月面移住!?脱プラごみ…地球で100億人が生き続けていくヒント|トラウデン直美と考える【SDGs連載】

『日本科学未来館』で考える、地球で100億人が生き続けていくヒント

今、世界中で注目されている「SDGs」という言葉。これは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の頭文字を合わせたもので、世界193か国が貧困や環境問題の改善を2030年までに達成するために掲げた17の目標のこと。2020年からスタートした連載では、CanCamモデルのトラちゃんことトラウデン直美が「SDGs」について読者の皆さんと考える機会を作っています!

今回は、人や暮らし、街や宇宙など様々な角度から、環境危機が迫る地球で人類が生きのびるヒントを『日本科学未来館』で探ってみました。

↑気象衛星が撮影した画像データを取り込み、刻々と変化する地球の姿を映す『ジオ・コスモス』。直径6mの地球に換算すると、生物が暮らすことのできる場は表層のわずか5mm!

トラウデン直美/高校時代に環境問題に興味をもって以来、エシカルな生活を模索。『SDGs』にまつわる取材や発信に力を入れ、情報番組コメンテーターとしても活躍する。現在、朝の情報番組『めざまし8』(CX系)で金曜MC担当。

■今回体験したのは…日本科学未来館

 
最新テクノロジーから日々の素朴な疑問、地球環境、宇宙の探求、生命の不思議まで、様々なスケールで現在進行形の科学技術を体験できるサイエンスミュージアム。展示の他、多彩なトークセッション、ワークショップも開催。
 
東京都江東区青海2-3-6 火曜休み miraikan.jst.go.jp

科学の視点から考える「SDGs」

■脱・プラごみだらけの生活!

量り売りで必要な分だけ買う。プラスチック製の容器や古着を回収して再利用する。プラスチックに代わる生分解性の素材を選ぶ…など消費者や企業の行動変容が不可欠。日本のプラごみは、年間1人あたりなんと約32㎏!

科学コミュニケーターのセーラ・ホクスさんに取材

■微生物と共に、生物多様性を守る

↑微生物が分解するプロセスを観察。

公共空間、自宅、公園、そして人体まであらゆる場所に生きる微生物。よくも悪くも影響を与え合う存在を知り、人間も自然サイクルの一部だと認識することが必要に。

自然のサイクルを壊さず循環し続ける社会をつくる

理系科目はあまり得意じゃない…と思って生きてきた私ですが、今回は科学の目線から地球を取り巻く状況を学ぶべく、日本科学未来館へ! 各々専門分野をもつ科学コミュニケーターさんが企画する展示やワークショップを通じて学べるので、数字で把握していたつもりの知識も体験として刻まれる感覚があります。

例えば、「循環」は持続可能性を追求する上で欠かせない考え方ですが、具体的にどういうことなのか? ひとつは人間が回していくサイクルで、3R=リデュース・リユース・リサイクルのこと。ムダを減らして再利用し、使えなくなったものは再資源化する必要があります。その筆頭が、CO2排出や環境汚染の問題であり、私たちの生活に身近なプラごみ。包装容器プラごみだけでも、日本人ひとりが1年に出す実際の量を目にすると驚き…!

日本では分別や回収は進んでいるものの、まだその6割以上が燃やしてエネルギーにする「サーマルリサイクル」。CO2排出の観点では、プラ製品の原料として再資源化する「マテリアルリサイクル」や、化学反応で分解してから再利用する「ケミカルリサイクル」の普及が期待されます。そして、川や海へ流れ出ると分解されずに残ることもプラごみの負の側面。化繊にも含まれるマイクロプラスチックは健康被害を及ぼす化学物質を吸着しやすいとのことで、どんな影響があるかはまだ計り知れません。とにかくまずは使用量を減らす、自然に還る生分解性の素材への転換を進めていくことが大事だなと痛感しました。

もうひとつ大きな循環が、自然界のバイオサイクル。手のひらの常在菌をはじめ、実は身の回りには見えない多くの生き物がいるんですよね。昨今は、空気清浄や消毒が習慣化し、特に公共空間で微生物の多様性が低くなっているとか。自然に近い本来の生き方ではないという見方もあります。数では人類より微生物のほうが圧倒的にマジョリティ。生物多様性に支えられていることを忘れて、自滅してしまわないようにしたいな。

台風も感染症も水不足も…相関し合う環境要因を知ろう

気候変動や災害、人口増加の問題は地球規模でどんな影響があるのか。その変化やリスクのシミュレーションを見て感じたのは、人間が確かに地球に影響を与えている部分と、宇宙から見たときの人間の存在の小ささのコントラスト。

まず、ここ数十年での気温上昇の加速。南半球のほうが暑いイメージがありますが、ビジュアル化してみると人口が多い北半球のほうが深刻だと一目瞭然! また、身近な災害の成り立ちを表した模型からは、温暖化によってスーパー台風や感染症が発生する様子など、様々な危険の種が降り注いでいることを実感。同時に、普段は科学技術が生活を支えてくれているけれど、例えば地震の際に発電所が原発事故を引き起こしたり、感染症が航空機によって国境を越えて拡大したり…災害時に被害をより大きくする可能性があることも見えてきます。現実を俯瞰すると「地球のために環境問題を解決したい」と思うのも、おこがましい気がして。「自分たちの生存のために」、長く安全に生きていける構造を真剣に考えるべき時期に来ていると感じました。

CO2の濃度は冬に増加。季節による変化には、植物の活動が影響すると考えられる。

■トラちゃんは「いつまでもきれいな水が飲める地球」を選択!

