CanCamに新編集長就任!女性ファッション誌のリアル【前編】

WI あら、どうしてですか?

塩谷 『CanCam』は、小学館の数ある雑誌の中でも歴史のある雑誌で、来月11月21日に発売される2016年1月号で、34周年を迎えます。さまざまな世代の方に「知っている女性誌を挙げてください」と聞いたら、『an・an』『non-no』『CanCam』を挙げる人が多いくらい、日本全国の老若男女、皆が名前は聞いたことがある雑誌ですよね。野球で言えば読売巨人軍、テレビ番組で言えば紅白歌合戦、お菓子で言えばポッキーやかっぱえびせん。私にとって『CanCam』はそんな存在なので、『紅白歌合戦』のプロデューサーをやってください、と言われて、「えぇ!?」と思うような……そんな感じだと思っていただければ(笑)。

 

WI 塩谷さんは新入社員の頃から編集長のような存在感があった、というスタッフさんからのタレコミもありましたが……。

塩谷 いやいやいや。私はもっとどちらかというと、「AD的な存在」で、『CanCam』のことを支えたいし、関わりたいと思っていました。私が指揮をとる船長になるのではなく、誰よりも船長を支える人になりたい……と思っていたんですよね。なので、「私が船長ですか!?」と。そんな感じです(笑)。

 

WI では、編集長になってくれ、との依頼を受け、受けよう、と思ったのはどうしてですか?

塩谷 私の尊敬する方が、「大事なものごとというのは、『自分からやりたい』というものではない。でも『やってくれ』と言われたら絶対断るものではない、神聖なものだ」と仰っていたんですね。私にとっても『CanCam』の編集長は神聖なものなので、私に依頼されたのは本当に有難いこと、と思い、引き受けました。……でも、編集長って、雑誌のすべてをジャッジする仕事なので、本当に正直言えば、やらないほうがラクなんですよね(笑)

 

WI 本音ですね(笑)。

塩谷 あとは、お話をいただいたタイミングで、「私は人生をまっとうして死ぬときに、何を成し遂げた人だと思われるんだろう……」と考えたんです。周囲には結婚して子育てしながら頑張って働いている先輩や後輩、友達がいる。そんな人たちを見ていると、私、大変なことを何もしないで逃げてるな、って。だから、編集長の役割からも逃げたら、人生全部ラクしてるな、自分に何も見出しがつかず人生が終わってしまうな、と思ったんですよね。それよりは、塩谷さんって大変そうだったけど、『CanCam』の編集長をまっとうした人だよねって思われたほうがいいな、と。

 

WI 「自分に見出しがつかず人生が終わってしまう」という発想に、編集者魂を感じますね……! 実際、編集長の仕事はいかがですか?

塩谷 スタッフみんなで考えたタイトルや企画を、「こうして最終的に世に出そう」というジャッジをするのが編集長の仕事。それが世の中に出ていって、それに対して良かれ悪かれ反応がある……という面白さがありますね。編集長を経験してきた先輩たちが、皆さん、口をそろえて「編集長はやったほうがいいよ」とおっしゃっていたんですが……その意味を、最初に自分が編集長業務を担当した8月号をつくったときに実感しましたね。

 

WI 塩谷さんが8月号をつくりきったときの名言をどこからともなく聞いたのですが、『自分の頭で思い描いたものが、こんな形で誌面になるなんて、超嬉しい!』と……。そんなことを編集長が言うなんて、こんな楽しい雑誌はないんじゃないか、と思います。

塩谷 えっ!? そんなこと……言ってたかもしれない(笑)。台割を作って、一冊の流れを考えてひとつひとつのプランを決めて、そうやって自分の頭の中で何か月も前に考えていたことを、スタッフのみんなが形にしてくれる……というのは、感動的なことでしたね。