【実録】夜22時、ひとり暮らし女子の部屋に初めてゴキブリが現れた。4時間半に渡る戦いの記録で学んだこと【画像なし】

【実録】夜22時、ひとり暮らし女子の部屋に初めてゴキブリが現れた。4時間半に渡る戦いの記録で学んだこと【画像なし】

※この記事には、タイトルに表記されている虫の名称や画像は一切出てきません。なぜなら私が大嫌いだからです。

アイツ。(どいつかは、タイトル参照)

東京で暮らしている限り、超高層階に住むなどの対策を打たない限り、避けられない存在ではあります。……いや、超高層階に住んだところで荷物にくっついて入ってきてしまったとか、可能性をゼロにすることはできません。

私はマンションの2階にある今の家に引っ越して5年と2か月。すぐ近隣に飲食店やコンビニがあるなどの「まぁ、出てもおかしくないよな」という条件でありながら、どんなに真夏であっても5年アイツが出現しなかったので、「きっとこの家は出ない家なんだな」と思っていました。

そう、あの夜までは。

ある10月の火曜日 PM22:00 遭遇

好きなアイドルのイベントに参加し、ビールを一杯引っかけ、もう一杯家で飲もうかなとチーズや生ハム、ビールなどを買ってきてご機嫌で帰宅。きゅうりを家にあるみょうがと一緒に浅漬けにして、トリュフ塩を振っておいた豚肉を焼こう、などと、玄関の時点で私はルンルンしていた。

しかし、平穏ないつもの日常というものは、とてもささいなことで崩壊するものだ。

部屋の電気をつけると、窓上部の壁に「何か」はいた。

 

遭遇
星印のところです。

 

恐怖のあまりか、目はそこに焦点が合わなかった。ただ、「何か」が何か、感覚で分かった。

「アイツだ」と。


PM22:03 戦いの準備

私はとっさに財布とケータイが入ったカバンをつかみ外に出た。

これまでアイツが部屋に出現したことは一度たりともなかった。
ここに引っ越す前の家でも一度だけ。実家に住んでいた頃は、東北の涼しい場所だったためかヤツらに遭遇したことは一度もなかった。

今の家に住んで5年と2か月。一度もアイツが出たことがなかったため私の家にはなんの武器もなかった。ひとまず最寄りのコンビニに駆け込んだら10月でもうシーズンオフのためか殺虫用品はもう売っていなかった。
慌てて最寄り駅近くにあるドラッグストアが23時までと調べて、すぐに足を向けた。家の近くで最も遅くまで営業しているドラッグストアは23時までだ。出現があと1時間遅かったら取り返しのつかないところだった。22時に出現してくれたアイツに、まずは感謝だ。

 

気持ちをTwitterに連投後、ドラックストアへ

焦りながら友達しか見ていない非公開アカウントのTwitterに連投をした。「どうしよう」「嫌だ」とかそういうことだ。友人たちからは「とにかく早く殺虫剤を買え」「洗剤が効くらしい」などと続々情報が寄せられた。

ドラッグストアの明かりに安堵しながら殺虫剤コーナーへ足を向ける。次に私を襲ったのは、とても小さなことだけれど、大きな絶望だった。

「なぜその手の殺虫剤は、その手のアイツが嫌だから買うのに、どうしてこんなにパッケージにリアルにデカデカとアイツの肖像が書かれているものばかりなのか?

と。
その手の肖像が書かれてないものも世にはあるらしいがその店にはなかった(売り切れていたのかもしれない)。私はアイツが本当に嫌いで画像でもイラストでも見たくない。だというのにアイツを殺すためにはアイツが書かれたものを買わなければいけない。私は売場の前で苦しんだ。頼むからリアルに書かないパッケージのものを発売してくださいと各種メーカーに土下座して回りたい気持ちになった。
しかしどうしようもないのでその中のひとつを手にとった。ネットで調べた「超強力なヤバいスプレー」は売り切れていた。

そしてもうひとつ「すき間にスプレーすると1か月効力があって1か月殺してくれる」というものを発見しそれもとりあえず買うことにした。

しかしとにかく憔悴しきっていた私はドラッグストアでしばらくしゃがみこんでいた。22:10頃にドラッグストアに着き、22:50まではドラッグストアにいた。誰かがいる空間にいたかった。ただただ、アイツに乗っ取られた家に帰りたくなかった。

