断るのが苦手…「つい頑張りすぎる」あなたがキャパオーバーしない方法【精神科医監修】

つい「頑張りすぎる癖」はありませんか? あれもこれもやりたいし、誰かに何かを任せてもらえると嬉しくって、「やりたいです!」と、つい自分の限界をちょっと超えて引き受けて頑張ってしまう。でも、ふと気づいたら心身ともに疲れ果ててしまっている…。「ちょうどよく、自分に負担をかけすぎずやれるライン」を探したいけれど、それがなかなか難しい。

この「あるある」なお悩みを解決する方法について、「おおざっぱに笑って健康に生きる」をモットーに活躍する「ラフドクター」、精神科医・産業医の井上智介先生にうかがいました。

お話をうかがったのは…

井上智介先生
精神科医&産業医
「おおざっぱに笑って健康に生きる」をモットーにした「ラフドクター」として活躍中。書籍多数。近著に『がんじがらめの心がラクになる 「呪いの言葉」の処方箋 』など。

「頑張りたい」の気持ちの裏側に隠された本音

Q.期待されると頑張りすぎてしまう癖があります。「やれます!」と仕事を受けすぎて、気づいたときには限界を突破して、ひとりで泣いたり、疲れ果てて土日に寝込んだりしてしまいます。これからも頑張りたいには頑張りたいのですが、もう少し「これ以上はヤバいな」という限界ラインの手前で気づくコツはありますか?

 

毎日本当にお疲れ様です。精神科医・産業医として日々多くの人のお話をうかがう中で、この「限界を突破してしまう方」は、本当にたくさんいらっしゃいます。
こういった方に、非常に重要なルールとして採用してみてほしいと僕がお伝えしているのは「仕事の打診をされたときに、はいと即答しないこと」です。

 

なぜか。
この方のように「期待に応えたい、頑張りたい」と、前向きな気持ちで引き受けている…と、自分では思っている方が多いんです。でも、本当の本当のところを掘ってみると、

「できないやつ、ダメなやつだと思われたくない」
「がっかりさせたくない」
「断った瞬間の気まずい空気がイヤだ」

と、実は後ろ向きな本音が隠れていることが、よくあります。
僕の印象としては、本当に心底前向きな気持ちで仕事を引き受けている人は、全体の2割くらいの感覚です。

きっとこれまでの経験を踏まえて「これ以上引き受けたら自分がパンクしてしまう」というラインは、ご自身でなんとなくわかっているのではないでしょうか? そこに行く前に、きちんと自分で調節する必要があります。

 

「受ける」「断る」以外に、あなたが知っておくべき対策

では、どうするべきか。覚えていてほしいのは「受ける」「断る」の二択ではないということです。

たとえば「来週からなら取り組めます」「3週間あればできます」「全部は難しいですが、この範囲ならできます」などと、自分なりにパンクしないラインを提案して、それでもOKなのか、頼んできた相手に判断を委ねるというのがおすすめです。そうすると、頼んできた人は「それなら別の人にお願いする」「2人で分担する」など、何かしら最適な落としどころを見つけるはずです。

先ほどの「後ろ向きな本音」が隠れている人ほど、「これお願いできる?」に対し、つい「やれます!」と即答してしまいがちです。対面で「3週間あればできます」と言うのがなかなか難しいなら、頼まれたその場では「一旦スケジュール確認して連絡します」で終わらせて、後でメールやチャットなどで伝えるとスムーズかもしれません。

 

「コンディションがいい自分」に合わせない

もうひとつ。

自分のコンディションがいいときほど要注意です。調子がいいときに、あれもこれもできますと引き受けたものの、途中で少しコンディションが悪くなって終わらない…という事態が起きがちです。
「できるかどうかの基準を、コンディションがいいときの自分に合わせない」ことは重要です。ある程度にはコンディションをいい状態で保てるように努力したとしても、人間ですから、それでもどうしても調子が悪くなるときはあります。

仮に「調子がよければ1時間で終わる、普通なら2時間、悪ければ3時間かかる」仕事があるとします。調子がいいときだと「1時間で終わるはずだ」と見積もって受けてしまった、けれど実際は2〜3時間かかってパンクする、ということは、誰しも経験があるはずです。せめて「2時間はかかる」という見積もりで受けましょう。

できれば、「重い締切がある仕事は1週間にひとつまで」など、自分の中でルールを設けて、常に余裕を持てるといいですね。感覚として3割くらい余力が残せていると、いざというときのトラブルにも対応しやすくなります。

 

構成/後藤香織