朝、すっきり起きれてる?疲れをとる睡眠方法を医師が解説!
「朝、起きるのがツライ…!」と思いながらもなんとか起き上がり、疲れがたまった体で仕事や学校へ向かっている人も多いですよね。4月からの新年度に向けてしっかりと疲労を回復し、スムーズに起きられる質の高い睡眠を習慣にしたいところ。
そこで今回は、日本睡眠学会専門医であり「RESM 新東京 スリープメディカルケアクリニック」の院長を務める白濱龍太郎先生にうかがった「睡眠の質を上げる方法とその理由」についてご紹介していきます。
教えてくれるのは…

「RESM 新東京 スリープメディカルケアクリニック」 院長 白濱龍太郎先生
慶應義塾大学訪問准教授。東京医科歯科大学呼吸器内科や睡眠制御学快眠センター勤務等を経て、2013 年に睡眠・呼吸器科の専門医院を開設。翌年には経済産業省海外支援プログラムに参加し、インドネシア等の医師たちへ睡眠時無呼吸症候群の教育を行う。2018 年、ハーバード大学公衆衛生大学院の客員研究員として睡眠に関する先端の研究に従事。日本睡眠学会専門医、日本医師会認定産業医。
【1,000人調査】朝、すっきりと起きるためにしている対策は?
まずは、大正製薬株式会社が全国20代以上の男女1,000人を対象に「朝、すっきりと起きるためにどんな対策をしているか」について調査したものがこちら。
1位:部屋や寝具を快適な温度にする
2位:規則正しい生活を送る
3位:寝る直前に食べないなど、食事の時間に気を付ける
4位:部屋を快適な湿度にする
5位:(適度な)運動をする
上位5位の結果を見ると、多くの人が「睡眠環境の調整」や「生活習慣の改善」を重視していることがわかります。さらに、「寝る前の工夫」としてストレッチやマッサージを取り入れたり、スマホのブルーライトを避けたりする人や、ストレスをためずに解消する「メンタルの調整」も比較的多くの票を集めました。
【医師が解説】睡眠の質を上げる5つのポイント
日本睡眠学会専門医の白濱龍太郎先生によると、睡眠の質を上げるためには、環境づくり、生活習慣、食事などを組み合わせて対策することが重要だといいます。そこで次に、白濱先生に教えていただいた「睡眠の質を上げる方法と理由」を確認していきましょう。
1.日中の過ごし方、コレ意識して!
◆朝日を浴びる
朝日を浴びると光の刺激が脳に伝わり、セロトニンやナイアシン、トリプトファンといったホルモンの分泌が促され、体内時計がリセットされます。これによって日中は体が活動的になり、夜には自然な眠りを誘うようになります。日光は10時頃までに浴びると効果的。浴びる時間は夏場は5分程、それ以外の季節はゆったりと30分程がおすすめ。
◆湯船に浸かる
入浴は、寝る1~2時間前までに38~40℃のぬるま湯にゆったり10分程浸かると◎。体温を程よく上昇させることができ、寝つきが良くなります。適切なタイミングと時間で入浴することで、入眠後、最初の90分の眠りを深くしてくれる効果があります。
◆毎日運動習慣を作る
1日10分でも運動習慣を作ると適度な疲労感につながります。メラトニンの材料であるセロトニンの分泌が増えることで、夜にメラトニンがしっかりと分泌されて睡眠の質の向上につながるのでぜひ取り入れて。ウォーキングや踏み台昇降などがおすすめ。
2.睡眠の質向上に効果のある食べ物は…
◆朝は「納豆・ヨーグルト」「いわし・鮭」
夜になるとセロトニン→メラトニンに変わることで眠気を起こします。このメラトニンがしっかり分泌されるためには、セロトニンの材料となる必須アミノ酸のトリプトファンを豊富に含む食品を摂りたいもの。トリプトファンが豊富なのは、納豆やヨーグルトなどの発酵食品。また、幸せホルモンともいわれるセロトニンを合成するビタミンB6 を含むいわしや鮭なども積極的に食べましょう。
◆昼はバランスよく!丼ものより「定食」が◎
食後に過剰な眠気を催さないよう炭水化物はやや少なめに、血糖値が上がりにくいものを選んで。また、最初に野菜など食物繊維から食べることで血糖値の上昇を緩やかにしてくれます。タンパク質にはトリプトファンが含まれるため、良質な睡眠を促す効果大。丼ものよりも定食のほうが、野菜などの食物繊維やタンパク質もバランスよく摂れて、炭水化物(ごはん)の量も調整しやすいのでおすすめ。
◆夜は「お酢」「キムチ」「魚介類」
お酢に含まれる酢酸には胃腸での消化吸収を穏やかにする作用があり、血糖値の上昇を緩やかにしてくれます。唐辛子やキムチなどに含まれるカプサイシン(交感神経を刺激する作用があるため激辛ではないもの)も、寝る前に体温を上げてくれるのでおすすめ。キムチは睡眠の質の改善に役立つアミノ酸・GABAも含む優秀食材!
