ダイエットしたい人が食事制限や運動の前に確認すべき「3つのポイント」|専門医が解説

ダイエットしたい人が確認すべき「3つのポイント」って?

痩せたい!と思ってダイエットしても、そう簡単に痩せられるものではないですよね。しかも、一生懸命痩せたのに、リバウンドするのはあっという間だったり…。

「食事制限や運動で痩せる」という、いわゆる「ダイエット」を始める前に、腸内環境を整え便秘を解消することが”痩せ体質”を作ることにつながるということをご存知ですか?

そこで今回は、ダイエット中の女性の多くが陥りやすい「便秘」について、都内で便秘外来(健美腸外来)を開設し、20年以上にわたって便秘診療をしている小林メディカルクリニック東京 小林暁子院長にお話を伺いました。

小林 暁子 先生 小林メディカルクリニック東京院長・医学博士
順天堂大学医学部卒業後、順天堂大学総合診療科を経て、2005 年にクリニックを開業。内科、皮膚科のほか、便秘外来や女性専門外来を併設し、全身の不調に対応する。なかでも便秘外来ではのべ 15万人以上の便秘患者の治療に携わり、高い実績を上げている。また、さまざまな業界とコラボし、美腸メニューを提供。テレビ出演、講演でも活躍中。『医者が教える最高の美肌術』(アスコム)、『免疫力を上げる健美腸ル ール ウイルスに負けない体をつくる』(講談社)、『女性の自律神経の乱れは「腸」で整える』(PHP研究所)など著書多数。


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食べるものだけでなく、自律神経の乱れからくる便秘にも注意!

「便秘」は、近年様々な研究が進み、肌や肥満といった見た目の問題に限らず、糖尿病や脂質異常症、免疫、認知機能といった全身の健康に影響を与えることが指摘されはじめています。便の排出を担う大腸は自律神経の影響を受けやすい器官です。緊張やストレスなどで自律神経のバランスが乱れて交感神経が活発になると、腸の働きが低下して便秘になりやすくなります。自律神経は、環境や気候、気温の変化にも敏感です。

自覚がなくとも、社会的な雰囲気や強い緊張を感じている人が周りに増えても交感神経は影響を受けるので、便秘になる方がでてくるそう。 便秘は天気や気温の影響も受けやすいので、季節の変わり目はもちろん、エアコンの温度調節などにも注意しましょう。特に暖かい日から急激に寒くなる日は「お腹が張る」、「急にお腹の調子が悪くなった」という患者さんが顕著に増えるそうです。

想像するだけでゾッ!”便秘”はゴミだらけのオフィス

便は、体に吸収されなかった老廃物です。体にとって不要となった老廃物は、尿や汗などを通じて体外に排出されますが、多くは大腸を通じて便として排出されます。この老廃物である便=ゴミが処理されずに体内に溜まり、腐っていってしまう状態が便秘です。
例えば、オフィスにゴミが捨てられずに溜まって腐ってしまい、悪臭を発する様子を想像してみてください。ゾッとしますよね。腸内細菌たちも、綺麗な環境で働きたいと思っているはずです。悪臭の立ち込めるