アートを通して伝える〝共創〟とは?トラウデン直美が「境界のない世界」を体感!【SDGs連載】

デジタルアートで「境界のない世界」を体感!

今、世界中で注目されている「SDGs」という言葉。これは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の頭文字を合わせたもので、世界193か国が貧困や環境問題の改善を2030年までに達成するために掲げた17の目標のこと。2020年からスタートした連載では、CanCamモデルのトラちゃんことトラウデン直美が「SDGs」について読者の皆さんと考える機会を作っています!

今回はSDGsを横断するテーマ「パートナーシップ」のヒントを探しに、チームラボ・工藤 岳さんのお話を伺いながら、デジタルアートで〝境界のない世界〟を体感してきました!(すでに開催は終了しています)

工藤 岳さん/集団的創造によって、アート、サイエンス、テクノロジー、そして自然界の交差点を模索する国際的な学際的集団『チームラボ』のメンバー。※『森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス』(台場)はすでに開催終了。
トラウデン直美/高校時代に環境問題に興味をもって以来、エシカルな生活を模索。『SDGs』にまつわる勉強や発信に力を入れ、情報番組コメンテーターとしても活躍。初のフォトブック『のらりとらり。』(小学館刊)が好評発売中。

人間も自然の一部になりながら美しい風景をつくっていける

トラ チームラボさんでは、制作過程でも作品でも「共創」を大事にされているとか?

工藤 僕らが手がけるアートはひとりでは完結できなくて。アーティスト、プログラマー、エンジニア、建築家、CGアニメーター、数学者など様々な分野のスペシャリストが影響し合いながらつくっています。

トラ こちらの空間にいる間、なんだかずっとふわふわしています! 自分と世界が混じり合うような、この感覚が共創なのかな? と思ったんです。

工藤 まさに、「ボーダレス」のコンセプトは、作品と作品、そして鑑賞者である人との境界線もないアート群。観るだけではなく作品の一部になれるように意識しています。物質世界の境界線を超えていくことができるのは、デジタルならでは。例えば、入り口から人が入ってきたことで出現した蝶が、1万㎡の空間をまたいで飛んでいく。ある場所では人が立つと花が咲き、触ると枯れて散っていく…といったように、ある程度離れていると何かが生まれてくるけれど、近くに寄りすぎてしまうと命を奪ってしまう。人間と自然の距離感や関係性を表現しています。

トラ 共生という意味も込められているのですか?

工藤 日本の自然の在り方から得ているインスピレーションは大きいです。古事記の時代から植樹の神様がいますし、神社でも必ず鎮守の森がつくられますよね。

トラ 東京だと明治神宮の森も人工林なんですよね。

工藤 そうなんですよ。だから日本に住む僕らが捉えている自然は、海外のワイルドネイチャーとは違って、実は人間が関わっているものが多い。それは悪いことではなくて、人間も自然の一部になりながら美しい風景をつくっていけるということではないかと。そういう意味では、棚田も山と川と海の中間点につくられていますよね。土地によっては1000年以上も自然の循環サイクルに入っていて、山の上部の人が自分のことだけ考えて閉じてしまうと、流れが止まって周囲の環境全体が死んでしまう。

トラ 人の営みがあるからこそ持続できるんですね!

ひとつの視点で見る遠近法が唯一の正解ではない

工藤 東アジアの古典絵画からヒントを得た作品もあります。それらには襖絵や屏風絵など、立ったり座ったり歩いたり、視点が動くことを前提とした空間芸術が多い。他方、西洋絵画は基本的には遠近法で、カメラのようなひとつの固定の視点です。3次元のものを紙や画面という2次元に落とす過程で、たまたま相性がよかったから遠近法を主に使っているけれど、唯一の正解ではないと思っていて。東アジアの古典絵画のような空間なら、みんなが同じ空間にいて、同じものを違う視点から見られるんです。多様性にもつながるかもしれませんね。

トラ 面白い! 自分ひとりを中心にして見る遠近法の世界は、立つ場所によって相手が間違っていると思ってしまう。だから対立したり、邪魔なものをどけようとしたり。でも、同じものを違う視点から見る世界なら、どこにいても調和できる対象を捉えられるんですね。主観だけではない他の見方があるとわかるというか。