タコやイカなどの魚介類に多く含まれるタウリンは、深部体温を低下させる効果や睡眠を調整する因子(CHRM1、CHRM3)を増加させる効果があり、安定した睡眠へのサポートにぴったり。魚の皮や軟骨などに多く含まれるグリシンも、体温の調整や睡眠の質の向上に関与することが明らかになっています。魚を皮ごと食べれば、タウリンとグリシンの効果で神経疲労・肉体疲労の両方にアプローチできますね。
3.寝る前の水分補給のタイミング
人は寝ている間にコップ一杯の汗をかくと言われています。季節やコンディションによって差はありますが、寝る1時間~30分前くらいまでに200~250mlの水分補給がベスト。水分を摂ることで血栓予防ができ、また副交感神経が優位になり、心身ともにリラックスできます。
このとき、利尿作用がないものや白湯など冷たくないものが最適。また、いびきや無呼吸の原因になるので、寝る前の飲酒は避けたほうがベター。寝るまでに数時間ある夜ごはんなどのタイミングで適量飲むことは、リラックス効果が期待もできますよ。
4.快眠環境づくりのコツ
◆電気毛布は就寝2時間後にOFF
就寝してから約30分~1時間後に最初の深いノンレム睡眠が現れるため、電気毛布を使用して布団を温める場合は就寝後約2時間で切れるタイマー設定が良いでしょう。
◆靴下は履かない
血行を良くする作用のある繊維を使ったパジャマの着用や、放熱がきちんとされるために靴下を履かないことも睡眠を助ける要素となります。
5.朝、スムーズに起きるための対策
◆ヒートショックに注意!室温の理想は18~23℃
寒い朝に急に暖かい布団から出ると、血管が急激に縮小してしまうことでヒートショックなどを起こすリスク大。部屋の温度が18~23℃、湿度は40~60%になるよう、暖房のタイマーを設定しておきましょう。
◆睡眠中の照明は?
照明は好みにもよりますが、豆電球の常夜灯を点けておいたり、足元を照らすダウンライトのような光量がおすすめ。明るすぎると交感神経が有意になり、メラトニンの生成を抑えてしまうので避けて。
◆睡眠中に音楽をかけてもOK
音については、無音のほうが落ち着くという人は無音でも構いません。むしろ無音だといろいろな音が気になってしまうという場合は、心が落ち着く音楽をボリュームを絞って流すこともおすすめ。実際に、飛行機に乗っている時にジェット機のエンジン音が気にならないように機内BGMを導入する航空会社もありますよ。
白濱先生からのコメント
「睡眠不足は、日中の集中力や判断力の低下につながり、長期になると認知症のリスクが上がるとも言われています。また、睡眠は脳脊髄液の流れを促進することで脳の回復も担うため、睡眠と脳脊髄液には密接な関係があります。睡眠不足の状態だと脳脊髄液の流れが悪くなることで老廃物が蓄積しやすくなり、脳の機能や健康に悪影響を与える可能性もあります。
睡眠の質を向上させてすっきりと起きることを習慣にして、季節の変り目を健康に過ごしましょう」
「寝てるのに疲れがとれない…」「寝起きがツラい」など睡眠の悩みを抱えている方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。元気に過ごすためにも睡眠の質、上げていきましょ!