withコロナの時代、これまでより「健康」に目が向くようになり、最近何かと見かける機会が多い「腸活」に力を入れているという方も多いのではないでしょうか。健康だけでなく、お肌やメンタルにも嬉しい影響があるという「腸活」。今意識している方も、まだ特にしていないけれど気になっている…という方も、改めて基本を知っておきませんか?
今回は、美容皮膚科 アオハルクリニックにて院長をつとめる小柳衣吏子先生に、今改めて知っておきたい腸と美肌の関係性や、毎日の生活にすぐ取り入れられる「腸活」のコツをうかがいました。
■腸と肌の関係って?
小柳先生によると、肌と腸は密接に関係しており、肌にとって腸は重要なのだそう。
「肌は目に見える最大の臓器で、腸は最大の内臓。つまり肌は腸管と一体になってつながっているのです。腸は人間やその他の動物にとって基本中の基本の大切な臓器です。食べたものが腸で吸収され、全身へと巡り、もちろん肌にも行き届きます。
腸と肌は『同じ種類の常在菌が住んでいる』『同じ細胞が存在する』など、近年数々の調査によって関係が裏付けられてきています。例えば腸を改善することで、肌の水分量が上がった、ニキビが改善したなど、さまざまなことが実証されています」
■腸内細菌の働きと重要性
小柳先生は、腸内細菌の働きと重要性を強調します。
「腸に食べ物が入ったら、腸内細菌が待ち受けています。腸内細菌はおよそ100兆個いると考えられており、私たちが消化しきれなかったものを腸内細菌が食べて、その排泄物を腸が吸収しているのです。ですから、腸内細菌はすごく大事です。
腸内細菌は善玉菌、悪玉菌、日和見菌、病原菌の4つに分類できます。悪玉菌が多いと便秘になってしまいますし、病原菌が多いと病気になってしまいます。ですから、腸内細菌はバランスが大事。善玉菌、悪玉菌、日和見菌がバランスよく腸内にいてくれるように、私たちは、思いやらないといけないのです」
■「腸活」を意識することそのものが大事!
この「腸内細菌のバランス」を整えるために行うのが「腸活」。
「腸活の結果がどうであるか、ということよりも、まずは腸活をしているということ自体が非常に大事です。先ほども述べた通り、腸は基本中の基本の内臓であり、肌はもちろん、全身や精神の健康にも影響があるからです。腸を大事にしていることそのものがよいことなのです。やり方のポイントは、腸内細菌を意識すること。例えば、アスリートの方は、筋肉を意識しながらトレーニングをするのが大事といわれますが、腸に関しても腸内細菌がどうなっているかを意識しながら生活することが大事です」
■おすすめの腸活方法3つ
小柳先生がおすすめする具体的な腸活方法は、「1.よく眠る」「2.食事時間を規則正しくする」「3.腸が喜ぶものを食べる」の3つだといいます。
1.よく眠る
「身体を休ませるということが、腸にもいい影響を与えます。毎日7時間半~8時間は眠りましょう。5時間以下などの短時間睡眠で疲れが取れるショートスリーパーの遺伝子を持っている人は、日本人ではほんの数%だといわれています。
そして、決まった時間に寝て、決まった時間に起きることが大切です。我々、動物にはサーカディアンリズムというものがあります。本来は太陽が沈んで寝て、朝日が昇ったら起きるというのが昼行性動物の本来の生き方。また体のさまざまな機能をコントロールする『成長ホルモン』の分泌は深夜だといわれていますので、できるだけ早寝早起きを心がけましょう」
2.食事時間を規則正しくする
「毎日、食べる時間帯を決めて食べることが大事です。だらだら食いはいけないということ。メリハリを付けて食べましょう。腸を休ませることも大事なので、食べない時間帯も大事です。寝る2時間前は食事をとらないことは、ぜひ守りたいもの。さらに、朝昼夕の3食の食事時間以外に食べる間食も、ないほうがいいですね」
3.腸が喜ぶものを食べる
「腸が喜ぶものを食べましょう。いわゆる発酵食品や食物繊維、海藻類をたくさんとることをおすすめします。私は毎日ヨーグルトを食べたり、主食は大麦ごはんにし、副菜に納豆や味噌汁など、積極的に腸にいいものをとっています」
●腸内環境をよくする食品
「腸内環境をよくするためには、プレバイオティクス、プロバイオティクス、シンバイオティクスを意識して摂ってください。例えばビフィズス菌、乳酸菌、納豆菌、オリゴ糖、水溶性食物繊維、不溶性食物繊維などです」
プレバイオティクス…腸内細菌の餌となるもの。(例.オリゴ糖、食物繊維など)
プロバイオティクス…腸内フローラのバランスを改善する生きた微生物。(例.生きた菌が含まれるヨーグルト、納豆など)
シンバイオティクス…プロバイオティクスとプレバイオティクスを組み合わせたもの。(例.ヨーグルト×オリゴ糖など)
●肌によい栄養素
「肌にとってはビタミンC、ナイアシン、亜鉛、セレンのほか、タンパク質、その他のビタミン、ミネラル、コラーゲンなどが大事です。タンパク質は肉、魚、卵、豆など、あらゆるものから偏ることなく摂取しましょう。コラーゲンについては、近年は肌にもよい影響があることが実証されていますので、積極的に摂るといいですね。またコラーゲンは肌だけではなく、髪の毛や血管にも含まれているので大事です」
●コンビニで買える腸によい食品
納豆、ヨーグルト、バナナ、わかめサラダ、大麦おにぎりなど。
●居酒屋のおすすめメニュー
納豆を使ったメニュー、昆布のつくだに、味噌汁、締めのおむすびを雑穀米にするなど。
■「笑う」ことも腸活の一つ!
実はもう一つ、小柳先生自身も実践している腸活法があるのだそう。それは、なんと「笑うこと」。
「笑うと、幸せホルモンのセロトニンが出るといわれます。セロトニンは、脳からの指令により、腸内の細胞で分泌され、蠕動運動を促します。また腸から脳へと司令が伝わり、明るい気持ちになることができます。
笑うことは腸活にもなりますし、脳活にもなりますし、顔のたるみ予防にもなります。笑う気分ではないとき、私は型から入ります。まずは口角を上げるんです。すると脳が笑っていると認識して腸に伝わり、腸もいい動きをしてくれますよ」
「一夜にして腸内環境が変わることはありませんので、とにかく続けてください。腸活は継続が大事です」と語る小柳先生。肌の調子が気になる場合はもちろん、心身ともに健康全般を改善したい!という場合にも、腸活を意識することは重要。ぜひ日々の生活の中により入れてみてくださいね。(西村朝子)
小柳 衣吏子(こやなぎ えりこ)先生
医療法人財団 青輝会 アオハルクリニック院長
順天堂大学医学部1998年卒業。順天堂大学皮膚科学教室非常勤助教、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本美容皮膚科学会会員、日本抗加齢医学会専門医。著書『美肌の王道( 日経BP 社)』。六本木の美容皮膚科「アオハルクリニック」院長。美容皮膚科の草分けのひとり。治療コンセプトに『ウェルエイジング(Well aging)』を掲げ、単に加齢に抗うのではなく、よりよく歳を重ねる「王道」を患者とともに歩み続けることを信念としている。「見た目の美しさにはカラダの中の健康が欠かせない」と訴え、男女問わず真の美しさを求める方々から多くの共感を集めている。