面接官って、ぶっちゃけどこ見てるんですか?面接官が落としたくなる人の特徴

転職で欠かせない「職務経歴書」や「面接」。数打ちゃ当たるとばかりにいろいろ出してみるものの、まったく理由がわからない部分で落とされることもありますよね。

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そんな不安を払拭すべく、転職サイト3社の編集長と、企業の採用側へのコンサルティングを行う人材支援会社の社長に「面接官が本当に見ているポイント」をうかがいました。

この記事でお話をうかがったのは…『doda』編集長 喜多恭子さん、『マイナビ転職』編集長 荻田泰夫さん、『エン転職』編集長 岡田康豊さん、株式会社アールナイン 代表取締役 一般社団法人国際キャリア・コンサルティング協会 代表理事 キャリアコンサルタント 長井亮さん

Q.まず、書類審査って何を見ているんですか?

▼要件を満たしているか&書き方

「職務経歴書を見て『その会社が求める要件を満たしているか』がほとんどです。自分の今までの仕事の立ち位置や、達成率・売り上げ額などの数字を、できるだけ具体的に書きましょう。
書き方も見られています。誤字脱字が多かったり、英数字で半角全角が混ざっていたり、段落がめちゃくちゃだったりする場合は、やはり注意散漫だという印象につながってしまいます。提出前にきちんと見直しましょう」(キャリアコンサルタント 長井亮さん)

▼関わったことで成功につながった成果

「会社が求めている要件を満たしているかを見た上で、その方がどのように成果を出してきたかを見ています。数値化しやすい営業のような仕事もあれば、そうでない仕事もありますが、どの職種であっても『成果を出してきたプロセス』を言語化してみましょう。
たとえば営業職。『営業成績で1位を取りました』ではなく『成果を出すためにこんな工夫をしました』という点に、その方の強みが出てきます。数字化が難しい事務の仕事でも、社員が働きやすい環境を整えるために取り組んだこと、工夫したことがあるはずです。
難しい場合は誰か他人に聞くのがおすすめです。たとえば上司との1on1ミーティングの際に自分の評価について聞いてみるといいですね。他者評価と自己評価は違っている場合が多いので、誰かに聞くことで自分の強みを知ることにもつながります」(『エン転職』編集長 岡田康豊さん)

Q.事務職です。数字などでわかりやすく結果が出る職種ではないので、何を「成果」としてアピールしていいのかわかりません。

▼自分が工夫したこと・改善したこと・効率化したこと

「なんらかの社内評価はあるのではないでしょうか。『社内の人との仕事を円滑に進めるために、どうしてきたか』を考えてみてください。
何かしら工夫したことや、ちょっとしたことで周りの方たちが動きやすくなって感謝されたことがあればそれを書いてみてください。あなたのちょっとした動きで周囲10人の動きが変わったことなどを思い返してみましょう。
作業効率を良くした、仕事の進め方でこれを変えた、こう仕事を進めたらいいのではと提案したなど、何かしら考えて創意工夫をしたことはあるはずです。もしそれが現職ではできていなかったとしたら『今はやれていないけれど、こなすだけの仕事がストレスで本当はこんなことがやりたかった、こんな風に改善しながら能動的に取り組める環境でやりたいと思って志望させていただきました』などを書いてみてもいいと思います」(『マイナビ転職』編集長 荻田泰夫さん)

Q.自己PRや長所って何を言えばいいんでしょうか?

▼キャリアの棚卸しをして見えたこと。意外な点も多くある

キャリアの棚卸し(※詳しくは『キャリアの棚卸し』記事を参照)をして、あなたがやってきたことやできることをまとめていくと、自然と強みが見つかると思います。ただ、やはり若手の方は『なかなか強みが見つかりません』とおっしゃる方が多いです。
でもたとえば『気持ちのいい挨拶ができる』って、一見たいしたスキルじゃないように見えるかもしれませんが、もしそれでお客さんに気に入っていただけてリピートをたくさんもらっていた、などであればじゅうぶん強みになり得ます。これは一度第三者に相談してみると『自分では当たり前だと思っているけれど強みになる部分』が明確になるはずです」(『doda』編集長 喜多恭子さん)

Q.面接官はどこを見ていますか?

▼成果に対するプロセス、そして第一印象

「職務経歴書はずばり、何を実現したか『結果』を見ます。
面接では『プロセス』を見ます。どの程度の関与度で、何を実現したのか、どんな風に仕事に取り組むのか。それが自社の用意したポジションで活躍できる人なのか。
面接ではついどんな結果を出してきたかを言いたくなると思いますが、どちらかというとその成果を生んだ目的や、どんな策を講じたのか、その成功要因は何なのか、というプロセスを話していただくことをおすすめします。
一方で実は、面接官が見ていることの第一位は『第一印象』です。挨拶や身だしなみ、どんな受け答えをする方なのかは、書類ではわかりません。でもそこから受け取る情報量は膨大です。
質問の意図が何で、それに対して回答ができているか、会話のキャッチボールがしっかりできるかも重要。中には面接になると緊張して、つい焦ったり、沈黙が怖いとまったく見当違いのことを回答してしまう方もいます。ただ、そこまで沈黙を恐れることはありません。回答に迷ったら『少し考えさせていただいていいですか』とひとこと添えて、しっかり考えてからお話するほうが、実は印象がいいです。
ちなみに面接でよく聞かれる『志望動機』ですが、実際中身はそこまで重視していないことが多いです。ただ志望動機を通して熱量や、自社や業界をどのくらいの時間を使って調べて勉強して臨んでくれたのかを見ています」(『doda』編集長 喜多恭子さん)

