【頭痛の治し方4】ガマンからも、痛みどめの乱用からも卒業!専門医に聞いた、正しい頭痛の治し方

【頭痛の治し方4】専門医に聞いた、正しい頭痛の治し方

頭痛がひどい。けれどどうしていいかわからない。とりあえず痛みどめを飲むけれど、なかなか治らなくて治るまで寝ていることしかできない。なんなら、つらくて眠ることも難しい……。そんな頭痛に関する悩みを持っている方はかなり多いのではないでしょうか。
そんな方のために、「痛みどめの薬を飲んでも飲んでも頭痛が治らない!」という人のための正しい治療を、頭痛外来の病院として有名な、秋葉原駅クリニックの院長・大和田潔先生にうかがいました。

 

頭痛,痛みどめ
(c)Shutterstock

Q.頭痛になったら「冷やすのがいい」「あっためるのがいい」と諸説ありますが、どちらが合っていますか?

実は、そこまでひどい頭痛ではない場合は、冷やしてもあっためても、どちらでもよくなることがあります。

昔は「あっためると血流が良くなって片頭痛に悪い」「冷やすと緊張型頭痛に悪い」と言われていたけれど、外から冷やしたくらいでは脳の中の温度は変わりません。せいぜい皮ふから5mm~1cm程度の温度しか変わらないと言われています。外気温で体温が変わっていたら脳の機能を維持できませんし、体温も一定にならなくて体調が維持できません。体温を保っているのは、「自律神経」。自律神経は命を支える根幹のシステムなので、自律神経は負担が増すことがあっても狂うこともありません。覚えておきましょう。


Q.冷やす、あっためるが頭痛にいい理由を教えてください。

子どもが転んだときに、お母さんが撫でてあげることや、どこかをぶつけたときにその部位を撫でると痛みが減るのと同じです。

痛みのある部位の皮ふに、小さな刺激を与えると、強い痛み刺激を遮断する作用があります。はり(鍼)やきゅう(灸)はまさにこれで、細いはりで皮ふにわずかな痛み刺激を与えると、強い痛み刺激をブロックしてくれる。これを「ゲートコントロールセオリー」と呼びます。

「冷やす」も「あたためる」も、皮膚へ刺激を与えるという点では同じです。熱いタオルを当てたり、熱いシャワーをざっと浴びたり、アンメルツなどのスーッとするものを塗ったり……そういった皮ふへの刺激が、頭痛を減らしてくれます。

また、血流が悪いから頭痛や肩こりがひどいというのも誤りです。血流を良くしようと「長風呂」をしてしまいのぼせると、心拍数が上がり、末梢血管も拡張しすぎるので、脳血管が拡張して頭痛や付随する肩こりや首の痛みがひどくなってしまうので、逆効果。ご注意ください。


Q.ひどい頭痛、痛みどめを飲んでも治らないのですが……

まず、ひどい「片頭痛」の原因は、脳の血管が拡張し、神経を刺激してしまう、ということに起因しています。市販の痛み止めで頭痛がおさまる……という方はそれでも問題ありませんが、それではおさまらない方は、「痛みどめ」とは違う、「脳血管をもとに戻す薬」をちゃんと使うと、どんなに強い痛みどめを使っても効かなかった頭痛もすっきり良くなります。

Q.その「脳血管をもとに戻す薬」は、「痛みどめ」とは何が違うんですか?

・まず「痛みどめ」がどう体に効いているかということをさらっと説明していきます。カラダの細胞に準備されている「COX」という酵素が活性化すると、体にある「アラキドン酸」から「プロスタグランジン」という痛み物質ができます。

・痛みどめは、このCOX酵素の働きをブロックするので、痛み物質ができなくなって痛みが止まり、頭痛が引く、という仕組み。そのため、自力で頭痛のモトとなる「脳の血管の拡張」が正常化できるときには、頭痛は次第に引いていきます。

・けれど、血管の拡張が続き神経への刺激が続いてしまうようなときには、COX酵素を阻害して痛み物質を取り除いても、頭痛は改善しません。片頭痛そのものや、痛み止めの胃腸障害から吐き気が出てきたり、ひどいときには嘔吐をしてしまいます。

・そこで出てくるのが、おおもとの原因を断つ、「血管をもとに戻す薬」。一回薬の力で血管を正常化すると、その後の頭痛の頻度が下がることが多いのです。人間の脳の血管は「正常な状態を続ける力」を持っています。一回正常化させてあげると、頭痛がスッと引いていき、その後はあまり起きなくなったりする。

たくさん頭痛が起きている人は、一度きちんとお医者さんに行って、適切な治療をすることで、頭痛の頻度が下がり、起きる頭痛の大きさも小さくなります。

 


