【ゆとり以上バリキャリ未満の女たち】第7弾「転機の社会人留学」Vol.1
「ゆとり以上バリキャリ未満」を生きる女子のルポルタージュ連載の第7弾がスタート!
今回の主人公は、開発職として安定した仕事につきながら、32歳にしてアメリカへMBA留学を決めたエミリ。
学生同士の関係性には″クラスメイト″というような距離感の近さはなく気楽なもの。今、頭の中は春休みの南米旅行のこと。「留学中には旅行で貯金を全部使い切ってもいい」そう決めたエミリの理由とは?
●原エミリ(32歳)製薬会社勤務
1985年生まれ 大阪府出身 杉並区在住
大学の薬学部卒業後、大学院でバイオサイエンス研究を専攻。修士課程修了後、外資系製薬会社に入社。2年勤務して現在の会社に転職。現在5年目。研究開発職。
似ているタレント:松たか子
理想のタイプ:小泉孝太郎・進次郎
パートナー:あり(未婚)
手取り月収:33万円
「転機の社会人留学」Vol.1【1,000万使い切るほど旅したい】
■リフレッシュMBA留学
記録的な寒波が襲い、連日マイナス10度を超すアメリカ東海岸のボストン。ここが、エミリがこれから1年間過ごす場所だ。学生に戻るのは約8年ぶり。会社のリフレッシュ休暇制度を利用した、留学生活が始まる。
今日、初めて顔を合わせたクラスメイトは、予想していたよりも平均年齢が高かった。32歳のエミリはクラスメイトの中では真ん中かちょっと上くらい。ただ、一番リラックスしているのがエミリだということは、すぐにわかった。
「多くのクラスメイトが、『MBA(経営学修士)を取得する!』という意気込みというか、圧みたいなものを発してました(笑)。それがないのが唯一私なのかもしれません。MBAの勉強は会社の要請ではないし、仕事で必須というわけでもありません。私の中では長期休暇のチャンスをもらえたので、リフレッシュして世界を広げる時間、みたいな感覚です。そして、滞在中に世界を旅する拠点みたいなもの。今は、春休みに行く南米周遊旅行の計画を立ててます!」
もちろん、勉強は大変だ。社会人になってから、改めて英語を勉強して、特にこの2年はかなりのペースでやってきて、授業についていけるレベルまでもってきた。けれど、ディベートの場や細かい感情表現となると、思うようにしゃべれないこともある。もどかしいけれど、それさえも楽しいのが今のエミリだ。
長い目で見れば、MBA取得は仕事に役立つこともあるだろう。でもそれが留学の第一の目的ではない。製薬会社での開発者生活、6年付き合っている彼との事実婚関係。どれにも不満はないからこそ、「マンネリ化させないため」の工夫が必要なのだ。留学はそのための気分転換みたいなもの。こんな本音を言ったら、クラスメイトからは恵まれた環境だと妬まれるかもしれないけれど。
「子どものときからの貯金と合わせて、これまでに1,000万円貯めてきました。アメリカにいる1年間で、それが空っぽになるくらい、たくさん旅行に行って、たくさん食べ歩いて、悔いがないように過ごしたい。一生の中で、こんな一年があってもいいですよね。帰ればまた、仕事が待っているんですから!」
■半年でTOEIC200点アップ!
約10年前、エミリが大学院で取り組んだのは、がん細胞の研究だった。幼稚園生のとき、大好きだった祖父を胃がんで亡くしたことがきっかけだ。
「おじいちゃん、お医者さんだったのに、どうしてがんになっちゃったんだろう。そんな疑問がずっと消えなくて、がんのことをもっと知りたいと思うようになりました。やがて、がんと遺伝子の関係に興味をもって、遺伝子をターゲットにした薬に関わる会社に入社しました。小学生のときは、お医者さんを目指したこともあったけど、難しすぎて挫折(笑)。今の開発職のほうが自分に合っているので、結果よかったかな」
エミリの現在の仕事は、新しく開発された薬の治験を行って、レポートをつくったり、厚生労働省への認可申請業務をするというものだ。1日9〜10時間は、ずっとパソコンの前に座り、研究データや研究論文、レポートとにらめっこしている。不要に残業することはないが、そのぶんランチも忘れて、がーっと仕事にのめり込むこともある。
「入社2年目くらいからでしょうか。海外とのやりとりをする先輩研究者も多いので、私もいつか英語が必要になるんだろうなと思い始めました。英語の勉強は大学受験以来でした。大してしゃべれるわけでもないし、社内にいる留学経験者と、肩を並べることなんてできっこない。少しでも追いつくには、留学するしかないと考えていました。それで、アメリカの大学に入るためのTOEICの勉強を始めました。会社に行く前の早朝、帰ってきてからの深夜、そして休日。半年間は、その時間すべてを英語の勉強に捧げていましたね。でもやっぱり勉強は好きみたいで、学生に戻ったみたいに楽しくて。半年でTOEICスコアを600から800に伸ばしました!」
>Vol.2「短期留学で得たもの、得られなかったもの」に続く
「CanCam」や「AneCan」、「Oggi」「cafeglobe」など、数々の女性誌やライフスタイル媒体、単行本などを手がけるエディター&ライター。20数年にわたり年間100人以上の女性と実際に会い、きめ細やかな取材を重ねてきた彼女が今注目しているのが、「ゆとり世代以上、ぎりぎりミレニアル世代の女性たち」。そんな彼女たちの生き方・価値観にフォーカスしたルポルタージュ。