 

友人からは「もしかしたらコオロギとかカナブンかもしれない」とポジティブな声が寄せられた。でももうなんでもいいから絶対殺すしかないという気持ちになっていた。たぶんそれがカブトムシでも。

 

23時閉店のスーパーへ

ドラッグストア閉店10分前になり私はドラッグストアを出た……が、足は同じく23時閉店のスーパーに向かった。本当に帰りたくなかった。スーパーに最強殺虫剤が売っていないか見てまわったが売っていなかった。
閉店のアナウンスが流れる。もう私は帰るしかなかった。友人からは「うちの母親どんな手段でも倒せるSSR母だから送り込みたい……」というツイートがあった。SSR母ください。

帰り道、万全の体制で戦うべく、アイツを倒すイメトレをした。アイツが現れた壁の真下には、好きなアイドルのDVD置き場があった。もしアイツがそこにいたとしてその上に落下するのは絶対嫌だ。そう思い下に敷いておく用の新聞紙をコンビニで探し回ることにした。
とにかく私は、家に帰らなくていい理由が欲しかった。

コンビニへの道中、前方に誰もいなかったので、誰もいない道路に向かって、部屋に帰ったら1秒でアイツを撃てるように殺虫剤の動作確認をした。その瞬間後ろからジョギングしている人が走ってきた。あの人はなぜあんなところで殺虫剤をまいているのかと思った可能性がある。少々恥ずかしかった。

 

深夜、コンビニへ

しかし、23時を過ぎたコンビニに新聞はほぼなかった。

最寄りのコンビニ(1)。ない。
次に近いコンビニ(2)。ない。600円の日経ヴェリタスと、500円のEXILEが表紙の何かが新聞コーナーには売っていた。近くに昨日の廃棄新聞が置いてあったので「梱包にちょっと必要なので売ってくれ」と少々の嘘を織り交ぜて頼んだら、店員さんに片言な日本語で悲しそうな顔をして「売れません」と断られた。きっと私も悲しい顔をしていた。
ちょっと歩くコンビニ(3)。ようやくスポーツ新聞を発見。これほどスポーツ新聞にありがたみを感じたことがこれまでの人生であっただろうか?

 

新聞を探し終えた私は今度は友達から「洗剤があるといい」と聞いてさまざまなコンビニで洗剤を見てまわった。
要するに、私はなんらかの理由をつけて、アイツがいる部屋になど帰りたくなかったのだ。

 

経験者の友人の重い言葉

しかし、家でアイツを戦う経験が何度かある友人は私にこう言った。

「一刻も早く帰れ」

と。

「帰りたくないと思うけど、動いたら地獄だ」

経験者の言葉は重かった。観念して、いい加減帰ることにした。時刻は23時20分。私は1時間近くもアイツとの戦いに備えた便利グッズを探し続けていた。最寄りのコンビニで洗剤を購入して、マンションの入口によろよろとたどり着いた。
ドラッグストアの袋の中に、殺虫剤2つと、洗剤と、新聞紙。どう考えても私は「家にアイツが出た人」のいでたちだった。

 


PM23:27 二度目の帰宅

殺虫剤を手に、おそるおそるドアを開けた。いっそ、玄関にいてくれたら即殺せるのにと思ったけど、それは叶わなかった。
おそるおそる、電気をつけた。
視線を、先ほどの位置に向けた。

……アイツはもう、そこにはいなかった。

 

友人の心配は当たった。「動いたら地獄」。私の部屋は「おそらくどこかにいるのに、隠れた」というさらなる地獄モードに突入した。玄関でしばらく立ち尽くした。この部屋はアイツに完全にのっとられたのだ。

ドラッグストアで買った「すき間に噴射しておけば効果が1か月もつ殺虫剤」をシュッシュしながら私はリビングに向かった。すべての壁を見回す。いない。

よりによって部屋の大規模な断捨離を開始した翌日で、私の部屋はいつもより少々荒れており、アイツが姿を隠せる物陰はいくらでもあった。テレビボードにしているカラーボックスの裏、タンスの裏、窓際など、さきほどのシュッとしておけば1か月効く殺虫剤を何か所かシュッシュしながら、いつもの安住の地・ベッドの上にたどりつき、少しの物音でビクビクするのが嫌だったので、テレビをつけた。人の声に安心した。

