「ヒルドイド」と「ヘパリン類似物質コスメ」って同じもの?素朴なギモンを医師に聞いてみた

医療費負担の原因になっていることが話題となり、近年何かとニュースに取り上げられること多いお薬「ヒルドイド」。ここ数年でヒルドイドの主成分であるヘパリン類似物質配合のコスメが、処方箋なしで購入できる医薬部外品コスメとして各社から販売されるようになりました。

そこで今回は、皮膚の専門医であるシロノクリニック銀座 副院長の笠井美貴子先生に、ヘパリン類似物質配合のコスメの素朴な疑問について答えていただきました。

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ヒルドイドってどんなお薬?

「ヒルドイド」と「ヘパリン類似物質」って同じものですか?そもそもどんなお薬なのでしょうか。

通称「ヒルドイド」と呼ばれるヒルドイドソフト軟膏やヒルドイドローションは、成分名ヘパリン類似物質という血行促進・皮膚保湿剤です。ヘパリン類似物質には保湿作用と血行促進作用があります。そのため、医療現場では、アトピー性皮膚炎や皮脂欠乏性皮膚炎の治療の際に皮膚の保湿などを目的に処方されることが多いです。
また、しもやけなど血行障害による痛みや炎症をやわらげたり、打撲や捻挫などの腫れや痛み、筋肉痛、関節痛を緩和したり、ケロイドの治療や予防にも用いられます。治療を目的として医師が処方する医療用医薬品です(笠井先生)

 

「ヒルドイド」と「ヘパリン類似物質配合の市販薬」は同じ?

ヒルドイドの成分が、ヘパリン類似物質ということはわかりました。ドラッグストアや通販などで購入できる、「ヘパリン類似物質が配合された市販薬(コスメ)」はヒルドイドと同じと思っても良いのでしょうか?

市販薬でも、一般医薬品(OTC医薬品)の一つである第2類医薬品として販売されているものと、医薬部外品として販売されているものがあります。医薬品と医薬部外品の一番の違いは、使用目的の違いです。

医薬品は診断・治療・予防に使用することができるのに対して、医薬部外品は予防にのみ使用され、化粧品の基本的な効能に特定の効能を持つ有効成分を加えたものです。また、使用目的の違いにより、医薬品と医薬部外品では有効成分であるヘパリン類似物質の含まれる量にも違いがあります。

医薬品にはヘパリン類似物質がヒルドイドと同様に1g中に3mg(0.3%)含まれていますが、医薬部外品は各社が独自にその他の成分を配合し販売しています(笠井先生)

ヘパリン類似物質の配合量は、多いほうが保湿効果がある?

ヘパリン類似物質が含まれた市販薬には、一般医薬品(OTC医薬品)の第2類医薬品として販売されているものと、医薬部外品(コスメ)の2種類があるということですが、肌荒れを改善したい場合には第2類医薬品を、肌荒れ予防を目的に使うには、医薬部外品を選ぶと良いという認識で合っていますか?ヘパリン類似物質の配合量が多い第2類医薬品のほうが、保湿効果が高そうなイメージですが…。

ヘパリン類似物質含有製剤は吸湿して角層に水分を付与する作用があり、持続的な保湿効果がありますが、配合量が多いほうが保湿効果があるという事は一概には言えません。あくまで目的に応じて選んでください。

ヘパリン類似物質配合コスメは医薬部外品にあたり、化粧品の基本的な効能に特定の効能を持つ有効成分を加えたものですから、化粧品を選ぶ時のように自身で選択できるところがメリットです。クリームや乳液など好きな使用感で選んだり、皮膚のかゆみや炎症を抑える成分を独自に配合しているものもあります。

患者様の中には、治療薬のヒルドイドと同じ感覚で、市販のヘパリン類似物質配合のコスメを使ったら肌トラブルが出てしまったとい方もいらっしゃいます。市販されているものには、ヘパリン類似物質以外にも、特定の有効成分が加えられているので、”ヒルドイド=ヘパリン類似物質配合の市販薬”と考えるのはちょっと違います(笠井先生)

「手荒れ」にヘパリン類似物質配合のコスメを使っていいの?

ヒルドイドの説明書には、傷にヒルドイドを塗ってはいけないと表記されていると思うのですが、手洗いや消毒の回数が増えたことによる”手荒れ”にヘパリン類似物質配合のコスメは使っても良いのでしょうか?

ヘパリン類似物質は”手荒れ”には有効ですが、あかぎれなどの傷ができてしまっている肌には使用しないのが望ましいです。傷がある場合には、傷の部分には塗布しないようにして使うのが良いでしょう(笠井先生)

手荒れしてしまった場合の正しい対処法は?

季節的に乾燥が激しい上に、手洗いやアルコール消毒の回数が増えたことで手荒れに悩む人が増えていると思うのですが、どのようなケアをしたら良いでしょうか。

まずは手洗いをしたあとは、必ず保湿をすることが大切です。保湿をするときには、肌を強く擦りすぎないように注意しましょう。軽度の手荒れの場合は、ヘパリン類似物質配合の市販薬・コスメでも十分改善しますが、炎症がひどくなり、紅斑やかゆみ、ひびやあかぎれができてしまった場合は手湿疹になってしまっている可能性があります。その場合には皮膚科を受診しましょう(笠井先生)


笠井先生、ありがとうございました!
手荒れの予防などや、美容目的で顔や体に使うならヘパリン類似物質配合のコスメで十分だけど、肌トラブルの改善のためには、やはり専門医を受診して、適切なお薬を処方してもらうことが大切。症状が悪化しつつある場合には、コスメに頼るよりもまずはクリニックへということですね。

お話をうかがったのは…

シロノクリニック銀座 副院長 笠井美貴子(かさいみきこ)先生

丁寧なカウンセリングと豊富な知識に基づく確かな治療で、多くの患者様から厚い信頼を獲得。
美への探究心が強く、結果に差がつく技術と気さくな人柄で心身ともにトータルで美を提供します。

構成・文/鬼石有紀