ストレス発散にお金を使いすぎる…。浪費癖や衝動買いをやめる方法はありますか?【精神科医監修】

ちょっとしたストレスがたまったら、コンビニのお菓子を買ってスッキリ。
大きめのストレスがたまったら、ふと目についた服や雑貨を買ってスッキリ…。
…でも、よく考えるといらないものばかり衝動買いして、そんなにいらないもので部屋が散らかり、さらにストレスの悪循環。

そんな「衝動買いグセ」にお悩みの方への解決法を、「おおざっぱに笑って健康に生きる」をモットーに活躍する「ラフドクター」、精神科医・産業医の井上智介先生にうかがいました。

散財癖を治したい。どうしたらいい?

Q.ストレスが溜まるとお金が使いたくなってしまい、ちょっとした服や雑貨など、特にものすごく必要なわけではないものを衝動買いしてしまい、散財する癖があります。その瞬間だけはスッキリした気になりますが、実際は満たされていないのでまた散財を繰り返してしまいます。この散財欲をコントロールするコツはありますか?

A.度を超えて生活に影響がなければ、ある程度気分転換になるレベルなら責めなくてもよし。ただ、やめたければ「完全にやめる」を選びましょう。

「依存症」という言葉を使うと少し強いので、今回は「ハマる行動」という言い方にしましょうか。

「ハマる行動」の中には、不思議なもので、すればするほどスッキリせずにイライラが増えるものがあります。アルコールやギャンブルでこの現象が起きている人が多いですね。今回の方の場合、「ストレス解消をするため」に散財をして、短期的にその瞬間だけはスッキリするのに、少し経つとまた不快な感情がたまってしまう。この「その瞬間だけはスッキリしてしまう」のが問題で、なかなか抜けられなくなってしまいます。

個人的には、ストレス発散の方法は人それぞれで、少しでもスッキリする感覚がある何かを持っているのは、そこまで悪いことではないと思っています。
僕は日々、多くの人と話す機会がありますが、「朝起きて会社に行って、帰ってきて、夜は時間つぶしにスマホでそこまで好きでもないゲームをして寝る」と、趣味も気分転換の方法も何も持っていない人というのは、案外多いものです。

そんな中で、さほど生活に問題ない範囲でスッキリできているなら、罪悪感をそこまで持つ必要はありません。もちろん「借金してしまう」「結婚資金に手を出してしまう」など、度を超えて生活に影響を及ぼしているならば明らかにやめたほうがいいですが、そこそこ貯金もしながらお給料の範囲でやれているなら、あまり自分を責めなくて大丈夫です。

ただ、もし「ずっと貯金ができないのもしんどい」など、「本当はやめたい」と思っている場合、「ハマる行動」から抜け出すには、ふたつの方法があります。

1.節制してうまく付き合っていく
2.完全にやめる

つい「完全にやめるのは難しいから、節制する」というコースを選びがちですが、実は「節制しながら付き合う」ほうが難易度が高いです。たとえばお酒なら、「ビール1缶までなら飲んでいい」と設定した場合、1缶を飲んだ時点で2缶めに手を伸ばすのを我慢するほうが相当つらいし、耐えなければいけない回数が山ほど増えます。それならば「お酒は一切飲まない」と決断したほうが、実はラクです。

実は今回の「散財グセ」の場合、お酒やギャンブルと違って抜け出すのがやっかいなのが、「ハマる行動を完全にやめる=まったくお金を使わずに過ごす」が、かなり難しいこと。生きていると何かしら、お金を使わなければいけないシーンが必ずやってくるはずです。

そのため、散財グセを本当にやめたい場合は、親など誰かの力を借りてコントロールするしかありません。本気で取り組むならば、たとえば「銀行のカードやクレジットカードなどお金にまつわるすべてを回収してもらい、現金で1日1000円だけ渡してもらう」「1週間分の生活費だけを振り込んでもらう」など、人の力を借りないと難しい分野です。試しに一旦自分で「使える上限金額を決める」などにトライしてみて、対処できたら良いのですが…。

そうして管理できるようになってきたら、一度どこかで「1日3000円を渡してもらうなど、上限をゆるめて、無駄遣いせずにコントロールできるか」を試して、自分が「ハマる行動」から抜け出せたかを見つける必要があります。本気で取り組みたいなら、ぜひこの手順を試してみてください。

お話をうかがったのは…

井上智介先生
精神科医&産業医
「おおざっぱに笑って健康に生きる」をモットーにした「ラフドクター」として活躍中。書籍多数。近著に『がんじがらめの心がラクになる「呪いの言葉」の処方箋』『この会社ムリと思いながら辞められないあなたへ』など。
構成/後藤香織