人気芸人「ぼる塾」のメンバー4人によるリレーエッセイ連載。
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今回は、酒寄さんのターンです!
酒寄さんが3歳の息子さんと一緒にいるときに体験したという、漫画の世界に入り込んだようなお話。登場人物が全員素敵で、そのやりとりにほっこりします♡
「ちょっとだけ漫画みたいな話」
皆さんこんにちは。ぼる塾の酒寄です。最近『美女と野獣』の主人公ベルの意味がフランス語で【美しい】だと知りました。ずっと鐘だと思っていました。
突然ですが、皆さんは漫画のような展開に憧れたことはありますか?私はあります。35歳の現在進行形です。
ですが普通に生きていて、いきなり目の前に喋る動物が現れて「魔法少女になって私と一緒に戦って!」と言われることや、いきなり目の前に大スターが現れて「恋人のふりをしてくれないか?」なんて頼まれる展開は中々起きません。
しかし、そこまでスケールは大きくなくても、いつもより少しだけ特別な日ってありますよね。今回は最近私に起こった『ちょっとだけ漫画みたいな話』をお伝えしようと思います。
ある日の帰り道。私は息子(3歳)と家路を急いでいました。しかし、息子はもう少し散歩をしたかったのか、住んでいるマンションの前まで来て、「おうち帰らない」とぐずり始めました。もう夕方で、そろそろ夜になります。
大人の都合ですが、こちらは早く帰りたい。息子は私が何を言っても「いや!おうち帰らない!」の一点張り。こうなるとなかなか説得するのは難しく、長期戦の予感がしました。
私がどうしたものかと困っていると、同じマンションに住んでいる女性が私たちの前を通りがかりました。向こうは私達とは反対にこれから外出するという感じでした。
女性「あら、こんにちは。どうしたの?」
その女性とは何年もの間、すれ違う時に挨拶や季節の話を一言二言交わすけれど、お互い名前は知らない関係でした。
息子「おうち帰らない!」
女性「あら!おうち帰らないの?おうちはきっと楽しいよ!」
女性は息子の態度と困っている私の顔を見てすぐに状況を察知してくれたのか、私を助けるために息子に優しく言葉をかけてくれました。
私「うん!おうちで遊ぼう!おままごとしようか!」
女性「わ~!いいな!ママと遊べるって楽しそう!」
息子「いや!おうち帰らない!」
私「おうちに帰ろう?遊んで、その後ごはんも食べよう!」
女性「いいな!もう夕方だもんね。お腹空いちゃう時間だね!」
息子「いや!帰らないの!」
女性「ママのお願いを聞いてあげたら君はお助けヒーローだよ!かっこいいよ!」
息子「いや!おうち帰らない!」
女性「帰らないのか~じゃあ、いっそ、おばさん家に来る?」
息子「行く!」
女性は恐らく冗談で行ったと思うのですが、息子は「行く!」と大声で言いました。私は慌てて言いました。
私「ダメよ!突然行ったら困っちゃうよ!」
女性「あら、本当に来る?」
私「すみません!」
女性「とっても楽しそう!来て!来て!じゃあ、ママと君でおばちゃん家に遊びに行こう!」
そしてそのまま私と息子は本当にその女性の家に遊びに行くことになりました。歩きながら私は慌てて「〇階の酒寄です」と自己紹介をすると、女性は「〇階の〇〇です。そう言えばお互い名前を知らなかったね」と言い、私たちはこのとき初めてお互いの名前を知ることになりました。
私「すみません!これからお出かけする予定じゃなかったんですか?」
女性「いいの、いいの!息子に頼まれていたものを買うだけだからさ!そんなの後で自分で行かせりゃいいのよ!」
私「でも、お忙しい時間に…」
女性「私は全然大丈夫よ!子どもってちょっと環境が変わったら気分も変わるから!うちの息子がそうだったから。もう成長しちゃって、ほぼおっさんみたいだけどね」
その女性の息子さんは私も知っていました。すれ違う時に恥ずかしそうにしながらも必ず挨拶してくれる好青年です。
女性「こんな小さくてかわいいときもあったんだけどね~」
私「本当にお邪魔して大丈夫ですか?」
女性「いいのよ!だって楽しいもの!こういう特別なことが起こると!