しばらく、壁を見回していた。しかし、いない。
いるなら、出てきてほしかった。でも、出てこないでほしかった。
勝手に部屋に入ったのだから勝手に出ていく可能性もあることに私は少しでも賭けた。

Twitterに「幻覚だった可能性ある?」と書くと、友人からは「ない」と1分以内に返ってきた。

私「勝手にいなくなる可能性は?」
友人「体感60%」

結構いなくなるらしい。


AM 0:38 一時休戦

1時間近く、私はTwitterをしたり倒し方の検索をしながら、アイツが出てくるのを見張っていた。アイツの倒し方の記事のいくつかは「この記事にはリアルな画像はありません」という注意書きがあり、最高だった。ところでGoogleでその名前を検索するとその瞬間アイツの肖像が出てくるのどうにかなりませんか?
……しかし、いつになってもいっこうに出てこず、私は心も体も疲れ果てていた。
一度お風呂に入ろう。そう思いお風呂をため、一時休戦を決めた。

コンタクトを外し化粧を落とし体を洗い、お風呂にのんびりとつかりながら、戦いについて考えた。
もしかしたらアイツは本当にいなくなったのかもしれない。もしくは、普段も気づかないだけで実は共存していたのかもしれない。もし私が23時半に帰宅していたら、ヤツの存在に気づくことはなかったのだ。私が存在に気づかないなら、そこにいてもいないのと同然なのではないか。ユリイカ! アイツを通して哲学的思考を始めた。気分はアルキメデスだ。
普段はお風呂に30分ほどつかるが、今日は気持ちがソワソワしていてすぐにあがった。

 


AM 1:00 よろしい、ならば戦争だ

お風呂から上がっても、やはりアイツは部屋にいなかった。やっぱり、勝手にいなくなったのかもしれない。
つけっぱなしのテレビはAKBINGO!になっていた。こういう気楽に観れる番組は今の自分にちょうどいい。いつものようにスキンケアをして、水でも飲もうと立ち上がった。

……おそらく、「アイツ」と思われる存在が、ふたたび現れた。

幸いにもコンタクトを外していたから、ヤツの姿はわからない。「ただ、そこに何かいる」ことはわかる。もしかしたらコオロギかもしれない。鳴いてくれ。
しかも今度は、ベッドの上の壁だ。よりによってそこかよ。

再会
星印のところですPart2

 

ベッドの上で殺虫剤をまきちらしたくなかったが、これを逃したら次はいつになるかわからないので背に腹は代えられない。
ちょうど断捨離真っ最中で私は荷物を送るべく、大きい段ボールを手に入れていた。その上にゴミ袋と新聞紙を敷き、私は左手に段ボールを、右手に殺虫剤を持ち、アイツのもとへ近づいた。
先ほど路上で予行演習をしていたはずなのに、半分パニックになっている私は殺虫剤のプッシュすべきところ間違って噴射できなかった。その瞬間アイツは動いて、その動きをもって同時に私は確信した。

「アイツは絶対にコオロギではない」

 

その瞬間殺虫剤のどこをプッシュすべきか思い出して、私はヤツに向かって殺虫剤を噴射した。噴射しに噴射しまくった。20秒は噴射した。最近は殺虫剤に強いタイプもいると聞いて、段ボールの上で動……いているのか、それとも殺虫剤の噴射の勢いに流されているかわからないが、とにかく静止してはいないアイツに向けて噴射した。向こうからしたら、自分の何十倍もでかい生物が自分に向かって殺戮兵器を使ったら恐怖だろうな。とは思ったけれど容赦している場合ではない。こちらの領土に入ったお前が悪い。

ここまでは壁にぴたりとくっつけた段ボールの上で事が済んでいたが、気を抜いた私は段ボールを壁から離してしまった。

「あ」

おそらく死んだアイツはベッドの裏に落下していった。そこには、お客さん用のふとんやらキャリーケースが置いてあった。


AM 1:15 もう寝たい

20秒は噴射したのだからさすがに死んだとは、思う。けれど万が一生きていたら? そう思うとアイツを捜索するのが怖かった。
手が震え、クラクラしていた。それはアイツと対峙したからなのか、それとも呼吸を止めていたつもりでも殺虫剤を多少なりとも吸ってしまったからなのか。
フラフラしたまま何度もうがいをして鼻に濡らしたティッシュを突っ込み、可能な範囲で洗浄した。

