転職成功する人と失敗しがちな人の違いはコレ【職場の悩み相談室】
就活、筆記試験、面接、etc……がんばってようやく就職できた仕事。でもいざ働き始めてみたら「あれ、イメージと違うかも」なんて戸惑ってはいませんか?
厚生労働省の調査によれば、新卒入社した社員の3人に1人は3年以内に会社を去っているのだとか。自分も今の会社を辞めて、別のどこかに行きたいなあと思いつつ、就活の大変さを思い返すと迷ってしまう……。
そんなあなたにお届けしたい、新人・若手のお悩み解決シリーズ。第3回の今回は「転職すべきか、今の仕事を続けるべきか」という悩みにお答えしていきます。
多くの人が直面するであろう、この悩み。働く若者の悩みを知り尽くしたエキスパートに、転職すべきケースとそうでないケースの見極め方をうかがいましょう!
▼お悩み其の三「イメージしていた仕事と違う。辞めるべき?続けるべき?」
■新人Dさんの悩み
「希望の仕事に就いたのですが、やってみたらイメージとかなり違いました。自分が本当にやりたかったことは、ここではできないと思います。正直転職したいのですが、親に相談したら『とりあえず3年間は続けた方がいい』と言われました。
理想と違う仕事でもこのまま続けるべきですか? それとも今すぐ転職すべきでしょうか?」
*
入った職場がイメージと違った。仕事の理想と現実に大きなギャップがあった。結構なあるあるです。仕事って、やってみないとどんなものかなかなか分からないですよね。
今回も、解決策を教えてくださるのは株式会社リクルートマネジメントソリューションズの桑原正義さん。新人・若手の育成ノウハウ研究の第一人者で、企業向けのセミナーも多数開催。研究者というフラットな立場から新人サイドと上司サイド、両方の悩みに日々直接触れている、まさに職場の悩み解決のエキスパートです。
その桑原さんも、「これは難しい問題ですね」と思わずDさんに共感。
「でも辞めるべきか続けるべきかを、自分自身で見極めるのに役立つポイントはあります」
そのポイント、早速うかがいましょう!
▼すぐ転職してうまくいくケース/いかないケースとは
転職すべきか残るべきか。それを見極めるポイントは、たったひとつ。
自分の中に「明確にやりたいこと」があるかどうかです。
やりたいことがはっきりしている場合、ここではできないと分かった時点で早めに転職活動を開始してOK。やりがいのない仕事を無理に3年間続けても、自分にとっても職場にとってもマイナスの結果になりがちです。やりたいことに近づける会社を探しましょう。
でも、なんとなくやりたいことはあるんだけど……と迷っているあなたは、ちょっと待って。やりたいことがぼんやりしたまま転職すると、次の会社でも同じモヤモヤを繰り返すことになりかねません。
この2種類、自分でも判断に迷うかもしれません。具体的な例を挙げると、次のようなケースに分かれます。
◆すぐ転職してもうまくいくケース
「入社前に聞いていた話と違う。できるはずだった仕事をさせてもらえない」
「イメージしていた仕事とかなり違っていた。いろいろ調べて、自分がやりたいと思っていた仕事をできる会社が他にあると分かった」
これらのケースでは自分のやりたいことがすでに明確に決まっています。今の職場ではできないけれど、別の職場ならそれが実現できるという確信が持てています。この場合、転職がステップアップとして成功しやすいです(なお、やりたい仕事が同じ会社の別部署にある場合には、異動という方法もあります)。
◆転職を保留した方が良いケース
「今の仕事が予想していたほど楽しくない。転職して別の何かを始めたい」
「これだと思って飛び込んでみたけど、なんか違う。自分の居場所は別にある気がする」
これらのケースでは、やりたいことがどこかぼんやりしています。この状態で転職すると、次の会社でも「なんか違う」、また転職しても「やっぱりしっくり来ない」……という事態を延々と繰り返すことになるかも。
「別の何か」「別のどこか」というイメージをもう少し具体的に描け、本当にそれがやりたいという気持ちになるまでは、転職を保留した方が良さそうです。
▼「とりあえず3年続けるべき」説の根拠はコレ
新人・若手世代が親や年上に転職相談をすると、よく返ってくる鉄板フレーズが「とりあえず3年は続けてみなさい」ではないでしょうか。このアドバイス、じつはそれなりに根拠があります。
一般的に3年くらい続けて同じ仕事をすると、全体像が把握できて一人前と認められやすくなります。福利厚生面でも3年目で退職金や各種手当が発生する企業が多く、社会経験が豊富な人はそのメリットをよく知っているのです。
でも「辞めたい」とモヤモヤしながら3年間続けるのは、かなりしんどいことかもしれません。桑原さんは、次のように考えています。
「3年という期間にこだわる必要はありません。ただ、一度『真剣にやってみよう』と決めて、仕事をやりきる期間を設けることはおすすめです。いずれ転職をするにしても、その経験があるのとないのとでは大きく結果が変わります」
▼真剣にやってみることで得られる3つのメリット
