「頭痛」にはさまざまな原因があります。
肩こりになったり目が疲れると頭痛になる……。二日酔いの頭痛をどうにかしたい……。
そんな、さまざまな頭痛に対する対処法、知っておきたいですよね。
【頭痛の治し方】連載最終回は、頭痛外来の病院として有名な、秋葉原駅クリニックの院長・大和田潔先生に、頭痛に関するさまざまな疑問をうかがいました。
◆肩こりや二日酔いによる頭痛はどうする?専門医に聞いた「頭痛あるある」Q&A
【Q.「肩こり」が頭痛を呼ぶのはなぜですか?】
これはまず、逆です。
昔、肩こりは「緊張型頭痛」「肩こり頭痛」と言われていて、「肩が凝って、肩や首の筋肉が痛いから頭が痛くなった」ということだろう、と治療していた時代がありましたが、あまり良くなることはなかった。なぜなら実態はその「血管の拡張による片頭痛」だったからです。
そこで、ドイツの先生が「片頭痛の多くの人は、首や肩が痛い症状を伴っている」ということを発表しました。実際、片頭痛の治療をしたら、肩こりが減ったり治ったりした方をたくさん拝見してきました。皆さん、説明した時には半信半疑なのですが、実際治ると理解してくださいます。筋弛緩薬や痛み止めがあまり効かなくて、すごくつらくてなかなか治らない首や肩の痛みは「片頭痛」を治療すると治る、ということがあります。
【Q.眼精疲労になると頭痛がするのですが……】
これも、ほとんどが片頭痛に由来しています。「目の奥の血管の拡張」によって、目の奥や額が痛くなるんです。
「目が疲れているから頭痛になるんだ」と言う人もいるけれど、たとえば耳や鼻って、疲れても痛くなりませんよね? ずっと食べ続けても「舌疲労になった……」なんて話、聞いたこともない。「鼻精疲労」や「耳精疲労」も聞いたことないでしょう。
感覚器とよばれるものは、疲れて機能低下をきたすことはあっても痛みを出すことはありません。目の網膜や視神経も疲れたからと言って痛みを出すことはありません。「目疲れによる頭痛」だと思っているものは、疲労による片頭痛のことが多いです。
目の奥が痛いときは、「片頭痛専用の薬」がよく効く人が多い。
世の中で言われている眼精疲労や肩こりには、かなりの割合で「片頭痛」が混ざっているんです。
【Q.二日酔いになると頭痛になるんですが……どうしたらいいですか?】
お酒を飲むと頭痛になりやすい、とわかっている人におすすめしたいのは、漢方薬です。
お医者さんが飲み会の前に飲んでいる漢方薬は「呉茱萸湯(ごしゅゆとう)」と「五苓散(ごれいさん)」です。
「呉茱萸湯」は、神経そのものに働きかけて頭痛を減らしてくれる。「五苓散」は、細胞のむくみを改善してくれます。どちらも即効性がある漢方薬で、飲んでから飲み会に参加すると、頭痛が起きにくくなります。
それから、お酒を飲んだときの頭痛は、アルコールを分解するときに生まれ、二日酔いの原因でもある「アセトアルデヒド」による血管拡張によることがある。
それを防ぐのは簡単で、まずは飲みすぎないこと。アルコールのアセトアルデヒドの濃度を下げれば血管拡張が引きます。二日酔いの防止と一緒ですが、お酒を飲むときには水分も多めにとって、どんどんアルコールを分解すると頭痛になりにくいです。
また、女性は排卵期と月経期に頭痛がおきやすいので、その時期はできるだけアルコールを避けると良いでしょう。
【Q.なんで人間が進化しても、月経中は頭痛になりやすいなど、不調はなくならないんですか?】
女性は月経や出産で急激に血液が失われることがあります。そんなときでも、大量に脳に必要な血液を送っても耐えきれるように、血管がしなやかに、拡張しやすいようにできている。だから「血管拡張」が起きやすくて、頭痛になりやすいと思っています。
けれど、そのぶん血管が裂けにくいし詰まりにくいから、脳卒中が起きる確率は男性よりはるかに少ない。
人間の体は「不都合な進化」と呼ばれる、わざと不都合性を残した進化をしていることがあります。
例えば、「糖尿病」もそう。現代で長生きするにあたっては、脳梗塞や心筋梗塞の原因になるからよくないと言われている。でも、昔は「糖尿病=血糖値が高い」と、血液が凍りにくくなるから、糖尿病であるほうが凍傷になりにくく、生き延びられたといわれています。昔は長生きしても50~60歳で、糖尿病の合併症になる前に亡くなっていたから、糖尿病になって、凍傷にならずにいたほうが長生きだった。「今不都合だ」ということが、昔はとても有利な特徴だったということもあります。
排卵期の頭痛もそう。排卵期に頭痛になることで、家にずっといるので、生殖の点では都合がよかった……とも言われています。
【Q.最後に、頭痛に悩む方へのメッセージをお願いします。】
頭痛の対策は、生活習慣を整えることが一番大切!
力技で「頭痛が起きたら痛みどめに頼り切って体をねじふせる」ではなく、まずは「起きる時間・眠る時間を一定にする」「仕事のときは適宜休憩を入れる」「女性は特に月経期間中は睡眠時間と働く時間に気を配る」など、頭痛を減らす生活習慣を心がけましょう。
女性は、一生にわたり形を変えて頭痛とつきあっていくものです。
それでも頭痛になったら、きちんと自分に合った痛み止めや片頭痛の薬を早めに飲む、ということが大事です。ガマンしてもいいことはありません。
それでも、どんなに気を配ったとしても、自分の意志と関係なく、さまざまな悪条件が重なってしまい、朝から吐いてしまうような頭痛になることもあります。そういった方には、ふさわしい薬も用意されています。ほとんどの女性が「頭痛持ち」なんです。うまく頭痛と付き合うことにしましょう。上手に付き合えば、どの年齢でも頭痛はそれほどひどくなりません。
これまで6回にわたり、意外と知らない「頭痛」に関する正しい知識をご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?
この連載を読んだ方の頭痛が、少しでも楽になれば幸いです。
すべての方の頭痛が、早く良くなることを祈っております!(後藤香織)
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監修:秋葉原駅クリニック 大和田潔先生
千代田区外神田佐久間町2−1大原ビル4F
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