「やりたいことってどう見つけるの?」「転職は35歳までってホント?」転職あるあるQ&Aをプロに直撃

もはや当たり前になったけれど、まだまだわからないことがたくさんある「転職」。
たとえば「なんとなく今不満」だけどやりたいことがわからなかったり、年収が下がってもしてもいい転職なのかわからなかったり…。

今回はそんな「転職あるあるQ&A」の疑問を、まとめて解決していきましょう!

この記事でお話をうかがったのは…『doda』編集長 喜多恭子さん、『マイナビ転職』編集長 荻田泰夫さん、『エン転職』編集長 岡田康豊さん、『エン エージェント』キャリアパートナー 熊谷正志さん、一般社団法人国際キャリア・コンサルティング協会 代表理事 キャリアコンサルタント 長井亮さん

Q.「やりたいこと」がわかりません!

▼わかっている人が少数派。転職活動をする中で見えてくるはず

「むしろ、20代で見つかっている人はかなり少ないと思います。それこそプロ野球選手だったら『やりたいことは野球です』ですが、そこまでがっちり決まっている人は多くありません。『今、やりたいこと』より『なりたい自分』が大事です。

マイナビのデータでは、転職を希望する方のうち約7割は未経験の仕事への転職を希望しています。ただ『じゃあ、どんな仕事につきたいか』をしっかり決めて転職サイトを見ている方は、実はすごく少ないです。

ではどんなケースが多いかというと『転職活動をしているうちに、やりたいことが見つかっていく』というケースです。さまざまな企業を見る中で『自分が今までの会社では普通にやっていたことが他社からはすごく評価された』とか、そういった新しい発見がたくさんあります。

『他者からの評価』は、自分ではなかなかわからないもの。転職活動をして初めて見えるものがあります。だから自分はこうだ、これしかできない、これしかやりたくないと凝り固まりすぎずに見たほうがいいです。もちろん見た上で引き返すのも自由です」(『マイナビ転職』編集長 荻田泰夫さん)

Q「転職サイト」「転職エージェント」ってどう使い分けるといいんでしょうか?

▼転職サイトは一般的求人、エージェントは専門的求人が多め

「基本的には出ている求人が異なるので併用をおすすめしています。企業にもよりますがだいたいこのように使い分けていることが多いです。

転職サイト:早く採用したい、たくさん人を採用したい。
転職エージェント:希少性や専門性が高く、時間をかけてでもいいからいい人材を採用したい。

ただ、人材紹介は面接日程調整なども一手に引き受けてくれるので、人事の体制が整っていないという理由で人材紹介で採用をするというケースもあります。
このように出ている求人の方向性が異なりますし、なかなか自分にどちらが向いているのかはわからないことが多いと思いますので、時間に余裕があれば並走してください。時間がなければ人材紹介を使って自分に合うと思われた企業の傾向を掴んで、類似案件を転職サイトで探してみてください」(『doda』編集長 喜多恭子さん)

▼自分でやるか、他人の手も借りながらやりたいか

「転職活動のスタイルによって向き・不向きが異なります。

転職サイト:たくさんの求人が掲載されているので、自分で写真や仕事内容などの情報を見ながらマイペースにじっくり進めたい場合に向いている。
転職エージェント:第三者からアドバイスをもらえたり、企業との調整をしてもらえるなどメリットが多い。一方で限られた求人の中から応募先を決めなければいけなかったり、エージェント側のペースで物事が進んでしまう可能性がある。

それぞれメリットがあるのでまずはどちらもやってみて、向いているほうを重点的に使うのはいかがでしょうか」(『マイナビ転職』編集長 荻田泰夫さん)

Q.第二新卒や若手の採用で、特にここが見られるというポイントはありますか?

▼人柄。特に素直かどうか

「経験が浅く実績などがまだ少ないことが多いぶん、人柄をよく見られています。どの企業さんでも共通して見られているのはやはり『素直かどうか』。入社するとゼロから教えることが多いので『前の会社ではこうだったんですけどね』と、中途半端に前の会社を気にするような方はあまり好まれません。
面接で『素直な人だな』と思われるのは、面接の中で話しているうちにもしちょっと違うなと思っても『なるほど、そういう考え方もありますね』と一度人の意見を受け止められる方。逆に『上司が全然意見を言わなくて』『絶対こうなのに』など、自我を通しすぎる人はあまり良く思われない傾向にあるのでご注意ください」(キャリアコンサルタント 長井亮さん)

Q.これがあると転職しやすいスキルってありますか?

▼いわゆる、PDCAサイクルを回せること

「資格は時代の変化に伴って陳腐化してしまうことも。テクニカルなスキル以上に、どう主体的に仕事を捉えて成果を出せるよう取り組めるかはとても大事です。『課題に対して仮説を立て、目標設定し、行動し、検証が出来る』か。どんな会社のどんな仕事内容であっても、これができる人は評価されます」(『エン エージェント』キャリアパートナー 熊谷正志さん)

Q.年収が下がる可能性のある転職って、どんな転職ですか?

▼未経験転職。または大手から中小・ベンチャー企業への転職

「『未経験転職』です。これまでの経験とは異なる業界や職種への転職の場合は、まず年収が下がることを念頭に考えてください。『年収を上げたい、でも未経験にチャレンジしたい』は、相当難しいです。
また、現職が大手企業でベースの年収が高かったり、手当が厚い企業から中小やベンチャーに転職する場合も、年収が下がるケースがほとんどということは頭に入れておいてください」(『エン エージェント』キャリアパートナー 熊谷正志さん)

Q.よく「コミュニケーション力」が求められる気がします。「コミュニケーション力がある人」ってどんな人ですか?

