「推し」と「恋愛」の違いって何?心理学的観点から解説

混同してない?「推し」と「恋愛」の違いって何?

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アイドルブーム以降一般的になった「推し」という言葉。
アイドルなどの著名人に向ける感情のあり方を表現する言葉として広まった概念ですが、なにぶん定義があいまいなもの。これを実際の人間関係に持ち込んだり、恋愛感情と混同してしまうと、ちょっと痛い目を見るようです。憧れの先輩や、あまり喋ったことのない相手を理想化するあまり、崇拝に似たような形でしか愛情を表現できなくなってしまう恐れも……。

そこで今回は、混同しないでおきたい「恋」と「推し」の違いを考えてみましょう。

脇田尚揮

占心行動学創始者(株)ヒューマンライフ出版代表取締役社長、ミンストレールCEO、大学・高校講師。経営コンサルタント、心理カウンセラー、権僧都職僧侶。会社顧問契約による占い鑑定を業とする。社外取締役・顧問30社担当、経営・占術にまつわる資格80種保有。メタバース世界SUN.ファウンダー・運営。
公式サイト https://wakita-naoki.jp/

■まずは「つりあい」が取れているかどうか


恋愛には、心理学者キースラーの提唱する「マッチング仮説」が成り立ちます。これは、恋人として選ぶ相手は自分自身とつりあいの取れた人を選ぶという心理。

そのため、「恋」と「推し」は、自分に分相応か不相応かによって線引きがなされていると言えるかもしれません。あまりにも魅力的な相手に対しては、好きだけど恋愛関係に発展するのは難しいであろうということを認識しているため「推し」という形で接点を持とうとすると考えられるのではないでしょうか。

■素顔を見せられるようになる過程があるか否か


関係性が深くなってくると、相手が弱みを見せてくれたり、逆に自分の弱みを相手に見せられるようになったりします。互いの信頼関係が築かれてきたとき、人は安心して自分の弱みをさらけ出すことができるのです。

恋愛関係の相手に対してはこういった自己開示の過程があるものですが、自己開示の機会がごく稀であったり、内容も薄いもので終わってしまうような距離感の場合、アイドルに対して抱く「推し」とそう大差ない感情のあり方に終始してしまうかもしれません。

■一線を超えられる自信があるか否か


人は行動を起こすとき、一定の目標を立てます。このときの「ここまでは達成したい」と考える基準のことを「要求水準」といいます。人間には、難しいことや無謀そうなことにチャレンジしたくなるという本能があるのです。

つまり、手に入りにくい異性に惹かれてしまうメカニズムがあるのです。しかし、そこで「親しくなりきれそうもない」という認識が働く場合、人は合理化して自分の心を慰める防衛機制が働きます。そういった場合に「推し」という形で自分を納得させ、逆にこの一線を超えられるという自信が持てれば「恋」として向かっていけるのかもしれません。

■求めるほど苦しくなるのは「愛情」そうでなければ「推し」


心理学者ルービンは、相手を好ましいと思う感情を好意(LIKE)恋愛(LOVE)に分け、それぞれの尺度をつくりました。LIKEに並ぶ感情は、明るいものであることが多いのですが、LOVEはそれだけではなく嫉妬や不安という暗い感情も含んでいます。

また、LOVEには到達点や目標がありません。求めれば求めるほど苦しみも生まれてしまいます。そのため、好きでいることによって安心を得ているような側面が強く、傷つくことを想定しておらず、ある意味で気楽に取り組んでいるとしたら、それは「恋」でなく「推し」でしかないのかもしれません。

「推し」も「好き」も同じ好意という感情であることに、変わりありません。でも、「推し」においては、分不相応感、距離感、親しくなれない線引きがあると言えます。そして、何より「愛することの痛み」がないのが特徴。その気持ちが「押し」なのか「好き」なのか分からなくなったら、この4つの条件を思い出してみましょう。(脇田尚揮)