トラ SDGsの領域でも、平和や環境など、アートが伝えられることはたくさんあると思います。

工藤 アートは〝問い〟であり、人の価値観を変えるもの。一方、デザインやロジックは〝答え〟。今の世の中で様々なあつれきが起きているのは、世界が「20世紀の正解」をそのまま21世紀にもってこようとしているからではないかと。

トラ ストンと腑に落ちました! SDGsがやろうとしていることって、最終的には人の価値観を変えないと実現できない。20世紀の大量生産・大量廃棄システムやイデオロギーのまま今の時代に当てはめようとして、ギクシャクしてしまっているんだなと感じます。

工藤 世代間ギャップも然りで、時代が違うとモノの見方や考え方、解決方法が違いますよね。3次元の問題を2次元では理解できないように、カオスを受け入れることでしか人間は進化できない。アートには正解は出せませんが、問いを投げかけることで色んな人たちが答えを返してくれます。それが大きな流れとなったとき、価値観や社会を変えていくと信じています。

デジタルの表現は多彩! 

■「重力にあらがう呼応する生命の森」では、触れることで色が変化。

■動き続ける光線が描く立体的な空間に没入できる「光の彫刻空間」。様々な角度から写真を撮ってみたくなる。

■無数のヴェネチアングラスランプで、数式を具現化した「呼応するランプの森」。人に反応して光の連鎖が始まる。

■起伏のある立体的な大空間で体を動かしながら学べる「運動の森」。

起伏のある立体的な大空間で体を動かしながら学べる「運動の森」。〝身体で世界をとらえ、世界を立体的に考える〟体験を通じて、脳の海馬を成長させ、空間認識能力がアップ! 鑑賞者が描いた様々な生きものがひとつの生態系を構成し、食物連鎖も観察できる。「世界とつながったお絵描き水族館」でトラちゃんが描いたタツノオトシゴは、上海の展覧会からネットの海を渡ってきたマグロと一緒に泳いでました♪

私たちは世界をどうにか自分の常識に当てはめて理解できると考えてしまうけれど、実際はどんな身近な人もカオス。それを楽しみながら、自分の中に多元的な見方や経験をもって人を理解していきたいな。

目指せ「SDGs」!トラちゃんの今月の一歩

デニムもサステイナブルに進化!

最近はリサイクル素材が増えていますが、今年のTGCではリサイクルデニムのセットアップを着てステージを歩きました♪ デニムはCO2排出量、水の使用量共に多い素材なので、こういう選択が増えるとうれしい!

今月の1冊は…『私はオオカミ─仲間と手をつなぎ、やりたいことをやり、なりたい自分になる』

女子サッカー界のレジェンドで、LGBTQの当事者でもあるワンバック元選手の全米ベストセラー。人生を応援してくれるような前向きな言葉に元気になれます! 

著:アビー・ワンバック/訳:寺尾 まち子/海と月社/¥1,540

今月のSDGsブランド「3.1 Phillip Lim」

〝長く着られるタイムレスなワードローブ〟をポリシーに掲げ、2005年に創設されたNY拠点のブランド。2022年春夏コレクションでは、6割を環境負荷の少ないサステイナブル素材に切り替え。業種の垣根を超えた協業での素材開発にも積極的に取り組む。

ブラウス¥79,200・靴¥30,800(3.1 Phillip Lim Japan<3.1 Phillip Lim>)、パンツ¥10,450(サスティナブル ケイスリー<ジーナ トリコ>)、ピアス¥38,500(エドストローム オフィス)
2022年CanCam6月号「トラウデン直美と考える 私たちと「SDGs」より」 撮影/須藤 敬一 スタイリスト/町野 泉美 ヘア&メイク/MAKI モデル/トラウデン直美(本誌専属) 撮影協力/柴崎 芙優 構成/佐藤久美子 WEB構成/坂元美月 ◆この特集で使用した商品はすべて、税込み価格です。