不思議よね〜!まさかあなたたちがうちに来ることがあるなんて!この展開わくわくする!」
と、とても楽しそうでした。
私「すみません。ありがとうございます」
女性「さぁ!ここが私の家よ!」
私「お邪魔します…」
女性「ただいま〜!かわいいお客さんよ~!」
私「え!ご家族の方、今いらっしゃるんですか?!」
部屋の中に入ると先ほど噂をしていた息子さんがいて、夕飯前のおやつなのかラーメンを食べていました。息子さんは突然侵入してきた謎の子どもと謎の女に驚いていました。
女性「ほら、〇階の酒寄さん!挨拶しなさい!」
私「すみません!お食事中に!」
息子さん「え、あ、こんにちは」
女性「やっぱり家によって間取りって違う?」
女性はマイペースで私と我が息子に部屋を案内してくれ、息子が気に入りそうなものを見つけると、「ほら、これ面白いでしょ〜!見て」と、優しく声をかけてくれました。最初は戸惑っていた息子さんも、途中から「そんなもん面白くないよ!なぁ!」と息子に優しく話しかけてくれました。私はそんな息子さんを見て、けらえいこさんの漫画『あたしンち』に登場するユズヒコくんを思い出しました。
私「(ユズヒコくんが同じマンションに住む小さい子と遊ぶ回の話を私は今リアルで体験している!)」
流石に長居すると申し訳ないので、私がタイミングを見計らって「おうち帰ろうか?」と言うと、楽しくてご機嫌になった息子は「うん!帰る!」と素直に返事をしてくれました。
女性「あら?もう帰るの?残念!」
息子さん「家の都合があるだろ」
私「ありがとうございます。本当に助かりました。とても楽しかったです」
帰るとき、女性と息子さんが玄関まで見送ってくれました。ふたりは最後まで息子に優しく話しかけてくれました。
女性「いつでもおばさんの家に遊びに来てね。でもね、ママと一緒のときじゃなきゃ駄目よ!ひとりで知らない人について行ったら絶対に駄目だからね!絶対にダメよ!ママと一緒よ!」
女性は息子に優しく、ですが大切なことはしっかりと何度も繰り返し伝えてくれました。
息子「うん!ママと一緒!」
私「ありがとうございます」
女性「ママと一緒だったらいつでもおばさん大歓迎だからね!」
息子さん「このおばさん喜ぶからいつでも来てね」
女性「ちょっと!誰がおばさんよ!」
息子さん「今自分で言ってただろ!」
女性「自分で言うおばさんはいいの!あんたはダメ!」
息子さん「なんだよそれ~」
私「(お母さんも『あたしンち』に登場するお母さんに見えてきた)
女性「子どもってすぐ大きくなっちゃうからさ!今を楽しんでね!」
私は女性に出会ってから別れるまで、漫画の世界に入ってしまったような気分になりました。私たちの家までの短い帰り道、私は息子の小さな手を繋ぎながら言いました。
私「楽しかったね」
息子「とっても楽しかった!」
私「大きくなっても、さっきのお兄ちゃんみたいにママと仲良くしてくれる?」
息子「わかんない!」
私「わかんないか~」
私もいつか誰かをちょっとだけ漫画みたいな展開に連れていってみたいです。(酒寄)
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『猫塾』と『しんぼる』が合体したお笑いカルテット。現在、酒寄希望さん(写真左)が育休中のため、きりやはるかさん(中央左)、あんりさん(中央右)、田辺智加さん(右)のトリオで活動中。
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©吉本興業/マガジンハウス
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『ぼる部屋』毎週木曜 24:15-24:25 KBC 九州朝日放送にて放送中。
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