▼自分の武器を知っている人のこと

「コミュニケーションの取り方は人それぞれで、仕事の場面では時と場合によって求められるものが違います。結局のところ『自分の特徴を知っている人』が有利です。
たとえば『どんな場でも、誰とでも友好的に話せる人』がいるとします。これはもちろん大きな強みです。一方で私の場合、『自分はプライベートでは打ち解けるまではなかなか話せないものの、取材や講演だと初対面の人の前でも問題なく話せる』『雑談は苦手だけど、オンラインで営業を進めたり商談は得意』ということを知っています。苦手分野はありますが、そこは気にせずに得意分野を使えばいいんです。

他にも例を挙げるとすれば『よく知っていることについてはいくらでも話せる』『共通の話題を見つけるのが得意』『自分が面白い話をするのは苦手だけど、人の話を引き出すのは上手』など、よく考えてみると何かしらコミュニケーションにおいて得意なジャンル、もしくは伸ばせば得意になれそうなジャンルはあるのではないかと思います。自分のことを改めて振り返って、武器になりそうなものを見つけましょう」(キャリアコンサルタント 長井亮さん)

Q.面接で残業の実態などを聞きたいのですが、質問でそういったことを聞くと印象は悪くなりませんか?

▼聞き方を考えれば問題ありません

「耳にする評判や口コミサイトなどで、残業が多いという声を見かけると気になりますよね。
聞きたいときは『最初は一定の時間をかけないとなかなか成果につながらないと思い残業は覚悟しているのですが、参考までに皆さんどのくらいされているのか教えてください』や『労働時間に対する考え方を教えてください』など、『残業がイヤだから知っておきたい』という聞き方ではなく、前向きに聞く方向であれば特に問題ないと思います」(キャリアコンサルタント 長井亮さん)

Q.「転職するなら35歳まで」って、本当ですか?

▼一概にそうではないものの、年齢が上がるほど水準が上がるのは当然

「『転職するなら●歳が限界』という説は、実はどんどん高年齢化しています。転職において年齢がネックになるのは、受け入れる会社側が周囲とのバランスを考慮するから。仮に35歳で転職をするなら、転職先が考える『その年齢なりの経験やスキル』を満たしているかどうかが問われます。経験年数が長くなればそのぶん求められる水準が上がるのは当然で、難易度は増します」(『マイナビ転職』編集長 荻田泰夫さん)

▼職種未経験は厳しくなる。経験者であれば特に上限なし

「『職種未経験』は30代になると厳しい印象があります。ただ、これまでと同様の職種で未経験業種に転職の場合は、30代でもチャンスは広がっています。
一方で経験者転職であれば、明確な上限の年齢はありません。以前は『35歳転職限界説』
という言葉もありましたが、若手労働人口の減少や世の中の変化スピードに対応すべく、経験値の高い人材を外部から登用する動きが加速しています。マネジメント経験があったり、スキル・知識がある35歳以上のミドル層は求められています」(『エン転職』編集長 岡田康豊さん)

Q.35歳以上になっても転職できる人になるためには、どうすればいいですか?

▼一貫性を持ちながら、できることのタグを増やして希少性が高い人材になる

「ハイプレイヤーとして、自分自身が成果を出してきた経験は必須です。その上で面接で経験を整理して話すことができ、どういった働きかけでどんな成果が出たかを筋道立てて話せるかどうか。
そして『一貫性』が重要です。仕事をする上でベースとなる自分の仕事の軸を決めた上で、自分のできることの『タグ』を増やし、掛け算のキャリアを考えていくことが希少性ある人材になれるコツです。
たとえば僕の場合は、もともとWEBや開発デザインの経験がありました。それだけなら似たような人材は世の中にたくさんいます。僕はそこにHR(人材系)の知識、マネジメントなどのタグを増やしてきました。

同じ事務の仕事であっても『なんとなくやっている人』と『入力作業の効率化に向けて、ExcelでVBAを勉強して自動化に取り組んでみる人』ではまったく異なります。後者は『ExcelでVBAができる』『業務効率化に向けて、入力作業の自動化に取り組んだ経験』というタグがつきます。それをまた次で活かしていくとキャリアが広がっていくはずです。
『タグを増やす』には、まず飛び込んでみることが重要です。今の仕事で新しいことをお願いされた場合に『やりたくないことだからやらない』ではなく『まずやってみる』こと。最初は面倒だなと思っても、意外とそれがあなたのキャリアにとって重要なこととなる可能性があります」(『エン転職』編集長 岡田康豊さん)

ここまで全7回にわたり、気になる転職にまつわるトピックスのあれこれをご紹介してきました。
共通するのは「自分を知ること」そして「毎日の仕事をこなすだけでなく、どう考えて、どう取り組んでいくか」が重要ということ。転職だから特別なことをしなければいけない…ではなく、今目の前にある仕事にどう取り組むかの姿勢が大事。
この機会に「自分は将来、どんな自分になりたいか」「そのためには何が必要か」「では、日々の仕事でどんなことに取り組んでいくと、そこにつながるのか」を、改めて考えてみてくださいね。

構成/後藤香織