池波正太郎、湯川秀樹…数々の文士、文化人たちが愛した洋食の味とは

昭和の時代に盛んに食べられた料理は、いまも日常にある普段の食。でも、その「普通」のなかに、日本人が大切にしてきた丹精な手作業や真心が宿っているのです。

『和樂』6月号では、文士、文化人が愛した昭和の味たちを大特集。今回はそのなかから、誰もが親しみ深い洋食のみを4つ、ピックアップしてご紹介します。

ビーフシチューにステーキ、カレーと、東西の絶品がそろいます。いますぐ店に足を向けたくなるはずですよ。

waraku_1506_054

◆吉村昭さんが愛した「レストラン香味屋(かみや)」のビーフシチュー

取材を得意とした小説家、吉村昭さんは食べ物に対しても貪欲でした。吉村さんが洋食を食べに通ったのが、大正14(1925)年創業の『レストラン香味屋(かみや)』。

「少年時代、胸をときめかせて白いテーブルクロスのかかった食卓の前に坐って、トンカツやハヤシライスを食べた洋食屋の名残りのある店が好きだ」(『味を追う旅』河出文庫)という言葉通りの、クラシカルな昭和の美をたたえたお店です。

ビーフシチュー(¥3,500<税込>)は、シチューというよりデミグラスソースで食べる肉の煮込み。白飯の甘い香りを引き立てるためのソースなので、気兼ねなくご飯に絡めてどうぞ。

【店舗情報】
「レストラン香味屋(かみや)」
住所:東京都台東区根岸3-18-18
電話:03-3873-2116
営業時間:11:30~20:30(L.O.)
休:無休

 

◆湯川秀樹先生が愛した「丸太町東洋亭(まるたまちとうようてい)」のビーフカレー

大正7(1918)年の創業以来、料理は立派な石炭ストーブでつくられます。効率とは無縁のストーブ料理は、食べる側にも余裕があってこそ成立するもの。ゆったりと流れる時間も、この店の味のうちです。

さて、このカレーの虜になったのが、店に近い京都大学理学部に在籍していた湯川秀樹先生。野菜と果物が入ったルーは、裏ごしされてなめらかに。

別鍋で煮込んだ牛肉とルーを合わせて、ビーフカレー(¥1,800<税込/昼のみ>)は完成します。口にすれば、とても贅沢につくられたことがわかるはず。

【店舗情報】
「丸太町東洋亭(まるたまちとうようてい)」
住所:京都府京都市上京区河原町通丸太町上ル東側桝屋町370
電話:075-231-7055
営業時間:11:30~13:45(閉店14:00)、18:00~20:30(閉店21:00)
休:月曜(祝日の場合は翌日休)