Q.とは言っても、病院に行くのってなんだか面倒なのですが……。

医療機関の受診は、確かに最初はちょっとしきいが高いかもしれません。

でも、頭痛の頻度が高く、脳血管が不安定な人は、温度変化など、ちょっとした外界の刺激にも敏感になってしまいます。
片頭痛を放っておくと、ちょっとした体へのストレスで頭痛が起き、どんどん痛みに弱くなる、いわゆる「閾値(このラインを越えると頭痛になる、というライン)が低い人」になっていきます。つまり、ガマンすればするほど頭痛が起きやすくなってしまいます。

痛み止めを月に数回内服するぐらいですんでいれば、問題ないでしょう。

でも、頭痛で日常生活に支障がでることがおおかったり、寝込んでしまうようなことがあれば、頭痛外来の受診をおすすめします。自分の頭痛をそこで終わらせてくれる片頭痛専用の薬(タイプによって5種類あります)や、頭痛の予防薬を持っておくこと。

 

片頭痛の薬

コチラが片頭痛の薬です。

それをちゃんと具合が悪いときに使っておくと、どんどん「閾値」が上がって頭痛の頻度も下がり、多少のことでは頭痛が起きない人に戻っていけます。

起きてしまう頭痛を力技でねじ伏せるのではなく、「そもそもあまり頭痛の起きない人になる」、「起きてしまっても適切な薬でスマートに治療する」と方法を選ぶのが、結果的に見ると、一番ラクで薬の量が最も少なくなります。

 

片頭痛の有病率

女性は、人生を通して頭痛と付き合うことが多く、30~40代の女性に多い。頭痛外来に一度でも行っておくとメリットは大きいと思います。思春期、月経が周期的に来る時期、授乳期、更年期……それぞれの節目節目で片頭痛が悪化しやすくなります。

最初は、一ヶ月おきぐらいに通院しなくてはならないかもしれませんが、通っているうちに頭痛の頻度が激減するため、しばらくすると、数カ月おき、半年おきの通院になることがほとんどです。


Q.ガマンすればなんとかなる、と思ってしまいますが、そうではないのですね。

そうです。
実は、片頭痛の1つの発作は、長いときには2~3日にわたって起きることが多いです。

最初に「薬を飲まなくてもがまんできるかな」と変にがまんするんじゃなくて、先手必勝で片頭痛に効く薬を飲むと、その2~3日ぶんの痛みがなくなり、「頭痛で動けなかった」「会社を休んでしまった」などの機会損失が減ります。「そのうち治るから放置」じゃなくて、「薬で早く治して、頭痛でダメになる日を減らす」ほうがスマートです。

 

薬を飲むことで合併症もなくすことができる

それに、片頭痛はめまいや吐き気、首や体の痛み、目の痛みや匂い過敏、不眠など、いろいろな合併症を連れてきますが、きちんと片頭痛に効く薬を飲めば、それらも一緒になくなります。

めまいや嘔吐があるから耳鼻科に、嘔気や胃部不快感が続くから胃腸科へ、首や肩が痛いから整形外科に、匂いや音に過敏になってしまって寝られないから心療内科へ……と、いろいろな科にかかった後に、頭痛外来に来て全て解決してスッキリしてしまう方もたくさんいらっしゃいます。

「肩こりもち」とか、「自律神経の問題」、「更年期」と言われても何の解決にもなりません。女性は片頭痛を解決すると、片頭痛に伴う諸症状も改善するため、随分ラクになることが多いものです

頭痛を起こしにくくなるカラダを作るというのが、頭痛外来に通院する目的になります。たまに適切な薬をチョイスするだけで、頻発化が抑えられます。痛み止めだけで対応していると、痛み止めが切れると痛くなる、という「薬物乱用頭痛」という悪循環になってしまいます。良くなって行くことを「脱感作」と呼びます。

動けなくなるくらいの頭痛が来る人、月に10回以上頭痛が起きる人だけでなく、頭痛とともに肩こりや、めまい、吐き気が頻繁に起きる人は、頭痛外来を受診してみましょう。

 

大切なのは「いつか治る」じゃなくて、早く良くすること

さまざまな手段で調べても何かの異常値も出てこない、脳を調べても異常がない、つらいのは自分だけ、じゃあ私ががまんすればいい。と考えてしまう人が非常に多いのですが、早く治して日常生活や仕事に戻ったほうがずっといい。
少し古いデータではありますが、頭痛による経済損失も計算されていて実に2880億円にものぼると言われています。

 


【まとめ】

まさにこの「ガマンすればいつかは治る」という思考回路の方はかなり多いのではないでしょうか。ムダな我慢はやめて、きちんと対処しましょう。
さて、次回は「コーヒーが頭痛に効く理由」「休日に頭痛になりやすい人」の二本立て。一見関係なさそうに見えるこのふたつは、意外と密接に絡みあっていることがあるのです。お楽しみに。(後藤香織)

次回はコチラ

 

 

監修:秋葉原駅クリニック 大和田潔先生

千代田区外神田佐久間町2−1大原ビル4F