除湿と冷房って結局どっちがいいの?「正しいエアコンの使い方」を知る8つのQ&A

「正しいエアコンの使い方」を知るQ&A

長い長い梅雨が明けたと思ったら、日本全国一気に暑いシーズンがやってきました!
今年は涼しい期間が長かったぶん、暑さが体に応える…。さらに例年よりも家時間も増えているので、家にいるときの正しいエアコンの使い方を改めて知っておきたいですよね。

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そこで今回は正しいエアコンの使い方について、温熱にまつわる建築環境工学を専門とする、いわばエアコンや空調にまつわるプロ・摂南大学の宮本征一教授にうかがいました。

Q.夏の暑い日、少しでも快適に過ごすコツはなんですか?

まず、人が暑さ寒さを感じるには、以下の6つの「温熱環境要素」と呼ばれる要素が関わってきます。

  1. 温度…当然ですが、室温が下がれば涼しく感じます。
  2. 湿度…湿度が下がると涼しく感じます。
  3. 気流(風速)…扇風機やうちわであおぐと涼しく感じます。
  4. 熱放射…これはつまり「太陽の日ざし」のことです。たとえば冬に、気温がそんなに高くない日でも、南側の窓近くで太陽の光を浴びるとポカポカあたたかいですよね。太陽の光があると当然暑く感じます。
  5. 着衣量…厚着をすれば暑く、薄着であれば涼しく感じます。
  6. 代謝量…運動をすると暑く感じます。冬の寒い日でもマラソンをすると汗をかくのはこの「代謝量」が上がっているからです。

1〜4は住宅・家電などで制御できることで、5〜6は「人体側要素」と呼ばれるものです。
この6つをうまく調整することで、心地よく過ごすことができます。

 

たとえば「ただ気温を下げる」だけでなく「風速」を利用する

暑い日には、もちろんエアコンで「温度」を調整することが最もわかりやすく効いてきますが、気温だけを必要以上に下げてしまうと今度は手足の冷えにつながることもあります。

そこで扇風機などを併用し、「風」を取り入れることで、部屋の温度を下げすぎずに涼しく過ごすことができます。
「涼しくしたいけど、ちょっとでも肌寒いのはいやだ」という方は、エアコンの設定温度を30度くらいにして扇風機で空気を動かすと、爽やかさや涼しさはありながら、変に冷えることはなくなります。

他にも肌寒さが苦手な方は「温度をいつもより少々高めに設定し、風量を強め」にすると快適になることもあります。

 

人によって「暑い・寒い」が違うのは「代謝量」が違うから

家族何人かで住んでいる場合、よくあるパターンとして「同じ温度の部屋の中にいるのに、お父さんは暑い、娘さんは寒い」ということがあります。

これは「代謝量」が関係していて、筋肉量が多いと体の中で生まれる熱の量が違います。特に女性は健康を考えない、体重を落とすためだけの変なダイエットをしてしまうと、同時に筋肉量も落としてしまうことがあります。そうすると暑さ寒さに弱くなってしまいます。
これは一朝一夕には変えられないので「着衣量」で調整するしかありません。


Q.エアコンはどのくらいの温度にして、どう設定するといいですか?

女性の場合は「28〜30度」くらいがおすすめですが、やはり人によって快適に感じる温度は異なるので、それで暑いと感じる場合はそこから少しずつ設定温度を下げて、自分が実際何度くらいが快適かをきちんと知ってみてください。

そもそも「設定温度」って何?

メーカーによっても多少違いがありますが、たとえばエアコンを「28度」に設定するときは「28度の空気」を出すのではなく「部屋の温度を28度にする」ための冷気が出ます。もともとの室温が高い場合は20度を切るような冷気が出ることもるため、エアコンの風に直接当たるとちょっと不快に感じることがあります。

最近の賢いエアコンは、その冷気が直接人に当たらないように上に向かって冷気を出します。
「冷たい空気は下へ落ちる、あたたかい空気は上にいく」性質があるので、夏の冷房は風向きを設定できる場合はできるだけ上に向けたほうが、部屋全体が均等に冷えてくれます。

 

サーキュレーターってどうなの?

この「冷たい空気は下に落ちる、あたたかい空気は上にいく」性質を利用して、冬場はサーキュレーターを使って天井付近にたまったあたたかい空気を下におろす、ということは有効ですが、そもそも夏場は冷たい空気は下にあるので、あまりサーキュレーターは使わなくても良いと思います。
ただ、たとえば「体はこのくらいの温度設定が快適だけど、足元だけ冷える」という方なら、足元にだけ冷たい空気がたまらないように、サーキュレーターを使ってみてもいいですね。


Q.「冷房」と「除湿」どう使い分けるといいですか?

実際、冷房モードでも自然と「除湿」されます。

日本の夏はだいたい湿度が60〜70%程度ありますが、エアコンを使うと「冷房」モードでも湿度は60%以下になります。

温度を下げなくても良さそうという点から女性は除湿を好む傾向にあります。ただ、10年前くらいの通常グレードのエアコンですと、除湿モードのほうがエネルギーをたくさん使い、実は冷房モードより電気代がかかる傾向にあることも覚えておいてください。ただ、どんどん技術は進んでおり、最新の上位グレードのエアコンですと冷房と除湿の消費電力はさほど変わらないところまで来ています。

どのエアコンを使っているかと電気代をどのくらい気にしているかにもよりますが、意外と「温度高めで冷房モード」が良いのではないかと思います。


Q.エアコンを「こまめにオンオフ」と「つけっぱなし」結局どっちがいいですか?

