人間関係とは一筋縄ではいかないものです。信じていた人に裏切られることも、仲がいいと思っていたはずの友人が実は相手はそう思っていなかった…ということも、さまざまなケースが存在します。そういった経験を積み重ねたり、人から聞いたりすると、つい「もしかしたらこの人も、本当は私のこと嫌いなのかもしれない」と疑心暗鬼になってしまうこと、ありますよね。
この「あるある」なお悩みを解決する方法について、「おおざっぱに笑って健康に生きる」をモットーに活躍する「ラフドクター」、精神科医・産業医の井上智介先生にうかがいました。
友達から嫌われているんじゃないか、と落ち込んでしまうあなたへ
Q.すごく気にしいな性格で、他人から言われたことの裏の裏まで考えて「嫌われてるかもしれない」と落ち込むことが多々あります。仲良くなったとしても「損得で私と仲良くしてるのかな?」など、謎の疑いを持ち始めます。考えすぎないようにするためにはどうしたらいいでしょうか?
A.遺伝子レベルでプログラムされているので、ある程度は仕方ないと自分を責めないこと。その上で、しんどくならず、心地よく生きられる人との距離感を探しましょう。
まず「嫌われているかもしれない…」とつい考えてしまうのは、自然なことです。僕たち人間に遺伝子レベルでプログラムされ、植え付けられている考えなので、そう思うことで自分を責めないでください。
もともと僕たち人間は、長い長い間狩猟民族として集団生活を営んでいたため、「周囲から嫌われること」は、そのまま食料が得られず、死に直結することでした。だから僕たちが「嫌われることが怖い」と思うのは、その時代の名残です。
ただ、狩猟民族だった時代よりもずっと、人に嫌われても生きていけるようになった現代では、その本能が強すぎると、少しつらいこともありますよね。
このお悩みを持っているあなたは「損得勘定なんじゃないか…と、そんな風に疑り深く相手を見てしまうのは、悪いことなんじゃないか」と考えているのではとお見受けします。でも、それは短所だと思わないほうがいいどころか、あなたの「慎重さ」や「細やかさ」などにつながる、立派な長所です。きっと他の人の痛みに気づける優しさがあるはずですし、「絶対に一瞬でお金持ちになれる」などの怪しいセミナーにも騙されないはず。
人に会った後に「あんなこと言って嫌われたかな…」とモヤモヤして反省会をしてしまうのも、必ずしも「ダメ」ではありません。それを、自分が苦しまない人間関係や、距離感を考え、学ぶプロセスだと認識し直してみてください。「同じようなシチュエーションのときに、こういうことは言わないようにしよう」と次に生かして、どんどん適切な距離感を見つけていけるようになればいいんです。
そうやって、あなたが心地よく生きられる人との距離感や、人間関係を築ける適正人数を探していってみてください。「嫌われているかもしれない」と思わなくて済む、信頼を築ける人とだけ深く人間関係を作っていっても、誰に責められることもありません。心地いい距離感は人によって違います。距離感が近ければ近いほどいい、というわけでもありません。「いろんな人と分け隔てなく仲良くやれて、人を素直に信じるべき」という世間の風潮に無理に流される必要はありません。そういった風潮がしっくりこないなら、「しっくりこない」感覚を大事にしてください。
もし、そういう方が「誰とでも広く仲良くなる」を目指すと、ある程度慣れることはできると思いますが、そこに到達するまでにかなりの時間とエネルギーを必要とするので、疲れてしまうこともあるでしょう。無理をすることはありません。「人間関係を広げすぎず、信用できる人との関係値を高めていく」ほうが、あなたの安心感や生きやすさにつながるはずです。
井上智介先生
精神科医&産業医
「おおざっぱに笑って健康に生きる」をモットーにした「ラフドクター」として活躍中。書籍多数。近著に『がんじがらめの心がラクになる「呪いの言葉」の処方箋』『この会社ムリと思いながら辞められないあなたへ』など。