やりたいことがまだはっきりしていない場合、今の職場で「自分なりにやりきった」と言える経験を積んでおく。桑原さんは、このポイントを強調します。それは、真剣にやってみることで得られるメリットが大きいためです。
◆メリット1 転職先で悩まずに済む
やりたいことがぼんやりしたまま辞めてしまうと、転職先でもそのまた先でも同じことで悩みがちです。せっかく転職するならば、次の会社では満足して活き活きと働きたいですよね。
今の職場で「やりきる」経験をしておくと、どの職場でも必要な地力が身につきます。任された仕事に真剣に取り組むうちに、「仕事ってこういうところが大変で、こういうやりがいがあるんだな」ということが実感として分かってきます。
そうすると、「もっとこういう仕事がしたい」「今度はこっちの方向に行きたい」と、やりたいことがだんだん明確に見えてくるもの。今はぐらぐら揺れている足場がしっかり固まるイメージです。やりたいことが明確になれば、転職しても「なんか違う」と同じことで悩む確率が低くなります。
◆メリット2 仕事の意外な面白さに気づける
部活や勉強で、最初はつまらなかったものがだんだん面白くなってきた経験はありませんか? 何事にも、真剣に取り組んでみて初めて気づく面白さがあります。
仕事も同じです。退屈に思える単純作業も「時間短縮にチャレンジ」と決めてタイムトライアルしているうちに、ゲーム感覚で楽しくなってきたりします。
どうしてもモチベーションが上がらない場合は、周囲の先輩にその仕事の面白さについてインタビューしてみましょう。何年も勤続している先輩なら、パッと見では分からない面白さまで知っているはず。その仕事をしていて面白い、楽しい、嬉しい、と感じるのはどんなときなのか、興味を持って聞いてみましょう。
退屈に感じる仕事を面白くする方法は、前回の記事でも詳しくご紹介しています。
(★前回の記事はコチラ→ 仕事がつまらない。少しでも仕事を面白く感じるための、3つの方法【職場の悩み相談室】)
◆メリット3 周囲の応援を得やすい
いずれ今の職場を去るにしても、「やりきった」と思えるほど真剣に取り組んだ後なら周囲の反応が変わります。親をはじめとする身の回りの人もそうですが、職場の上司や同僚も「よく頑張ってくれたね」という気持ちで快く送り出してくれる可能性が高まります。
「あなたがいなくなると困る」と引き止められるケースもあるかもしれませんが、いずれにしろ「頑張った」「必要な人材だ」と認めてもらえることに変わりはありません。その経験は、これからの人生にとって大きな自信になるはずです。
▼転職前に「やりたいこと」を明確にしておこう
やりたいことがまだぼんやりしているならば、事前にそこをクリアにすることで転職がうまくいきやすくなります。今の会社にいるうちに、自分が本当にやりたいことをできるだけ明確にしておきましょう。
自分だけで考えると、また「イメージと現実が違う」という事態を招く可能性がありますよね。そこで、今度は人に相談してみるのはいかがでしょうか。
相談相手は友達でも良いのですが、ベストなのは目指す分野でキャリアを積んでいる人です。実際にその業界・職種で働いている人なら、現実を知っています。その仕事が自分のイメージどおりなのか、現実との間にズレがあるのか。それを知る手がかりになるでしょう。
憧れの職業であればあるほど、良い情報ばかり見つめてしまいがちです。でも、実際に働いている人に聞けば、大変なこともやりがいも、現実に即した情報を得られます。メリットとデメリットの両方を検討して、「やっぱりやりたい」と思うのか、「そんなに大変なら別の道も探ってみようかな」と思うのかは自分の自由です。
今の仕事を真剣にやりきりながら、「でも本当はこれがやりたい」という気持ちをしっかり固めることができたなら、そのときこそが転職するベストなタイミングかもしれません。
▼まとめ:転職にベストなタイミングは「やりたいこと」が明確になったとき
転職すべきか、続けるべきか。これを見極めるポイントは、「やりたいことが明確かどうか」でした。まだはっきりしない場合には、今の会社でやりきる経験を積みながら、やりたい仕事についての現実的な情報を集めてみましょう。
無理に3年間と決める必要はありません。自分の決めた基準の中で、数ヶ月でも1年でもとことんやりきってみることが、結果として転職を成功に導きます。
*
次回は「夢を叶えたいけれどいまいち自信が持てない」「そもそも叶えたい夢が見つからない」というふたつの悩みにお答えします。
1992年、人事測定研究所(現リクルートマネジメントソリューションズ)入社。営業、商品開発、マーケティングマネジャー、コンサルタント職を経て、現在は「新人・若手の育成」をメインテーマとした企業向けトレーニング・研修の開発に携わる。育成ノウハウの体系化に取り組むと同時に、上司・育成担当者向けのセミナーを広く開催。時代に即した新たな「育成のアタリマエ」の普及に尽力している。東京都公立幼稚園・こども園PTA連絡協議会副会長。https://www.recruit-ms.co.jp
(取材・文/豊島オリカ)
★「もうイヤだ…」人生や仕事に疲れたとき、元気をくれる12の気分転換法