え、マスクをしているだけでも角膜に影響が!?目薬の正しい使い方・選び方、教えます!

コロナ禍でのリモートワークやおうち時間の増加に伴い、過去類をみない目を酷使する生活が1年以上続いています。1日中パソコンやスマホ、テレビの画面を見続けていたり、マスクを長時間着用しているだけでも、角膜の傷リスクが高まっているって…あなたは知っていましたか?

ニューノーマル時代に目を守るための、正しいアイケアについて、専門医の先生が教えてくれました。

(c)Shutterstock.com

コロナ禍で深刻化する“角膜の傷リスク三重苦”って?

リモートワークやおうち時間が長いことで、スマホやパソコン、テレビの画面を長時間見てしまうことにより、デバイスを介した目に頼る生活が定着しています。角膜は細胞がむき出しの状態のため、とても繊細で傷つきやすく、ニューノーマルな生活で、かなりダメージを受けやすい状態なんだそう。

角膜の傷リスク三重苦

(1)目の酷使による影響
スマートフォン、パソコン、VDT作業に集中すると、瞬きの回数が1/4に減少。長時間 VDT 作業を継続することで自律神経の交感神経が優位になり、涙が出にくくなる。

→結果、乾燥により涙の層が崩れ角膜が傷つきやすい状態に。

(2)マスクドライアイによる影響
マスクドライアイとは、マスクから漏れる上向きの呼気によって、目の表面が乾いてしまうこと。 コロナ禍の今、マスクを日常的につけている環境にあり、常に目が乾燥しやすい状態になっています。

→結果、マスクによって乾燥のリスクが高まり、角膜が傷つきやすい状態に。既にドライアイの人はさらに悪化する可能性も。

(3)精神疲労による影響
ストレスや不安感が蓄積されると、自律神経のバランスが崩れ、涙の油層を形成するためのマイボーム腺の働きが低下。

→結果、涙の質が低下し、角膜が傷つきやすい状態に。

”マスクドライアイ”という言葉を初めて聞いたという方もいるのではないでしょうか。目の乾きでも角膜に傷がつきやすい状態になるんですね。次のような症状がある方は要チェックです!

ただの疲れと放置しないで!実は角膜の傷が原因かも

ただの疲れや加齢のせいと放置しがちなよくある症状でも、頻繁に起こったり長引く場合は角膜の傷が原因である可能性があります。専門医(堀先生)が監修した「角膜の傷リスクチェックリスト」で“危険層”に分類された人のうち、73%の方の角膜が実際に傷がついていたという調査結果も出ているそう。

多くの人が角膜の傷リスクにさらされている今、チェックリストを活用しながら角膜の傷リスクを把握しておきましょう。

<角膜の傷による症状例>

●文字がぼやける
●目が常に渇いてショボショボする
●目がかすむ
●痛みを感じる
●ゴロゴロ感
●寝ても疲れ目が解消しない

このような症状が出ないようにするには、1日の中でも目を休める時間をきちんと設けたり、点眼薬(目薬)を正しく使う必要があります。

次に、点眼薬(目薬)の正しい使い方や選び方をみていきましょう。

点眼薬(目薬)は「多ければいい」はNG!正しい使い方と選び方が重要

角膜の傷リスクを防ぐアイケア習慣として、点眼薬(目薬)は涙と目の機能を正常化する役割があるため、有効なセルフケアの1つではあります。しかし、適正回数以上点眼するといった誤った使い方や、自身の目の状態に合っていない商品の選び方は、かえって症状を悪化させる可能性もあるそう。点眼薬(目薬)の正しい使い方と選び方もチェックしてみましょう。

<点眼薬(目薬)使用のポイント>

1、使い方:点眼回数は適正範囲内か?
→用法用量以上にさしすぎると涙の層が破壊され角膜を傷つける恐れがある
※適正回数は一般的に 1 日 5〜6 回。

2、選び方:目にやさしいものを選んでいるか?
→点眼薬に配合されている防腐剤は、角膜に傷がついている人には症状を悪化させる恐れがある
→防腐剤の代表的な成分である塩化ベンザルコニウムは、油を分解する作用があり、涙の油層を破壊し目を乾きやすくする
→本来、防腐剤は菌の混入による製品の汚染を防ぎ、品質を保ち安全に使うことに役立っており、角膜に傷がない状態で使用する分には問題はない(市販品の約 73%が防腐剤入り点眼薬※主要 99 銘柄)

1日あたりの点眼回数、4人に1人は適正回数を超える7回以上点眼!

コロナ禍以降、生活変化の影響により角膜に傷があることで起こる症状が深刻化しているケースが多く見られ、なかには点眼薬により症状が悪化した方もいるそう。
「コロナ禍の点眼薬使用実態調査」を実施したところ、そもそも点眼適正回数への意識が低く、症状を感じるたびに点眼薬をさす人も多く見受けられたそう。

角膜の傷リスクの高い人ほど不快症状を感じる頻度が高いため、点眼回数が増え、さしすぎになりやすいのかもしれませんね。また、点眼薬に含まれている防腐剤が角膜の傷に与えるリスクは、あまり多くの人に認知されていないため、角膜の傷リスクが高い人も目にやさしい防腐剤無添加の点眼薬を選べていないことも明らかになりました。
使い方・選び方の間違った認識から、良かれと思ってさしていた点眼薬が、かえって角膜の傷を悪化させてしまっている可能性もあるそう。

普段から点眼薬をさす習慣がある方は、もう一度使用している点眼薬の成分や適正回数をチェックしてみてくださいね。また、コロナ禍でなかなか病院へも足を運びにくい状況が続いていますが、気になる症状があるという方は、悪化しないうちに専門医を受診しましょう。

■記事を監修してくださった先生
東邦大学医療センター 大森病院眼科 教授 診療部長
堀 裕一先生(ほり・ゆういち)先生
角膜疾患やドライアイ、角膜移植、オキュラーサーフェス(角結膜上皮と涙液)を専門に研究を行う。1995年大阪大学医学部卒業、大阪大学医学部眼科学教室入局。2001年米国ハーバード大スケペンス眼研究所研究員。06年大阪大学医学部眼科助手(助教)、09年東邦大学医療センター佐倉病院眼科講師、11年東邦大学医療センター佐倉病院眼科准教授、14年東邦大学医療センター大森病院眼科教授。現在に至る。
杏林大学医学部 眼科学 教授
日本角膜学会 理事長 日本コンタクトレンズ学会 理事
山田 昌和先生(やまだ・まさかず)先生
ドライアイなどの角膜疾患を対象にして涙液や角膜試料の生化学的分析を行い、疾患や病態のバイオマーカーの探索を行っている。1986年慶應義塾大学医学部眼科研修医、専修医。93年米国Duke大学アイセンター研究員。95年慶應義塾大学眼科助手。97年慶應義塾大学眼科専任講師。2003年国立病院機構東京医療センター感覚器センター部長。13年杏林大学医学部眼科学教授。現職に至る。

情報提供/現代人の角膜ケア研究室
構成/鬼石有紀