人気芸人「ぼる塾」のメンバー4人によるリレーエッセイ連載。
当連載の36話を収録したエッセイ本『思い、思われ、食べ、ぼる塾』（小学館刊）も、早いもので発売から1年に！沖縄で撮り下ろした4人のグラビアや、かわいすぎる書籍オリジナルの「ぼる塾ステッカー」、全員へのロングインタビューに懐かしの「プロフィール帳風・自己紹介企画」など盛りだくさんなので、まだゲットしていない人はチェックしてくださいね♪
今回は、あんりさんのターン！
何事もしっくりこなくて、自分が求めてるものがわからなくなってしまったとき…田辺さんのひと言に救われたというあんりさん。謎の不調には、自分を納得させられる理由を見つけることで楽になるのかも。
「私たちが食欲の秋に生まれてるのウケるわよね」by 田辺さん
CanCamをご覧の皆さま、いらっしゃい。
食欲の秋、楽しんでますか？
私は毎年「夏らしいことしましたか？」という質問には頭を悩ませるけど、「秋らしいことしましたか？」に対しては、芋を食べた、栗を食べた、さんまを食べた、と次々と答えることができます。
今日はそれくらい秋が好きな私の、秋に起きた日常のひとコマを綴りたいと思います。
ある日、京都で2日間営業をさせていただいたときのこと。
1日に30分間のステージを2回。
実質働いている時間は1日の中のたった1時間。
決してハードとはいえない仕事内容。
しかも、場所は京都。
1日目の営業終わりに田辺さんとはるちゃんとおいしい夜ごはんを食べに行こうと約束をし、東京から京都に向かう新幹線でも胸を躍らせていました。
京都駅から営業先に向かう車の中でも3人で夜ごはんのお店をネットで調べて、あーだこーだ話したりして。
2回のステージも無事に楽しく終えて、あとはホテルにチェックインして夜ごはんに行くだけ。
営業先で荷物をまとめてるとき、何故か急に、本当に急に、大きな疲労感が押し寄せてきました。
空腹も相まって、これから車でホテルに向かい、部屋に荷物を置いて、夜ごはんへ。
そんな段取りが急に面倒になってしまいました。
私「だめだ、なんか急にすごい疲れて。ごめん。夜ごはん私はホテルで簡単に済ます！」
はるちゃん「えーさみちい！」
田辺さん「あら！無理しないで！あんりの代わりに食べとくから安心して！」
各々の「らしさ」が詰まった返答をいただき、夜ごはんは断った。
私は何事も「始まり」より「終わり」を大事にするタイプで、朝の目覚めが悪くても夜を楽しく終えられたら満足できる。
だから、仕事終わりの夜ごはんを、しかもせっかくの京都での夜ごはんを、疲れたという理由で自ら断ってしまったことのショックはとても大きかった。
ホテルの近くのコンビニで夜ごはんを済ませることに決めた私は、とにかく目についた食べたいものをカゴに入れていきました。
からあげ弁当に明太子パスタ、フランクフルト。
運動部の部活終わりでも選ばなそうな好き勝手な献立で、自分の機嫌を伺いました。
自分と同じような爆食いをしてる人をYouTubeで探して、誰かとごはんを食べているような演出も完璧に行う。
空腹と寂しさを紛らわすための最高の作戦でした。
しかし、私の食欲はもう全盛期より衰えている。
楽しむための爆食いは苦しい挑戦になり、YouTubeのチョイスもグループのYouTuberを選んでしまったせいで、ひとりの自分と比較してしまい、余計に寂しさが際立ちました。
誰かと一緒に居たいのに、それが億劫になるくらい疲れてしまって、もう何も考えず寝てしまいたいくらい疲れているのに、ひとりが寂しくて人恋しい。
なんともややこしい感情がとめどなくあふれて、ベッドに倒れ込んで何度も寝返りを繰り返しました。
これはなんだ、これはなんだ。
私は一体どうしたいんだ。
そうしているうちにいつの間にか眠ってしまい、入り時間は昼過ぎなのに、朝の6時くらいに目が覚めてしまいました。
夢も見ないくらい爆睡しちゃったな。
寝過ぎて疲れた。
我ながら欲張りでややこしい女だよ。
カーテンを開けて、太陽の光を浴びて、シャワーを浴びて、昨日コンビニで買った残りの食べ物を朝ごはんにして、なんとかなんとか自分の機嫌をあげようとしてみるけど、イマイチ上手くいかない。
私が満たしたいのは睡眠欲でも食欲でもないみたいだ。
自分が求めてるものが自分でわからないというのは、なかなかしんどい。
解決策が見つからない。
田辺さん「あんた、それ秋バテだよ」
2日目の営業先に向かう車の中で、田辺さんが今の私の状態に理由をつけてくれた。
田辺さん「夏バテの秋バージョンがあるのよ。知らなかったでしょ。しかも、昨日は新月だったの。新月は精神が不安定になるの。秋バテと新月のダブルパンチだね」
次から次へと理由をつけ加えてくれる。
なんということでしょう。
終わりが見えなかったモヤモヤに理由がついたことによって、なんだかスッキリしてくる。
たとえそれが間違った理由でも、田辺さんの妙に説得力のある話し方が私を満足させる。
私「さすが田辺さん！！」
田辺さん「あら、いいのよ」
田辺さんはプライベートでは、あまり「まあね」を言わない。
私「なんか秋バテなんだ、新月なんだって思うといつか気持ちが晴れるような気がしてきます。ありがとうございます！」
ややこしい自分も嫌いになりすぎずに済む。
秋バテが治れば、新月じゃない日は、自分が好きないつも通りの自分をちゃんと思い出せる。
人それぞれ大きさや数は違えど、自分が好きな自分というのはみんな持っているんじゃないかなって思う。
それを環境や色んなことが原因で忘れてしまうこともあるけど、たまにこうして思い出して、自分を愛でたい。
さあ、元気になった。
芋、栗、さんま、秋の味覚に会いに行こう。（あんり）
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発行：小学館
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『猫塾』と『しんぼる』が合体したお笑いカルテット。現在、酒寄希望さん（写真左）が育休中のため、きりやはるかさん（中央左）、あんりさん（中央右）、田辺智加さん（右）のトリオで活動中。
酒寄さんが育休中にnoteで書き綴った、笑えて心温まるぼる塾エッセイが書籍化！『酒寄さんのぼる塾日記』（¥1,400／ヨシモトブックス）発売中。
©吉本興業／マガジンハウス芸能界でも指折りのスイーツ通で知られる田辺さん初の書籍。『あんた、食べてみな！ ぼる塾 田辺のスイーツ天国』（¥1,430／マガジンハウス）発売中。
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