押切もえが語る「山田 優と蛯原友里の存在が教えてくれたコト」|歴代モデルを直撃Vol.26【創刊40周年記念】

CanCamモデルやスタッフに受け継がれるモデル魂 Vol.26押切もえ

CanCam創刊40周年を記念して、歴代のOGモデルをクローズアップするスペシャル連載。専属モデル時代から今日までの軌跡を振り返りつつ、今だから話せる撮影裏話やプライベートなお話など、自分らしく輝き続ける彼女たちのリアルなメッセージをお届けします。

スぺシャル連載のラストを飾るのは、唯一無二の存在感で絶大な人気を誇り、“CanCam”黄金時代の立役者でもある押切もえさんが登場!

カリスマ読者モデルとして、高校時代はティーン誌で絶大な人気を誇り、2001年に『CanCam』の専属モデルに抜擢。専属になる前は、仕事がない時期もあった、と話す押切さん。「ツラかったけど、その経験があったからこそ、お仕事があることに感謝できるように。仕事が順調なまま『CanCam』の専属モデルになっていたら…仕事への向き合い方も違っていたかもしれない」と振り返ります。

仕事に対して真剣に誠実に、そして決して諦めないという強いマインドで臨む姿は、スタッフやモデルの“お手本”でもありました。そんな彼女が、『CanCam』専属モデル時代に感じていたこと、葛藤したこと…トップモデルになるまでを深掘りしました!

専属モデルになった当初は、自分の個性に悩んだことも…

ーー専属モデル時代、悩んだことはありましたか?

「専属になった当初は、『これでいいのかな』と、いつも弱気。実際に、撮影をして『OK!』と言われても、『私、本当に大丈夫でしたか?』って聞いていましたし、ちょっと面倒なタイプだったと思います(笑)。毎日毎日、何度も撮影をしていると、だんだんと正解や合格点がわからなくなってきて、迷っていた部分もありました。最初の頃は、カメラマンさんから『そんな笑顔でいいと思ってるの?』って言われることもあったりして、笑顔の練習をして臨んでもうまくいかなくて、悩みは尽きませんでした。カメラの前でただ笑っていればいいと思ってる、と注意されて、メイクしてるし泣いたらいけないのに、自然と涙が流れたことも。『CanCam』に入る前にモデルの経験はありましたが、ティーン誌とはポージングや表情の作り方がまったく違くて、常に悩みながら、葛藤しながらの毎日でした。でも、カメラマンさんやスタッフからの厳しい言葉も、今となってはいい経験でしかなかった、と感謝してます」

ーー専属モデル時代、自分の個性はどのように出していましたか?

「『CanCam』が“カワイイ”や“モテ”をテーマにしている時期があって、世の中的にも“CanCam=カワイイ系”のイメージが強かったですし、“モテ”が社会的なトレンドにもなっていました。でも、私は”カワイイ系”だと自分の個性が活かせないと気づいたんです。(蛯原)友里ちゃん、(西山)茉希ちゃん、(徳澤)直子ちゃんは、“カワイイ”雰囲気がすごく似合っていましたけど、私は…しっくりきてないかも、と思いつつ、きっと大丈夫!似合っているはず!って自分に言い聞かせていた部分もありました。読者の方や周囲からの反応もあまりよくなくて…(笑)。それで、”カワイイ系”の衣装を着るときでも、『カワイくもあり、カッコいい!』というイメージを自分の中で意識して、表現をするようにしたんです。もともとティーン誌の読者モデルだったので、そこでの経験やカッコいい海外モデルやアーティストのポーズを真似したり、モードをちょっぴり意識して表情やポーズの引き出しをたくさん作るようにしていました。今思うと、自分の個性についてちゃんと考えるきっかけになったと思います」

ティーン誌から『CanCam』に移籍した当初、新しい現場では常に弱気だったという押切さん。それでも現場では弱音を吐いたり、落ち込んでいる姿は絶対に見せなかったと、当時のスタッフは言います。その後、押切さんの「決して表には出さない努力」は着実に実を結び、『CanCam』で唯一無二のモデルとして脚光を浴びるように。スタッフやモデルの間では、ポージングや表情、衣装の見せ方に悩んだら、「もえちゃんに学べ!」という合言葉のようなものもあったとか。弱気だったCanCamデビュー期を乗り越え、仕事仲間から頼られる存在に。本人はそんな時代をどう思っていたのでしょうか。

「『CanCam』に入った頃、私は専属モデルとしては新人だけど年齢は上のほうでしたし、先輩方の卒業のタイミングとも重なっていて、しっかり頑張らなくちゃ!という想いが強かったんです。これは私だけじゃなくて、編集スタッフさんもそうだったと思うんですけど、『CanCam』が一気に売れ出した時期で、ページも企画もイベントも増えて、とにかく頑張るしかない、と必死でした。手探りなことも多い中、目の前のことをひとつひとつちゃんとやりましょう、って。いちばん、大変な時だったかもしれないですね」

ーーモデルやスタッフの言葉で印象的なものはありますか?

