携帯電話やパソコンの普及もあり、社会人になってから“文字を書く”という機会が少なくなり、さらに、年賀状以外で手紙やハガキを送ることもほとんどなくなってしまいました。
思い返してみると、中学から高校にかけて、遠くに住んでいる“文通友達”と手紙のやり取りをしていた頃、どんなレターセットでどんな話を書こうか、そして手紙を出した後は、相手からの返事を首を長くして待っていたものです。
『和楽』5月号で紹介されていた、鳩居堂の大人気商品「シルク刷(ずり)はがき」。誕生は、昭和53年(1978年)頃、“椿の柄”がスタートだったそう。当時、観光地などの写真絵はがきはあったものの、通常、はがきといえば無地か罫線が入っているというシンプルなものばかり。そんな中、鳩居堂の「シルク刷(ずり)はがき」のように大胆に絵柄が入ったものは珍しく、衝撃的なデビューだったとか。
はがきのデザインをしているのは、浮世絵の版元で育ったデザイナーさん。浮世絵の“余白の美”の芸術は、このはがきでも、文字を書くための空間が存分に生かされていますよね。しかも、書き入れる文字が主役になるようにと、大胆な絵柄は描写が緻密になりすぎないように配慮されているのだとか。
手のひらに乗る一枚の紙に、さらりと描かれた柄のようでいて、とても日本らしい心意気を感じさせます。
「シルク刷(ずり)はがき」は、四季折々の絵柄が200余種あり、季節などに応じて、桜や紫陽花、藤、菖蒲など、その時季にしか出会えないはがきがあるので、根強いファンの方が足しげく通うのもうなずけます。
12か月の草花だけでなく、富士山や花火、金魚、中秋の名月など、日本の風物詩を描いたもの、また、銀座の街並みが描かれたはがきもありました。
Woman Insightスタッフも、実際に、東京・銀座にある東京鳩居堂に行ってみました。入った瞬間、独特の香りが。彩り豊かな和紙などが並ぶ中、平日の日中にもかかわらず店内は人であふれていました。特に目立ったのは、外国の方。東京鳩居堂の宮出さんに少しお話しを聞いてみました。
「最近は特に欧米からいらっしゃるお客様が多いですね。人気の商品は、和紙を使った折鶴や貝殻などのピアスやイヤリング、同じく和紙を使った折り畳みの鏡、ノートなどです。一目で見て“日本”らしさがわかる商品が人気のようです」(東京鳩居堂・総務部 宮出さん)
↑このはがきのために特別にすかれた紙は、写真ではわかりにくいのですがクリーム色をしています。ボールペンでもなめらかな書き心地。絵柄もあわさって、温かな雰囲気を感じさせるはがきです。 東京鳩居堂 http://www.kyukyodo.co.jp
描かれた絵柄が“季節”を運ぶ「シルク刷(ずり)はがき」。もうすぐやってくる「母の日」、贈り物と一緒に、はがきに日頃の想いをのせてみてはいかがでしょうか?(さとうのりこ)
(『和樂』2014年5月号)
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