これは「つけっぱなし」です。
エアコンがエネルギーを食うのは「スタート時」です。電気代の観点からも「設定温度を低くして、涼しくなったら止めるを繰り返す」よりも「ずっと設定温度高めで運転」していたほうがいいです。

 


Q.寝るときのエアコンや扇風機、どう使うのがベストですか?

贅沢を言うなら「エアコンをしっかりかけて、あたたかいふとんをかぶる」のが快適に眠れます。
「何時間後にタイマーをオフにし、起床時間のどれくらい前に冷房が入っているといいのか」などのタイマー分野については現在まだ研究途中です。

扇風機を使う場合は、体に直接当てると体が放熱しすぎてしまい、冷えて途中で起きてしまったり朝起きたときにだるさを感じることがあるので、体に直接は当てず、部屋の空気を動かすようなイメージで使ってみてください。
また、32度を超えるような夜は、寝苦しくて途中で起きてしまう可能性が高いので、設定温度を28〜30度程度にして、エアコンを使って眠ったほうがいいです。

 

エアコンを使うなら、できれば「長袖長ズボン」のパジャマを併用

女性の場合は、薄いものでいいので、できれば長袖長ズボンのパジャマのほうが心地よく眠れます。
なぜかというとガーゼのような薄い布だとしてもそれが1枚あることで、人の肌と、布の間の空気層を固定することができて、服の中の空気があまり移動しなくなります。そうすると、寝ている間のエアコン・扇風機に対して、急激に熱が奪われることがありません。
女性は男性と比べると筋肉量が低く、体の中で生む熱量が少ないため、冷えに関して防御力が低いので、できるだけ長袖長ズボンのほうがおすすめです。
「タオルケットで全身を覆う」でも良いですが、寝ているうちにずれることもあるので、パジャマで調整するのがベストです。


Q.今年は「換気」も重要なテーマですが…エアコンを使う日の換気はどうするのがおすすめですか?

新型コロナウイルスの関係で換気に気を配る人が増えていますが、そもそもウイルスがおさまったとしても換気はしたほうがいいです。

冷房を使うような暑さの日に、部屋の空気を入れ替えるのに、いちばんいいのはシンプルに「窓を全開」です。可能であれば対角線で開けるのがベストです。窓がひとつしかないワンルームにお住まいの方なら「窓を開ける+キッチンなどの換気扇を使う」でもいいですし、扇風機があるなら窓を開けたときに同時に扇風機を外に向けてかけると、部屋の空気を外に押し出してくれて、効果的に換気ができます。
いったん風が通れば5分程度の換気で十分ですし、風を感じる日なら1分でも換気ができます。
逆におすすめしないのが「ちょっと窓を開けて、長時間換気」です。これは電気代の観点からももったいないです。「窓を全開にして、短時間」がポイントです。

 

換気したら、せっかく涼しかった部屋が暑くなって無意味にならないの?

短時間で換気して窓を閉めると部屋の温度が一気に上がって暑いのでは、と思うかもしれませんが、実は壁や天井などの「壁面温度」は冷房をかけた状態で冷たくなっています。たとえば26度に設定していたら壁面温度も26度くらいになっているので、換気をして外から30度以上の空気が来ても、壁が熱を吸ってくれます。
部屋の壁が冷えていれば、1分空気を入れ替えて一時的に部屋の温度が30度に上がったとしても、5分くらい経てば戻りますよ。


Q.外は暑い日、室内に入ると寒い! こういう日はどう対処したらいいですか?

これは最初の6要素でいう「着衣量」で調整しましょう。
暑い寒いを何度も繰り返すと体調を崩してしまうので、外出するときや会社に羽織ものを持っていったり、足元にひざ掛けを置いたり…そういったことで調整してみましょう。繰り返しになりますが女性は筋肉量が少なく、代謝量が少ないので暑さ寒さに弱い方が多いことは念頭に置いておきましょう。ちなみに、筋トレをして体を鍛えると暑さ寒さへの耐性が変わるので、冷えに悩んでいる方は地道にトレーニングするといいですし、筋肉が落ちるような過度なダイエットはしないでください。

また、暑さ寒さを感じるのに重要なのは「首元」です。首まわりが詰まっている服の日は暑く感じますし、開いていると涼しく感じます。男性でいうとネクタイをするしないでも結構変わります。

 

ちなみに、デパートなどで入った瞬間寒いのは「わざと」が多い

デパートは入り口近辺の温度設定をわざと下げて、入った瞬間に「涼しい」という気持ちを抱かせたり、体の熱を逃すようにできています。でも、それがずっとだと寒いので、その奥にある買い物ゾーンは入り口より温度を上げています。


どれも今日からすぐ使えるトピックスばかり。ぜひ毎日の生活に取り入れてみてくださいね!
次回は「温熱環境のプロが語る、夏を涼しく過ごすコツ」をさらにご紹介。お楽しみに。

お話をうかがったのは…
摂南大学 理工学部 宮本征一教授
建築環境工学・温熱環境を専門に研究している。
構成/後藤香織