「確か…『CanCam』に入って3か月経ったくらいの頃かな。通勤コーデの企画で、膝丈のタイトスカートを履いて、ロケ地も丸の内という撮影があったんです。そのとき、編集スタッフの方から「自然に歩いてみて」「仕事のファイルを持ってみて」と言われたのですが、会社勤めをしたことのない私は、どちらも正解がわからなくて…頭でいろいろとイメージをして撮影をしたんです。でも、ティーン誌の時代にお仕事をしていたカメラマンさんと『CanCam』の撮影で再会して、同じような表現をしたら、『そういうポーズじゃ、もえちゃんの良さが全然出てないよ。もっと自分らしさを出しちゃっていいと思う! 出さないともったいないよ』と言われたんです。その頃は、どうにか『CanCam』に馴染もうとして、自分の個性を消そうとしていた時期で。でも、その言葉でハッとして、ちょっと怖さもありましたが、その撮影で思いきって自分らしい表現をしてみたんです。そうしたら、写真を見た編集部のスタッフが褒めてくれて、ポージングが無限に広がるような気持ちに。型にはめようとしたり、他のモデルさんの真似をしようと思っていた自分から解放されて、自由になれました」

優ちゃん、友里ちゃんに出会えたことも大きな宝

ーー「CanCam」が人気になり、生活に変化はありましたか?

「自身の生活にはそこまで変化はありませんでしたが、モデル以外にテレビのお仕事が入ることも増えて、雑誌の読者だけが知ってくれていたのが、だんだんと読者とは違う世代の方にも覚えていただけるようになりました。性別も年齢も関係なく声をかけてもらえたり応援していただいたり、それがとても嬉しくて。ティーン誌時代も街で声をかけられることはありましたが、『CanCam』の専属モデルになってさらに増えていきました」

ーー専属モデル時代、心がけていたことはありますか?

「まだ『CanCam』に入ったばかりの頃、撮影のお昼休憩でご一緒するモデルさんの少食ぶりに驚いて、意識が変わったのを覚えています。ティーン誌のときは、ふたり分食べたり、残ったお菓子やお弁当を持って帰ることもあったくらい、私も他のモデルたちも本当によく食べていて、それが普通だと思っていました(笑)。初めてCanCamモデルたちが食べている量を見てから、私も腹六〜八分くらいにするようになって、その習慣は今も続いています。撮影でたくさん動くとお腹は空きますが、満腹まで食べてしまったら、動きも重くなるし、衣装もキツくなってしまう…あまりよくないですよね。そもそも仕事をしにきていて、お昼ご飯を食べるにきてるわけじゃないので(笑)」

ーー仕事で落ち込んだときはどうしていましたか?

「編集スタッフの方や、優ちゃん、友里ちゃんに話していました。歳を重ねて、若い頃に優ちゃんや友里ちゃんに出会えたことはすごく貴重だったなぁと改めて感じています。こんなにカワイくて、明るくて、ストイックに頑張る子たちがいるんだって、とても衝撃的でした。言うべきことはちゃんと言うけど、なんて表現したらいいのかな…、ふたりとも絶対に腐らないんですよ、文句も言わない。だから、ふたりが言わないのに、私が弱音や文句を言うなんて絶対にダメだって思っていました。もしふたりがネガティブなタイプだったら、今の私はなかったかも。優ちゃんと友里ちゃんは、今もとても大きな存在ですし、大好きです」

「CanCam」の専属モデルになった当初、自分の個性を出せずに悩んでいたという押切さん。その後、出会いと挑戦を重ね、どんなときでも諦めず最後までやり切るポジティブな精神で、“カワイくてカッコいい”という新しい女のコ像をCanCamに確立。妥協せず力を合わせて、いい雑誌を作ろう!というマインドは、今もスタッフやモデルたちに受け継がれています!

★次回は、『AneCan』への移籍や結婚など…『CanCam』卒業後を振り返ります。お楽しみに。

押切もえProfile/千葉県出身。1979年12月29日生まれ。高校生の頃から読者モデルとして活躍し、同年代の女のコのカリスマ的存在に。2001年に「CanCam」専属モデルに抜擢され、スタイルの良さとモテるカジュアルを提案し、一躍トップモデルになる。誌面で着用したアイテムは即完売になるなど、その人気ぶりは社会現象に。2007年に創刊された「AneCan」に移籍後は、CanCamのお姉さんスタイルを確立。一方で、2013年には長編小説『浅き夢見し』で小説家デビュー。2015年には絵画作品が二科展に入選するなど、多方面で活躍中。インスタグラムは、moe_oshikiri
撮影/ 谷口 巧(PygmyCompany) スタイリスト/粟野多美子 ヘア&メイク/陶山恵実(ROI) 取材/小山恵子
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