▼大切にしていることを自分の言葉で語れているか

『仕事で大切にしていることを、自分の言葉で語ることができているか』は大事なポイントです。未経験からの転職であっても、これまでの仕事を通して自身がどんな人なのかを伝えられなければ、スタートラインにも立てません。
『こういったことをこういう風に話せば面接を通過しやすい』というセオリーはあるにはありますが、人事は小手先のテクニックは見抜きます。それに、取り繕って入社しても、入社してから苦労します。
職務経歴書ではこれまでの仕事内容や社内評価を書きますが、そういうことでは語れないことを面接で話してください。誰にでも『仕事で大切にしていること』はあるはず。その大事にしている価値観を面接ではっきり伝えた上で合わなかったら、どのみちお互い不幸になるので入る必要はありません。たとえば営業だとして『お客様に絶対に役に立ちたいということを大事に仕事をしていました。売り上げも重要ではありますが、お客様が満足しないと成り立たないので、たとえ営業成績が5位だったとしても、サポートに注力をしていました。でも、今の会社だと売り上げ先行なので、もっとお客様の立場に立ってサポートができる営業がしたい』と伝えてみる。サポート重視の会社であれば必要な人材ですし、売り上げ重視であればそこまででもないかもしれません。そういった価値観をコミュニケーションしてみてください」(『マイナビ転職』 荻田泰夫さん)

▼入社後に活躍できるかどうか

「まず、求職者側と企業側双方に理解してほしいのは、面接は審査の場ではないということ。あくまで『自社に合うかどうか』という、お互いを理解するためのコミュニケーションの場。大切なことは入社することではなく、入社後に活躍することです。
コミュニケーションを取るためにも、質問に受け答えをする、目線を合わせて会話をする…そういったことをしっかりと意識してください。面接に落ちたから自分はダメだと思う必要はありません、ただその会社に合わなかっただけです。
その上で、面接では『その人の行動や価値観、本当に成果を出してきたのかどうか』を見ています。基本的に面接官は書類に書いてあることをより深く理解するために面接をします。たとえば職務経歴書に『成果が昨対比150%アップしました』と書いてあったとします。この行動を深掘りして聞くことで『本当にメインの担当として自分で考えて実行した』のか『上司に言われたことをさも自分で考えたかのように言っている』のかは感じ取れます。このとき、つい自分を良く見せようと、事実より過剰に言ってしまう方も多いですが、もしそれで面接を通過してしまうとそれはそれで不幸です。入社すると『過剰に伝えた自分』に対しての目標が与えられるので、ギャップで苦しむと思います。
あとは『辞める理由』。他責の理由はあまり歓迎されません。仮に『自分がやりたいことがやれなかったから転職する』として、それで終わるのは良くない。おそらくそう伝えると上司はなぜさせてくれなかったのか、自分は何ができるのかが聞かれるはずです。そこで「そういう事情なら転職するしかないよね」と、面接官の共感が得られるかどうかが重要です」(『エン転職』編集長 岡田康豊さん)

▼印象。簡潔に話せているかなど「どう話すか」

「挨拶ができるか。姿勢。態度。そういった基本のところで印象がかなり変わります。うつむいていたり覇気がないと、それだけでマイナスな印象を与えてしまいがちです。
面接官が面接で落としてしまう理由の1位は『話が長い』。2位は『質問に対する回答が来ない』と言われています。話をするときはまず一言で答え、そのあとに説明をするという流れを意識しましょう。よく聞く『3つあります、まずひとつめは〜』などのテクニックは実際使える技です。たいていの場合面接官は1日に何人も面接して話を聞いているので『どんな話をしたか』ということがあとでわからなくなります。だからこそ『どう話すか』がかなり重要な要素です。
また、注意したいのは『話を過剰にしすぎない』こと。自分のいい部分をさらによく見せられるよう表現のしかたを考えるのはいいですが、全然違うことを話すと入ってから苦労します。たとえるならば化粧はするけど整形はしない。くらいのスタンスがいいと思います」(キャリアコンサルタント 長井亮さん)

