしたらいいんだろう。
そんなふうに一生懸命考えているうちに涙があふれてくる。
人に優しくする方法がわからない、人の優しさへ答える方法がわからない。
すると、遊園地のスタッフさんが持っていた残り2枚のトランプが地面に落ちた。
スタッフさん「あ、間違えてトランプ落としちゃった。手札わかっちゃったね。ごめんね。同点でもいい?」
笑いながら言う遊園地のスタッフさんに、あふれていた涙が引いた。
私の為に負けてくれようとしてくれた優しさ、私を勝たせようとしてくれた優しさ、どちらも選べない私の為に同点にしてくれた優しさ。
遊園地のスタッフさんは、私の為にたくさんの優しさをくれた。
結局家族が来るまで、心を開き切れなかった私だったが、遊園地のスタッフさんは色んな方法で優しく楽しませてくれた。
私は人見知りだからと優しくしてくれる人にでさえ頑なに距離をとってしまうのに、私が人見知りだからって諦めずに色んな優しさをくれる人がいる。
今ならわかる。
そんな人を怖がってちゃダメだ。
甘えてばかりじゃダメだ。
それから徐々に人を怖がらなくなり、ある程度人見知りはマシになった。
「そういえば、なんで私が人見知りだって思ったんですか?」
田辺さん「だって、いつもはるちゃんのギャグの返しに結構困ってるから。」
私「それは、人見知り関係ないです。ただの私の力不足です。」
田辺さんはたまに勘が鋭いことがあるが、今回のように的外れなことがめちゃくちゃある。(あんり)
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▼バックナンバーはこちら!
第13回 あんりさんの回「あんりが分析!田辺さんがモテる理由」
第17回 あんりさんの回「できなかったことより、できたこと」
第21回 あんりさんの回「みんなへ伝えたいありがとうの気持ち」
第64回 はるちゃんの回「自分のわがままを詰め込んだYouTube」
第71回 田辺さんの回「初のDIYと初のSexy Zoneツアー」
『猫塾』と『しんぼる』が合体したお笑いカルテット。現在、酒寄希望さん(写真左)が育休中のため、きりやはるかさん(中央左)、あんりさん(中央右)、田辺智加さん(右)のトリオで活動中。
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©吉本興業/マガジンハウス
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『ぼる部屋』毎週木曜 24:15-24:25 KBC 九州朝日放送にて放送中。
『ラヴィット!』毎週月曜~金曜 8:00-9:55 ※月曜レギュラーTBS系にて放送中。
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文/あんり(ぼる塾) イラスト/mame 構成/田中絵理子