50年後まで地球を存続させるゲーム形式の展示。未来の問題に向き合うには、現在の延長上に積み上げていくだけでなく、目指す状態から逆算して思考することも大切。

自然だけでなく、科学技術がもたらす災害やその被害にも備えなくてはならない時代。防災の意識もUP!

資源がない環境でも暮らせる技術を革新していく

2040年には、月面移住が実現するのでは? とも言われている宇宙開発の世界。月に水が存在する証拠が発見されたこともあり、将来の宇宙探査や移住の足がかりとなる研究が進んでいるとか。地球のサステナビリティには縁遠いのかな?という疑問もありましたが、未来の月面での生活を疑似体験できる特別展で「資源が少ない月で長期滞在するには、持続可能な開発でないと成立しない」というお話をうかがい、ハッとしました。例えば、基地の建物をつくる機械は地球から飛ばせても、建材は月にあるものを使わなくては維持できない。また、資源のない中で充分な作物を育てられる循環システムも必要。地球上では当たり前にできる生活のしくみを、月産月消で構築しなくてはいけないので、食料やエネルギー供給といった地球上の課題のヒントにもなるんだなと思いました。これまでも実際に宇宙食が災害食になっていますが、応用できることは多々ありそう!

↑月面の作物は、LEDの光で屋内生産。

印象的だったのが「科学の進歩には倫理を考慮することが大切。研究第一で推し進めないよう、多様な人との〝共創〟が大切」というスタッフさんの言葉。展示という場は、専門家だけではなく一般社会で生活する人たちの視点や反応を取り込んでいく役割もあるのだと知ることができました。

月の砂「レゴリス」に覆われた月面や、月から見る美しい地球の姿を再現。隕石回収や地球の約6分の1になる月の重力も体験できる。

↑月面で栽培される予定の野菜や穀物などを使ったレシピを紹介。

↑月面探査ランダーやローバーの実寸大模型。

■資源のない月でも暮らせる循環型システムを地球に応用

地球のように水や空気、重力、資源があるわけではない月という環境。衣食住のすべてで「もしこれがなかったらどうする?」と試行錯誤することから技術革新につながる。地球上の既存システムの改善にも貢献。

特別展『NEO 月でくらす展 ~宇宙開発は、月面移住の新時代へ!~』※9月3日(日)まで開催中。大人¥2,400(常設展も見学可)

「問題を提起しながらよりよい方向へ前進する科学の力を信じたい」

科学のクリエイティブな側面に触れ、ワクワクしっぱなし! 科学の進歩によってもたらされた問題もあるけれど、様々な事実を解明することでよりよい方向へ進んでいこうとするのもまた科学の力。人間の努力の足跡に、未来への希望を感じました。

目指せ「SDGs」! トラちゃんの一歩

■G7広島サミットをテレビ番組で現地取材!

世界中から首脳が集まる機会に、街の声などをうかがいました。戦争を解決するにも、被爆した広島で平和について考える場を設けられるのは大きな一歩。各国の利害を超えて、平和が実現すればいいなと強く思いました。

■今月の1冊は…『つなぐ100年企業5代目社長の葛藤と挑戦』

富山の鋳物メーカー・能作を継いだ千春さん。職人さんを大事にしながら革新を取り入れ、従業員数も売り上げも拡大。伝統産業の生き残り方だけでなく、女性の生き方のヒントにもなります。

著:能作千春/幻冬舎/¥1,760

今月のSDGsブランド「O0u」

2021年、新しい生活様式や価値観のもとで誕生したライフスタイルブランド。全商品にサステナブルファブリックを使用し、すべての工程を通じて「ながく続く」と「無駄を省く」を徹底。購入後の補修やリユース回収サービスにも力を入れている。

ジレ¥12,100・中に着たシャツ¥11,000・パンツ¥13,200・アームウォーマー¥3,850・靴¥22,000(アドアーリンク<O0u>)、イヤカフ/スタイリスト私物
 
2023年CanCam8月号「トラウデン直美と考える 私たちと「SDGs」」より 撮影/花村克彦 スタイリスト/町野泉美 ヘア&メイク/KIKKU(Chrysanthemum) モデル/トラウデン直美(本誌専属) 撮影協力/柴崎芙優 構成/佐藤久美子 ◆この特集で使用した商品はすべて、税込み価格です。