【夏バテ対策】冷たい飲み物&食べ物のとりすぎが要注意な理由

日本各地で猛暑日も観測されるようになり、本格的な夏がやってきました。一気に気温が上がってくることもあり、心配になってくるのが「夏バテ」。夏バテの対処法は、「わかっているようで、実はあんまりよくわかってないかも…」という方も多いのではないでしょうか?

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そこで、リンナイ株式会社が医学博士の久手堅司先生の監修のもと、全国の20代~60代の男女2350名を対象に行った「夏バテ」に関する調査結果を、せたがや内科・神経内科クリニック院長久手堅 司先生のコメントと共に紹介します!

 

監修者の紹介

せたがや内科・神経内科クリニック 院長 久手堅 司先生

医学博士。著書に「気象病ハンドブック」、監修本に「面白いほどわかる自律神経の新常識」「自律神経失調症外来」「頭痛外来」「肩こり・首こり外来」など複数の特殊外来を立ち上げ、中でも天候と不調の関係にフォーカスを当てた「気象病・天気病外来」「寒暖差疲労外来」は、テレビ・新聞・雑誌・ウェブなど各種メディアで話題を呼んでいる。

 

4割は夏前からバテている?!早期化の原因は生活習慣にあった

夏バテ経験の有無を聞いたところ、回答者の8割が「夏バテを感じたことがある」と答える結果となりました。また、4割の人が夏本番前の7月前半までに夏バテを感じているようです。急な気温の上昇や雨による湿気など気候が不安定な時期だからこそ、早め早めに体調面には気を配っておきましょう。

久手堅先生コメント

夏バテとは、夏季の高温と多湿に対応できずに起こる不調の事です。夏の気候で身体に負荷がかかり、夏を過ぎる頃には疲れ果ててしまうのです。

7月前半までに4割が夏バテを感じているのは、梅雨の高温・多湿の影響によるものでしょう。夏バテの早期化は、近年の温暖化の進行に加え、生活習慣に起因する自律神経の乱れも原因と考えられます。特に、睡眠不足や運動不足、スマホやPC使用時間の増加、精神的ストレス、カフェインやアルコールの過剰摂取、胃腸の状態の悪さなどが自律神経を乱す要因となります。

 

夏バテの9割が「だるさ・全身倦怠感」

さらに、夏バテ経験者に主な症状を聞いたところ、男女ともに「だるさ・全身倦怠感(男性90%、女性91%)」が最も多い結果となりました。また、「頭痛(女性:28%)」や「めまい(女性:17%)」などのように、男性に比べて女性は複数の症状に悩まされていることも分かります。つい、「このくらいで……」と休みづらさを感じる方もいるかと思いますが、そこは無理をしすぎずに一休みして体調を整えましょう!

久手堅先生コメント

だるさ・全身倦怠感は、体温調整で自律神経に負担のかかる夏季に強く出やすい傾向があります。起床時から感じる方が多いのも特徴です。女性は頭痛持ちが多いのですが、今回の調査でも男女の差が見られました。生理によってホルモンバランスが崩れやすいことから不調がより出やすいのです。

めまいや吐き気なども含め、これらの症状は自律神経の乱れが原因と考えられます。夏バテには多くの症状があり、人それぞれ異なります。単に暑いから調子が悪い、と考えるのではなく、まずは患者自身がしっかりと症状に向き合い、正しい対処法を理解しましょう。周りから理解されづらいため苦しむ患者さんもいます。周りもサポートできるような世の中にしたいですね。

 

夏バテで「体を冷やす」は要注意。むしろ重要なのは「温とオフ」

夏バテだと感じたら、つい暑さを逃がすために体を冷やそうとしてしまいませんか? 実際、夏バテ経験者からも「冷たい食べ物や飲み物を摂った(63%)」、「エアコンや扇風機を利用して室温を下げた(53%)」、「冷たいタオルや氷で身体を冷やした(34%)」など、いずれも身体を冷やす方法が多く挙がりました。ただ冷やすだけではなく、むしろ温めたり、ストレッチをしてリラックスできる時間をつくることも大事なようです……詳しくは久手堅先生のコメントへ!