▼こぼれ話「実は、面接官は面接に対して苦手意識を持っている人が多い」という事実

「私は企業の面接官に『こうすると面接で人を見抜ける』といったコンサルティングなどもしているのですが、転職を希望する方にひとつ知っていてほしいのは、いつも面接をしている人事は別として、普段面接などをあまり行わない現場社員の面接官は、体系立てて面接を学ぶ機会がほとんどないということ。そのため自己流で面接を行っており、苦手意識を感じている方も多く、本来『引き出す面接』をしないといけないものの『決めつけてしまう面接』をしているケースが多いのです。
『引き出す面接』とは、面接を受けにきてくれた求職者の方に、とにかく本音を語らせることが上手なパターン。聞き上手で、なんでも話してしまう。その中から『これは本音だな、これは繕っている言葉だな』と本音を見抜いていきます。
一方『決めつける面接』とは、面接官自身の持論を強く持っていて、面接の場でそれを話してしまったり、求職者から情報を得られないこと。『意欲がないやつは絶対に使えない』『営業たるもの遅れるやつは絶対にダメ』などと持論を展開して落としてしまう。もし15分遅れたにしても、15分遅れたことに求職者側の筋が通った理由があれば、本来問題はないんですよ。でもそこを見ずに落としてしまう方はいます。
とはいえ、どんな面接官であってもたいてい共通で『標準点を与える基準』のようなものが設けられているはずです。『マナーがちゃんとしている』『意欲を伝える』『ポジティブな話をする』などの基本ができていれば、最低限はクリアできるはずです」(キャリアコンサルタント 長井亮さん)

Q.そもそも「合う会社」「合わない会社」って何ですか?

▼「職務能力」と「職場適応能力」がマッチする会社

「合うかどうか見極める視点として『職務能力』と『職場適応能力』のふたつの要素があります。この両方がマッチしていないと『いい転職』になりにくいかもしれません。
『職務能力』はまさに仕事をしていく力で「成長できるんじゃないか、こんな仕事が本当はもっとできるんじゃないか」というもの。
一方で『職場適応能力』は『カルチャーフィット』という言葉に置き換えられますが、まさに『その会社の雰囲気にフィットするか』。いくら仕事内容がぴったりでも、雰囲気が合わなくて辞めてしまう方はたくさんいます。たとえば『仕事内容は本当に面白いけど、飲み会がすごく多いのがストレス』で辞めるパターンもありますよね。人によりますが、入社してから半年〜1年経つくらいまでは特に人間関係が重要で、これによって仕事の満足度が大きく変わります。1日8〜10時間と長時間一緒にいるため、価値観が合わないと相当難しいです。
逆に『職場適応能力』があれば、転職時点で職務能力が追いついていなくても成長することもあり得ます。特に中途採用は新卒採用のように横のつながりが少ないことが多いので、中途同期のようなものがあったり、職場のキーパーソンとつなげてくれたり、そういったケアがある会社だととてもいいですね。人事の印象は雰囲気を見極める重要な要素になるので『その会社がやっている仕事自体は自分の能力を活かせそうだけど、人事の印象がすごく悪かった』という場合は、ちょっと気をつけてください」(『マイナビ転職』編集長 荻田泰夫さん)

Q.「社風」「会社の雰囲気」を掴むコツはありますか?

▼トップのメッセージと現場社員のインタビュー。ひとつの手として口コミサイトも

「社長などトップのメッセージや役員さんの出自を見ると、どんな文化が根付いているのか見えてくると思います。それを見た上で現場の社員のインタビューやメッセージを眺めれば、だいたいの会社のカラーが掴めるはず。『なんとなく合いそう・合わなそう』という感覚は、不思議とかなりの確率で当たります。
あとはすべて鵜呑みにしないほうがいいものの、口コミサイトをチェックしてみるのもひとつの手です。人間関係はどうか、仕事のあとの飲み会は結構あるのか、仕事の進め方はトップダウンなのかボトムアップなのか…さまざまなことが書かれているはずです」(『doda』編集長 喜多恭子さん)

▼勘や感覚を大事にする

「結局『感覚』が大事です。人の勘は信用していいです。『人を大事にしてくれる会社か』は伝わってきて感じるものです。面接時間をラッシュに当たらないように調整してくれるかとか、会社にいる人がみんなめちゃくちゃ疲れてそうな顔をしていないかとか…(笑)。そういったところで合わなそうであれば違和感を感じ取るものなんですよ。
また、面接官に対して『この人なんかいやだな〜』と思った場合、入ってもうまくいかないことが多いです。面接官の印象は社風が反映されている可能性が高く本当に重要で、これを判断軸にしてもいいレベル。
本当に気になっている会社であれば、一次面接が終わった頃くらいに職場見学をお願いしてみるとさらに実情が見えてくると思います。ハードルが高いお願いと感じるかもしれませんが、人事からすると『うちに真剣に向き合ってくれる人だな』という印象にもなります」(『マイナビ転職』編集長 荻田泰夫さん)

 

「面接官が本当に見ているポイント」そして「こちらが見極めるべきポイント」を紹介したものの…実は「そもそも、転職を思いとどまったほうがいい人」も、確実に存在するようです。
次回はそんな「正直、転職しないほうがいい人」の特徴についてご紹介します。

構成/後藤香織