体の不調で仕事をお休みすることがあるように、メンタルの不調で休職する、ということは、そう珍しいことでもなくなってきています。けれど、その事情で休職をしている人たちは「早く復帰しないと」と焦ったり、「休んでていいのかな」と罪悪感に駆られたりと、気の持ちようが難しい、とさらに悩んでしまうケースも。
いったいこのような状況のとき、どう過ごすのが良いのでしょうか?「おおざっぱに笑って健康に生きる」をモットーに活躍する「ラフドクター」、精神科医・産業医の井上智介先生にうかがいました。
井上智介先生
精神科医&産業医
「おおざっぱに笑って健康に生きる」をモットーにした「ラフドクター」として活躍中。書籍多数。近著に『がんじがらめの心がラクになる「呪いの言葉」の処方箋』『この会社ムリと思いながら辞められないあなたへ』など。
メンタルの不調で休職中、何よりも大事なこと
Q.メンタルが不安定で会社をしばらく休むことになりました。職場で噂になるのも嫌なので、復帰を焦る気持ちがあるのですが体と心のバランスがとれません。休むことで別の悩みが増えてしまい、さらに悪くなりそうです。休養している間の心の保ち方、過ごし方が分かりません。
A.何よりも、心ゆくまでダラダラすることが重要です。
メンタル面で休職した場合に、最も大事なことをお伝えします。
お休みの最初に、「心ゆくまでダラダラすること」です。
これができるかどうかで、休職の期間が変わります。なぜならば「ダラダラする」ことこそが「心を休める」ことだからです。そのため、精神科医の先生たちは、「最初の段階で、どれだけダラダラできたか」をとても重視しています。
けれど、真面目な人ほどがんばりすぎてしまい、自分を追い込んで休職することが多いため、この「ダラダラする」が難しい、ハードルが高い…という声も聞きます。休職中だからこそ「周りの人が働いているのに、起きてないなんて良くないんじゃ…」と、朝7時にめざまし時計をかけてしまう、という話も耳にします。
でも、どうかこれを心に留めてください。休職が長引いてしまう人の特徴は「ダラダラしなかった人」なんです。
実際、「体を休める=寝る」とわかりやすいですが、「頭や心を休める」っていったいなんだろうと難しく思えますよね。先ほどもお伝えしたように「ダラダラと、欲求のままに過ごすこと」が、いちばん心を休めてくれます。心のことでお休みしているときは、「23時までに寝なきゃ、7時に起きなきゃ」など、自分のやりたいことではない「〜しなければ」を考える必要はまったくありません。むしろ、それが負荷になってしまっています。真面目な方は「調べたら、日中は散歩したほうがいいと書いてあったので、外を歩かなければと…」などとおっしゃることも多いですが、それはもう少し休んで、心と体が復活した段階でのお話です。今のあなたに「やるべきこと」をお伝えするならば、それは「休むこと」なのです。
まず何より先に、自分の心の声を、しっかりと聞いてあげて、どんどんダラダラしてください。昼寝したかったら昼寝していい。ポテチを真夜中に食べてもいいし、ずっとカーテンを閉め切って寝ていても、二度寝しても三度寝しても、一日中スマホを見ていても、何してもいい。
こういう話をすると「生活リズムがめちゃくちゃになって戻れなくなってしまうのでは」と心配されることもありますが、心をしっかりと休めて調子が良くなると、人間の体内時計が働き始めて、徐々に戻るはずです。そしてふと「そろそろ外に出たい」と思うタイミングが自然に来たら、外に出てみてください。思わないなら、「ネットで太陽の光を浴びたほうがいいと見たし、外に出なければ…」などと義務感で無理することなく、しっかりと休まるまで、家にこもって安心してダラダラしてもらって大丈夫ですよ。
「少し外に出たい」と思う段階まで来たら、買い物や散歩、家事の手伝いなど、少しずつ負荷がかかることを始めて、復帰へのステップを着実に踏んでいきましょう。