久手堅先生コメント

暑さ対策に身体を冷やすことは必要ですが、現代の夏バテの対処法としては注意が必要です。その理由は、外出先の建物や自宅などでエアコンの冷気にさらされ、屋外に出るたびに急激な温度変化を繰り返す、屋内外の温度差による寒暖差疲労を起こしていることが考えられます。不調を感じたら、マッサージや温かい食事、入浴などの方法で身体を温めましょう。

また、心身の回復には休息が不可欠です。「仕事を休んだ」が5%など、自律神経を整えるために必要なストレス回避やリラックスなど、身体を休ませている方はわずかでした。症状を長引かせないためにも、身体を温める「温」と、休ませる「オフ」でこの夏を乗り切りましょう。

 

エアコンが夏バテの原因にも! 意外な落とし穴

さて、先ほどは夏バテの対処法について紹介しましたが、夏バテにならないに越したことはありません。そこで、暑さ対策として普段どのような事をしている人が多いのか調査しました。すると、最も多い方法で「エアコンの冷房を使う(76%)」、エアコンに続く対策として「扇風機を使う(61%)」や「冷たい食べ物や飲み物を摂る(51%)」が挙げられました。やはり、過ごす環境や身体をあらかじめ冷やすことを意識している人が多いようですね。

久手堅先生コメント

エアコンは湿度も下げてくれることから、暑さ対策としては最も効果的です。しかしその使い方を間違えると、不調の原因を作ることになります。正しい使い方を理解して、快適な夏を過ごしましょう。

暑い時期なので、冷たい飲み物や食べ物を口にすることが多くなりますよね。しかし、冷たいものをとりすぎると内臓が冷えてしまいます。内臓の冷えは、自律神経の乱れへとつながっていく場合が多いです。温かい食べ物や入浴で身体を温め、冷たい飲み物や食べ物、カフェインやアルコールは摂り過ぎないようにしましょう。内臓が冷えると食欲の低下、胃痛、吐き気、腹部膨満感、吐き気、下痢や便秘気味などが出やすくなります。

 

6割が真夏日までおあずけ、ただし我慢は厳禁!

エアコンの利用者に使い始める外気温を聞いたところ、夏日(25〜29℃)は4割、真夏日(30〜34℃)は6割、猛暑日(35℃以上)は1割という結果が出ました。また、それぞれ地域別で見ると、夏日は北海道(68%)と沖縄(57%)、真夏日は栃木(75%)と愛知(70%)、猛暑日は岐阜(29%)と群馬(20%)が最も多い結果もでています。

ちなみに、冷房の設定温度は、28℃(24%)という回答が最も多く、続いて27℃(19%)を設定する人が多いことがわかりました。23℃以下を設定する地域に寒冷地が多いなか、長崎(22%)が上位にランクインしています。

久手堅先生コメント

最高気温が30℃を超える真夏日や、湿度が70%を超える日には、エアコンを使用した方が良いでしょう。ただし、暑さの感じ方は人それぞれのため、私の患者さんには、特定の温度ではなく暑さで不調を感じたら使用しましょうと伝えています。大切なのは無理をして我慢しないことです。調査の結果、真夏日からエアコンを使う割合が高いのは、北海道と沖縄でした。普段から涼しい北海道や、最高気温が他の地域に比べて高くない沖縄は、暑さが苦手なのかもしれません。また、猛暑日から使う割合が高いのは、岐阜と群馬でした。どちらも最高気温が高い内陸部です。群馬は夏バテ経験も1位ですが、岐阜の方は暑さに耐性があるのでしょうか。

エアコンの設定温度は25~28℃が目安です。室温を下げすぎると、表面体温だけではなく深部体温も低くなり、冷えによる不調を引き起こします。また、外気温との差が7℃以上になると、寒暖差で不調を感じる寒暖差疲労を起こしやすくなります。冷やしすぎに注意してください。

 

最長は東京、最短は北海道。今夏の節電にはどう動く?

