新年度が始まり、2021年入社の新社会人たちは2日間の平日を終え、初めての土日。ほとんどの方がこれからの新生活に期待と不安で満ち溢れている頃かと思いますが…中には不穏な空気を感じて「この会社に長くはいないかもしれない」と感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんなときにふっと頭をよぎるのが、何かと世間で言われている「とりあえず3年働いてから転職したほうがいい」という「1社めとりあえず3年は必要説」。
とはいえ、働き方が以前までと大きく変わり、転職も珍しくなくなっている今、この「3年説」は本当なのでしょうか?
転職市場を知り尽くしている、転職サイト『doda』『マイナビ転職』『エン転職』3社の編集長に「実際、3年働いてから転職したほうがいいって本当なんでしょうか?」と直撃してみると…実は「YES」も「NO」も、どちらの回答もありました。
でも、それぞれの見解を聞くと、確かにどれも頷けるものばかり。早速見ていきましょう。
Q.よく「1社めで3年は働いてから転職したほうがいい」という話がありますが、実際本当にそうなのでしょうか?
◆『doda』の見解:NO。ただし、理にかなっている点はある
「働き方が多様化している現代、3年以内の早期離職が転職の合否にネガティブに影響するかと聞かれれば答えは『NO』です。
ただし、早期離職の背景が『過剰にストレス耐性が低い』などの場合は、ネガティブに作用する可能性はゼロではありません。ただ『やりたいこと』『できること』がしっかりある方であれば、過剰な不安を持つ必要はありません。
基本的には『NO』だとは思いますが、とはいえある意味でこの説が理にかなっていると思う点もあります。『実際に仕事をした期間が短い場合、職務経歴書でアピールできるような成果がないor少ない』『仕事を通して自分の強みを見つけられていないことが多い』というケースは多いでしょう。とはいっても『自分では当たり前だと思っていることが、実は売りになる強みであること』はいくらでもあるので、迷ったら一度転職エージェントのカウンセラーや民間のコーチングサービスを受けてみて、改めて自分の強みやできることを整理してみるといいと思います」(『doda』編集長 喜多恭子さん)
◆『マイナビ転職』の見解:NO。理由がきちんと説明できればOK
「実際には、一概に何年いなければいけない、というものはありません。『3年以下だから』という理由で書類選考で落とすというケースはあまりなく、2年でも5年でもそこまで差はないと思います。
転職活動をするにあたり、きちんと転職理由が説明できて、それが転職先の企業も納得ができるようなものであれば、期間の長短はさほど問題ではありません。逆に言えば、理由が明確に言えない場合、短期間での転職は『忍耐力がない』と受け取られてしまう懸念はあります。
ただ、やはりコロナ禍の転職市場において、いわゆる『第二新卒』や『若手の未経験採用』はコロナ前と比較すると残念ながら減っているのが事実です。とはいえ中長期的に見れば、少子高齢化のこの時代に人口が少ない層なので、そのうち需要が回帰していくことは見えています。だから今は、絶対に転職しなければいけない事情がない限り『仕込みの期間』と考えて、今の会社でできる経験をたくさん積み、転職活動を始めるときに武器になるものを身につけておくといいと思います」(『マイナビ転職』編集長 荻田泰夫さん)
◆『エン転職』の見解:YES。ただし例外はある
「さまざまな見解があると思いますが、YESかNOか聞かれると基本的にはYESだと思います。やはり1年目に任せられる仕事の幅と3年目に任せられる仕事の幅は違うため、その経験を積む前に転職してもいいかどうかはしっかりと考えたほうがいいです。
3年にこだわらなくてもいい例外を挙げるなら、『成長できる環境を用意してもらえない』『明らかなブラック企業』などです。
今の会社が成長出来る環境かどうかを判断するには、直属の上司が『自分のキャリア・成長』を考えてくれているかはひとつの判断ポイントです。もちろん『やりたい仕事』だけではなく『そこまでやりたくないけれど、やらなければいけない仕事』は必ずあります。ただそれが、自分の成長・会社の成長と一致しているかは上司としっかりコミュニケーションを取ることをおすすめします。『やりたいこと』と『今やっていること』があまりにも乖離していて、その先に自分の成長がない場合は我慢してもいいことがありません。
もし考えてくれない上司が上についてしまった場合は、上司のさらに上司に相談してみてください。そこで自分の意見に正当性があるのかないのかも確認できます。上司との関係性を気にする方もいらっしゃるかもしれませんが、成長環境があるかを正しく判断をするためにも、一度相談してみることをおすすめします。
今の会社でいろいろあがいてみて、それでもうまくいかなかったときの最後の手段として転職を考えてみてください。」(『エン転職』編集長 岡田康豊さん)
転職市場を知り尽くしたプロたちでも「NO」と言うパターンが多い「新卒とりあえず3年必須説」。特に「明らかなブラックの場合は3年にこだわる必要なし」というのも心強い言葉。ただし、共通することは「転職できないわけではないけれど、次にアピールできる経験が少ないことは事実」ということ。もし「自分は長期間ここで働くわけではなさそう」とピンときてしまったとしても、消化試合で日々の仕事をこなすのではなく、できる限り今の環境で成長できる経験を積むほうが、どちらにしてもいい結果につながるはずです。