福祉実験ユニット「ヘラルボニー」のアートで、日常を彩る!
今、世界中で注目されている「SDGs」という言葉。これは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の頭文字を合わせたもので、世界193か国が貧困や環境問題の改善を2030年までに達成するために掲げた17の目標のこと。2020年からスタートした連載では、CanCamモデルのトラちゃんことトラウデン直美が「SDGs」について読者の皆さんと考える機会を作っています!
今回は、障害のある人の才能を世に放ち、福祉のイメージを刷新しているヘラルボニーの魅力をひもときます!
お話をうかがったのは…中塚美佑さん
「触れてはいけない」障害へのまなざしを変える
トラ ヘラルボニーさんのアートシャツを着ていると、ほめてもらえることがすごく多いんです。「素敵だね、どこの? 」と聞かれたときに生まれるコミュニケーションも楽しくて! アートをまとうことは、心の豊かさを育ててくれますね。
中塚 うれしいお言葉です。今では様々なアイテムを展開していますが、創業当初は工場やブランドさんを回って製造やコラボレーションをお願いしても、「障害のある人のアート作品を使ってプロダクトを生む」という前例がなく、苦戦しました。福祉領域には、触れてはいけない雰囲気が今以上にあったのかなと思います。
トラ 変化を感じた瞬間はありますか?
中塚 普段からハイブランドのお洋服をまとっているお客さまが「なんて素敵な商品なんだ! 」とネクタイを数本購入してくださって。老舗メーカーの「銀座田屋」さんと作らせていただいたシルク織りで1本3万円以上するのですが、ファッションやデザインに関心の高い方が認めてくださったことに手応えを感じました。
トラ 同情からではなく、あくまで「いいものだから、かっこいいから、買う」という世界観を目指しながら、「障害のある方々の活躍の場を広げたい」という思いも体現されている姿勢が素敵です。
中塚 これまで福祉施設で作られたものが、優れた技術でも安価で販売されてきた悔しさがあり、ハイブランドに劣らないものづくりは意識していますね。同時に、過剰生産を抑え、商品によっては卵殻や千羽鶴の折り紙のリサイクル素材を活用するなど、持続性も大事にできたらと色々と模索しています。
“ヘラルボニー”とは?
知的障害がある兄をもつ双子、松田崇弥氏・文登氏の両代表が2018年に設立。「異彩を、放て。」をミッションに、全国の主に知的な障害のある作家と契約を結び、作品をプロダクト化。展覧会や企業とのコラボなど、福祉領域を拡張する多様な事業を展開している。
■「高輪ゲートウェイ駅」建設現場の仮囲いをアート作品で埋め尽くし、街をミュージアムに!
掲出終了後はアップサイクルしてトートバッグに。
■110年以上の歴史を誇る陶磁器メーカーNIKKOとコラボしたテーブルウェア。
■制作風景一例。ライセンスフィーを障害のある作家に還元。
収益の一部を作家や福祉施設に還元 異彩と社会を持続的につなぐ
トラ 障害のある作家さんは納期に縛られる創作活動が難しいので、ライセンス契約にされているとか。ビジネスモデルとしても持続性を感じます。
中塚 はい、実際コロナ禍で創作が止まってしまっている方もいますね。今回トラウデンさんに着用いただいたブルーのシャツは、岩手の『るんびにい美術館』に在籍する工藤みどりさんの絵を使ったもの。マッキーで点描をくり返して表現しています。ご本人は、総理大臣官邸でのイベントにうかがったとき、首相に「お兄さん、私の傘買ってよ! 」と熱弁したという伝説も(笑)。
トラ チャーミングな方! スカーフと傘は『風のロンド』という作品名まで明るい気分になりますね。
中塚 高橋 南さんがクレヨンやクーピーでストロークした疾走感が魅力的。得意とするルーティンで創造性を発揮されている作家さんです。
出会いも会話も、暮らしの中で当たり前になる世の中へ
トラ 障害のある人とのコミュニケーションに戸惑う場面があるとするなら、大人になるにつれ接点が減ってしまうことが要因なのかなと。
中塚 私には自閉症の兄がいるのですが、兄がひとりで電車に乗ってヘラルボニーのポップアップを訪れた際に、スタッフが歓迎してくれて。一般の働く人と普通に会話できたことがすごくうれしかったみたいです。そういう自然と足を運んで楽しめる場が、例えば渋谷の真ん中にもできたらいいな…そんな未来を描きながら仕事をしています。
トラ たしかに日常で出会う機会が当たり前になると変わっていけそうです! どこまで触れていいのかわからないからそっとしておこう…と距離をとっていると孤立してしまうから、もっと交わり合っていける社会になったらいいな。
中塚 街で障害ゆえの癇癪やパニックに直面したときも、状況を自然に受け止められる空気感が育つといいなと。私たちも〝障害のある人のアート〟というカテゴライズがプラスの意味になって、分断が消えていく一助になれたらと思っています。
向き不向きは誰にでもある。できることに光を当てたい
「小中学生の頃は特別支援学級があって障害はもっと身近だったりしますよね。当時から向き不向きは誰にでもあって、みんなグラデーションの中で生きているんだと感じてきました。できないことへの支援も大切に、できることを伸ばせる社会をつくっていきたいですね(トラウデン直美)」
目指せ「SDGs」!トラちゃんの今月の一歩
■マイボトル生活、続けてます♡
今月号では、アクアクララさんのウォーターサーバーとマイボトル生活の魅力もご紹介! このボトル1本で、なんと500mlペットボトル24本分に相当。回収&再利用されるので、ゴミを大幅に削減できるのが素敵ですね。
■今月の1冊は…『ソーシャルアート 障害のある人とアートで社会を変える』
障害のある方、福祉施設スタッフの他、様々な職種の人たちが実践する「アート×福祉×コミュニティ×仕事」25の現場。創造的で多様な仕事づくりを学べます!