次に、エアコンの中で過ごす時間を聞きました。すると、もっとも多い回答が全国では8~10時間(15%)であったのに対して、地域別では、20時間以上が東京(28%)、2時間未満が北海道(22%)という結果が出ました。

また、電気代高騰と猛暑が予想される今夏、自宅のエアコンの使用頻度の見込みを調査したところ、「変わらない(67%)」が最も多い結果となりました。地方別の「減らす」の回答は沖縄(32%)、また「無理のない範囲での節電」が呼びかけられた東京エリアでは神奈川・山梨(24%)が全体より高い水準になっています。節電はしたいけど、体調も崩したくない……なかなか調節が難しいところですね。

久手堅先生コメント

私たちは気温の変化に身体を徐々に慣らすことで夏の暑さに適応しています。長時間のエアコンが習慣になると、夏の暑さに耐えられなくなり夏バテを引き起こしやすくなります。日中のエアコンが避けられない場合は、上着を着て冷えすぎを防ぐようにしましょう。

反対に、電気代の高騰から、沖縄や神奈川、山梨の回答のようにエアコン控えが想定されますが、寝苦しい熱帯夜はエアコンを使用してください。熱中症の予防になるほか、睡眠の質を上げることで自律神経を整え、不調の原因を減らすことができます。節電の方法として、扇風機やサーキュレーターを併用して室内の空気を循環させることで、エアコンの設定温度を下げなくても涼しさを感じることができます。工夫しながらこの夏を乗り切りたいですね。

 

定番の日傘、扇子・うちわ……メンズ日傘も大注目!電気不要の暑さ対策

今回の調査で、エアコンに頼り切っていることが明らかになりましたが、外出や移動時などエアコンがない環境での暑さ対策も必須。そこで、暑さ対策として携帯しているグッズについても調査しました。その結果、女性は「日傘(44%)」が最も多く、地域別では特に東京(68%)、神奈川・三重・宮崎・沖縄(64%)が目立っています。男性は「扇子・うちわ(19%)」が最も多いなか、地域別では「日傘」も埼玉(20%)、神奈川・高知(16%)で多く見られました。冷感シートやネックバンドなど暑さ対策のグッズも多く販売されているので、自分の生活にあったものを探してみるとより過ごしやすくなりそうです。

久手堅先生コメント

ここに出てきたグッズは、暑さ対策として全て有効です。最近見かけるようになってきた首掛け扇風機・ハンディファンや、冷却ネックバンドは、首・体幹を冷やすという点ではより効果的なグッズでもあります。他のグッズと組み合わせて使用しても効果が上がりやすくなります。

暑さ対策グッズを上手に取り入れ、エアコン以外も活用する暮らし方を考えてみることも、夏バテ予防と節電につながります。

 

暑いからこそ入浴を!「暑熱順化」の獲得で夏バテ予防

生活習慣を確認するため、運動と入浴習慣を調査したところ、運動については5割が「全くしない」、入浴は3割が「シャワーで済ませる」ことが分かりました。暑い中でわざわざ動いて汗をかきたくない、暑い思いしてお湯につかりたくない……その気持ちわかります。

入浴習慣の健康効果が明らかに(2023 年 6 月 23 日発表)

九州大学とリンナイの共同研究によれば、週 4 日以上湯船に浸かる入浴習慣があれば、発汗量と血流量が上昇しやすいことが認められました。入浴により「暑熱順化」の獲得を促し、熱中症や夏バテしにくい身体をつくることが期待できます。

 

久手堅先生コメント

人間は体温を36~37℃程度に保つことで健康を維持しています。体内が高温になると細胞が破壊されてしまうことから、体温を下げるために末梢血管を拡げ、それでも下がらなければ発汗し、身体の表面から熱を逃がします。人間の身体はよくできたもので、暑さにさらされると徐々に血流量や発汗量を増加させ、熱を逃がす能力を上げていきます。身体が暑さに慣れるこの変化を「暑熱順化」と呼びます。

夏バテしやすい方は「暑熱順化」が獲得できておらず、体温調整が苦手な場合が多いです。発汗量や血流量を増加させるためには、運動が効果的です。ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動で負荷をかけると、四肢の末梢血管の血流量が増加し、そして発汗へとつながっていきます。運動習慣がない方でも、入浴時に湯船に浸かる方法があります。38~40℃位のお湯に10~15分間、首までしっかり浸かると軽い運動と同等の効果が期待できます。

 

「温とオフ」で自律神経を整える。夏バテの正しい対処法と予防法

今回の調査の結果、夏バテしやすい生活習慣の方が多くいることが分かりました。そこで気象病専門家の久手堅先生にまとめて頂いた「正しい夏バテの対処法と予防法」を紹介します!

