ひょんなことから世界自然遺産の島、父島にやってきた「超アウトドア派です!」というわけではない、普通の女子による父島レポート最終回です。
【ここまでの記事はコチラ】
第1回→【連載】世界遺産・小笠原に普通の女子が行ってみた(1)〜大荒れの海を渡り、いざ南の島へ〜
第2回→【連載】世界遺産・小笠原に普通の女子が行ってみた(2)〜海でくじらとリアル竜宮城を見た〜
第3回→【連載】世界遺産・小笠原に普通の女子が行ってみた(3)~超ビッグなハートから見た絶景~
第4回→【連載】世界遺産・小笠原に普通の女子が行ってみた(4)~贅沢な夕陽と、食とお酒の愉しみ~
3泊4日の父島ライフは、長いようで本当に一瞬で終わってしまいます。島に着いてからの半日、海のコースで丸1日、山のコースで丸1日、船に乗るまでの半日。思い返しても、盛りだくさんの日々でした。
最後の半日は、島の中心部でぼんやりして過ごすことにしました。
もちろん、アクティブに活動したい方のためには、午前中で全行程を終える半日ツアーなども用意されています。
朝6時半に開店するパン屋さん「たまな」を発見。テイクアウトもできるしお店のテラスでいただくこともできるそうです。9時頃に訪れたときにはかなり店内のパンはなくなっていました。父島の朝は早い……。
ひとまず朝のカプチーノ。外で飲むとなおのこと美味しく感じます。
島内をぐるりと歩いていると、「ねこ待合所」という施設を発見しました。
山編の記事で紹介した「ノヤギ」同様、島外から持ち込まれて野生化し、小笠原固有の動植物に影響を与える「ノネコ」。このノネコを山で捕獲し、こちらの施設で人間に慣らして、東京都の獣医師会と連携して里親を探す、という一大プロジェクトを行っているようです。
今まで東京に引っ越していった猫の似顔絵がずらりと並んでいます。こちらは、すべて島の人に描いてもらったものだそう。
猫を捕獲したら、きちんと里親を探して本土で幸せな生活を送ってもらう……。自然や動物を大切にしている小笠原ならではの素敵な取り組みです。
あと数時間で出港だと思うと、とても淋しいものですが、刻一刻と、出港の時間は迫ってきます。
初日にも来た、海の見えるカフェ「HALE」で今度はレモネードを飲みながらぼんやり。島でとれたレモンを使っていて、甘みと酸味がバランスよく美味しい。席には他にも出港を待つ人々のグループなどが、最後のゆっくりとしたひとときを楽しんでいました。
13時。そろそろ船に乗らなければいけない時間がやってきました。
しかし、最後の一大イベント、島の方々からのお見送りがまだ残っています。初日に送る側として見ただけで涙ものでしたのに、実際自分が送られる側になると、いったいどのような心境で迎えることになるのでしょうか……。
船のデッキから外を見下ろしていると、地元の有志の人たちによる、航海の安全と再会への祈りを込めた太鼓の演奏が始まりました。
そして、出港のとき。
船が少しずつ岸から離れていきます。
初日の出港見送り時に見た、あの応援団の皆さんがまた来てくれていました。
いってきます、東京へ。
おがさわら丸のデッキの上で、父島で体験した出来事が鮮明によみがえります。
くじらをみた海。
竜宮城のような世界を見たシュノーケリング。
天然記念物と固有種に囲まれた山。
360度パノラマの絶海の孤島の風景。
今まで見た中で一番美しい夕陽。
そこに暮らすあたたかな人々。
いろいろなことを教えてくれたガイドさん。
走馬灯のようにこの4日間のことが脳内に駆け巡り、思わず、涙が出ました。
ですが、父島のお見送りはここでは終わりません。
他にもたくさんの船から続々とダイブ! そのたびにデッキでは歓声があがります。
湾の出口まで長い長いお見送りをしてもらったら、また25時間半にわたる長い長い船旅をして東京まで戻ります。
私が父島にいた4日間の全日程は、なんとすべて晴れ! そんな素晴らしい天気の中過ごしましたが、出港時の写真でも時間を追うにつれてどんどんくもっていっていることからもわかるように、私たちが乗った船が出港したその後、父島は雨が降ったそうです。
帰りの船は、行きの揺れっぷりはいったいなんだったのか……と思うくらいとても平和で、船酔いもしませんでした。心地よい揺れはゆりかごのよう。4日間もの間、自分には珍しいアクティブ活動をし続けた体を休めるように、ひたすら眠り続けました。
そして、目覚めると東京湾。
左を見ると横須賀あたり、右を見ると千葉。神奈川と千葉ってこんなに近いのか……と驚き、さらに遠くを眺めていると、なんと富士山が見えました。
羽田空港に近づくにつれて、飛行機がばんばん飛んでいる風景が見られました。
陸地についた瞬間、安心したような、淋しいような気持ちになると同時に、父島にいた時間が夢だったのではないかと思いました。
行きは28時間、帰りは25時間半、合計53時間半(!)お世話になった定期船、おがさわら丸。
ありがとう。お世話になりました。
ひょんなきっかけから始まった小笠原諸島への旅。
父島で私が経験した空も海も山も、「こんなの見たことない!」の連続だったのに、島の人たちは「次は夏においで、そしたらもっときれいな海が見られるから」と言います。それはいったいどれだけ美しい世界なのでしょうか。きっと、私たちの想像が及ばない、この目で見て実感するしかないものなのだと思います。
島のあの空気や美しさを、できる限り写真で撮って、できる限り書き尽くしてきました。けれど、それでも伝えきれないものが、悔しいくらいに多すぎるんです。
東京から1000km、船で25時間半の絶海の孤島、小笠原の空気を、次はあなたが体感してみてください。(後藤香織)
【あわせて読みたい】