捜索、したくない。でも万が一殺せていなかったら明日また現れるし、そもそも明日朝起きてすぐやらなければいけないことリストに「アイツの死骸を探す」が加わるのは死ぬほど嫌だ。今やるのがいちばんベストだ。放置している間に生き返る可能性もなくはない。
やらなければいけないことはわかっているが心がつらくて私は床にへたりこんで、とりあえずめがねをかけた。

侵入経路としてもっとも怪しい、冷房の換気口にシュッとすると1か月効果がある殺虫剤をまいた。悲しくなってちょっと泣いた。
遅かれ早かれいつかはやらなければいけないのだ。ひとり暮らしなんだから。始末したくない。でも始末せずに死骸のある部屋で寝るのはもっと嫌だ。どっちの選択肢も嫌だ。

そんなことをひたすらTwitterに書いていた。

 

時計は深夜2時…

気づけば2時になっていた。私は45分近く「嫌だ」と思っていたらしい。人生でいちばん無為な45分だ。しかしもうどうしようもない。ひとり暮らしの家では誰も何もやってくれない。私がやらなければ、アイツは部屋からいなくならない。

2時15分。倒してから約1時間経過し、ゴミ袋を手に、私はアイツの捜索を開始した。殺虫剤を10秒くらい直接噴射してしまったお客さん用ふとんは捨てるつもりで、即粗大ごみの申し込みをした。その上にいたらいいのにと思ったがいなかった。とりあえずお客さん用ふとんをまるっと大きなごみ袋に入れた。

その下にはキャリーケースがあった。その上にもいない。
ということは……。
確信した私はめがねを外した。

キャリーケースをそっと手前に引いたら、アイツの死骸(と思われるもの)はそこに、いた。
コンタクトもめがねもしていない視力0.2の状態なので「黒っぽい何かがそこにある」ことしかわからない。もしかしたら死んでいない可能性もあるかもしれないと思ってもう一度30秒ほど追い殺虫剤をした。

数分待ってからクッキングペーパーを何重にもし、私はそれをおそるおそるつかみごみ袋に入れ、新聞紙と一緒に入れ24時間ゴミ出し可能なゴミ捨て場に置きに行った。ちょうどあと数時間したら燃えるゴミの回収がやってくる。

AM2:29。発見4時間半後、すべての戦いは終了した。

 

 

……戦いの記録は以上です。
4時まで寝れず1~2時間おきに目を覚ましたとか、朝イチですべてのシーツを洗濯したとか、いろいろありました。疲れました。毎日帰宅するたびアイツが現れた場所をチェックしていないことに安堵します。そして入ってきそうなすべての場所に1か月効力がある殺虫剤をまいています。もう二度と現れないでほしい。頼む。
ひとつ言いたいことはオフシーズンでも現れるということです。


4時間半の戦いで学んだこと

 

  1. とりあえず即殺せる殺虫剤、ふっておけば1か月効力がある殺虫剤、新聞紙、洗剤を買う
  2. 殺虫剤が効かないヤツは洗剤やお湯をまけば死ぬらしい(今回は試さず終わりました)
  3. いなくなるのがまた恐怖なのでできるだけ即倒す(でも帰りたくない気持ちはわかる)
  4. 殺虫剤はできれば常備しておく
  5. 死骸の処理は戦い直後のアドレナリンが出まくっている状態でやったほうが早く済む。絶対に翌日に持ち越してはいけない。憂鬱は早いうちに終わらせる。

 

いない家でも、万が一に備えて殺虫剤は買っておいてください。私の場合、もし22時に帰ってきていなくて存在を知らないまま、もう殺虫剤を手に入れることのできない午前1時頃に部屋に出現したらどうなっていたかと考えるだけで身震いします。「殺虫剤を買える時間に出現した」「コンタクトを外したあとにもう一回遭遇した」という、まだ幸運な条件が重なっていましたが、どれかひとつでも違っていたらどうなっていたことか……。

皆様もどうかお気をつけください。
あと、アイツの肖像が書かれていない殺虫剤売ってください。何卒よろしくお願い申し上げます。(後藤香織)