作家LiLy×所長対談(7)「この小説で、初めて『プロになったな』って感じました」

作家LiLyさんと小学館女性インサイト研究所所長の嶋野智紀が、LiLyさんが上梓した小説『ブラックムスク』のテーマである「女性の自意識」について語ってきた対談もいよいよ最終回です。

対談(1)はコチラ→ 作家LiLy×所長対談(1)「渋谷ギャル世代の“自分vs.自分”な自意識の戦い、舞台は表参道」

対談(2)はコチラ→ 作家LiLy×所長対談(2)「女子高生のリアルを知ってる私の声は、誰にも届かなかった」

対談(3)はコチラ→ 作家LiLy×所長対談(3)「人よりかわいい“読者モデル”の苦しさ、大変さ」

対談(4)はコチラ→ 作家LiLy×所長対談(4)『ブラックムスク』読みどころ秘話

対談(5)はコチラ→ 作家LiLy×所長対談(5)「茨城からきたとバレぬよう、友達みんなで口裏合わせてた(苦笑)」

対談(6)はコチラ→ 作家LiLy×所長対談(6)「自分の本気さ、必死さがなければ、夢を追い続けられない」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

嶋野智紀(以下、嶋野) この1年を振り返って、どんな年だったと思いますか。

LiLyさん(以下、LiLy) 私の2013年は、2012年に引き続き、とにかく仕事と育児に奮闘しました。『ブラックムスク』の連載中に2人目を出産したので、0歳と2歳、1歳と3歳を抱えての2年間の連載でした。他にも連載を掛け持ちしていたので、もう、冗談抜きで眉毛を描く時間もなかったです(笑)。そんなもん描く時間があるなら、1行でも2行でも多く書かないと〆切に間に合わない、というようなシビアな状況で。子供を寝かしつけてから、夜中にベランダで泣きながらしゃがみこんだことは一度や二度じゃないです。なんで泣いたかって、怖くて、です。とにかく書ける時間が、子供がいない頃の3分の1くらいまで制限されていて、その中で、作品のクオリティだけは落とせない。むしろ上げていかなきゃならないわけです。それができなかったらどうしようと思って、怖くて泣いたんです。女性のプライベートって、育児とか、親のこととか、いろいろありますよね。でも仕事の出来にプライベートの状況って関係ないじゃないですか。どの職業でもそこは同じだと思いますが。

嶋野 「この作家はまだ子供が0歳と2歳なんだから仕方ないね」とか、読者は思ってくれないですからね。

LiLy 「なんかLiLyの本つまんなくなったけど、育児大変そうだからしょうがないよね、また買うね❤」とか、そんな甘い世界どこにもないですよ!(笑) 『ブラックムスク』は16冊目の本ですが、「今までに何冊の本を出したか」=「キャリア」とかは関係なく、ダメなら次の本は出せなくなる。デビューして7年目、自分の本気度をここで試されているな、とすごく感じました。でも、ベランダで泣いた翌日には必ず、自分でも納得できる小説をきちんと入稿している自分がいた。あぁ、私プロだなって、初めて思いました。例えば、あと6時間で入稿しなきゃってなったときに「自分から物語をつかみにいける感覚」っていうのを味わったんです。アイディアがひらめくのを待つ時間なんてないから、自分から取りにいく、というか。ものすごく集中力というか。そういう意味では本当に過酷な日々だったけど、この小説でまた次のステージに行けたという実感があります。今、自分で読み返しても「面白い!」と胸を張って言える作品になったので、多くの方に読んでいただけたら嬉しいです。

 

作家の夢を叶えて、自身の「自意識」との戦いから楽になったというLiLyさんも、今回の『ブラックムスク』を書くにあたり、時間とプレッシャーに追い込まれる経験を初めて味わったそう。「自意識」を深く切り取り、目をそらせない面白さを盛り込んだLiLyさん。今回初めて得たという「つかみにいく感覚」を、次はどんなテーマで読ませてくれるのか、ますます楽しみになりました。(安念美和子)

 

BlackMusk
『ブラックムスク』LiLy
(¥1,260/小学館)

amazonの商品ページ

 

【あわせて読みたい】

※2013年を総括!CanCam編集長が考える「かわいい」の現在

※AneCan編集長が2013年を総括!「消費に積極的な子たちを世間は見ていない」

※Domani編集長が分析!「2013年、なぜ30代の働く女性にスカートがブレイクしたのか?」

※現代は第二次ジャポニスム!和樂編集長「2020年まで日本文化ブーム続く」と語る

※美的編集長が語る!「2013年、読者の肌悩みが深刻化。20代から“ほうれい線”が気になる」