夏バテの対処法 「温とオフ」で自律神経を整える

■冷たい食べ物を控え身体を温める(温)

夏バテの対処法として挙がった回答には、身体を冷やす行為が目立ちました。私たちは空調の効いた屋内と外の温度差によって、寒暖差疲労を起こしやすくなっています。現代の夏バテの症状を改善するには、急激な体温調整によって負荷のかかった自律神経の乱れを整えることが肝心です。温かい食べ物や入浴で身体を温め、冷たい飲み物や食べ物、カフェインやアルコールは摂り過ぎないようにしましょう。食欲の低下、胃痛、吐き気、腹部膨満感、吐き気、下痢や便秘気味などがあると、胃腸の状態が安定しません。発酵食品も腸内環境を良い状態にします。ヨーグルトやみそなどの発酵食品を、生活中で取り入れましょう。夏バテの症状で多い、だるさ・全身倦怠感には、内蔵・骨盤内のマッサージをおすすめします。また起床時は、体が脱水傾向にあるので、コップ1杯の水か白湯を飲むようにしましょう。胃腸の動きも整います。

 

ストレスを回避してリラックス 心も身体も休息(オフ)

心身の回復に休息は不可欠ですが、日本人は休み下手です。今回の調査でも、夏バテのために、ストレス回避やリラックス、仕事などを休むという回答は限られていました。夏の暑さだけに着目してしまいがちですが、自律神経の乱れが夏バテの症状を悪化させています。睡眠不足や、スマホ・PC使用時間の増加、精神的なストレスなど、自律神経を乱す要因は様々です。しっかりと休んで、これらの要因を排除しましょう。

 

■夏バテの予防法 「暑熱順化」の獲得

運動習慣や入浴で「暑熱順化」を獲得

2021年に実施した寒暖差疲労の調査でも、今回と同じように半数は運動習慣がありませんでした。エアコンの中で過ごすことが多い現代は、夏の暑さに身体が慣れる「暑熱順化」が獲得しづらい環境にあります。身体に備わっている熱を逃す能力を機能させるためにも、運動によって発汗量や血流量を増加させましょう。ウォーキングであれば30分以上、ジョギングであれば15~20分程度を目安に、汗が出る程度の負荷が望ましいです。運動ができない場合は、入浴時に湯船に浸かることで「暑熱順化」を獲得し、夏バテや熱中症予防の効果が期待できます。入浴は、シャワーだけで済ませるのではなく、38~40℃の浴槽に首までしっかりと使って、10~15分程度。深部体温もあがり、血流も改善し、発汗効果あり、リラックス効果もあります。日頃から夏バテになりやすい方は、特におすすめです。

 

エアコンの上手な使い方

エアコンは快適な反面、「暑熱順化」を妨げてしまいます。エアコン以外の暑さ対策グッズも取り入れてみましょう。ただし、暑さで不調を感じたら我慢せずにエアコンを使用してください。特に夜間は、質の良い睡眠で身体を休ませるためにも、最低気温が25℃以上の熱帯夜にはエアコンを使うようにしましょう。エアコンの風は、身体から熱を奪いやすいので、直接当たらないようにするのがポイントです。設定温度を下げるのではなく、扇風機やサーキュレーターを併用して室内の空気を循環させれば、冷えすぎを防ぎ、節電効果も期待できます。どうしても避けられない職場や外出先のエアコンには、冷えに対応できるよう薄い上着を一枚持つようにすると良いですね。

 

 

まとめ:我慢は厳禁!だけど、対策・対処には気をつけて

  • 夏バテとは、高温多湿に対応できず起こる不調のこと
  • 睡眠不足、運動不足、スマホやPC使用時間の増加、ストレス、カフェインやアルコールのとりすぎにも注意
  • 不調を感じたら、マッサージやあたたかい食事、入浴で体を温める&体を休ませるのが重要
  • 冷たい食べ物&飲み物のとりすぎは内臓を冷やしてしまい、不調の原因に
  • エアコンの設定温度は25~28℃が目安。扇風機やサーキュレーターも併用して

 

 

「夏バテ」だと感じると、真っ先に冷やすことを考えてしまいがちですが、不調の理由などと照らし合わせながら対処することが大事だとわかりました。エアコンの部屋での過ごす時間など、うまく調節して使えば節電にも繋がりそう!ぜひ今回の記事を参考に、夏を乗り切ってください!(岡美咲)

 

情報提供元/リンナイ株式会社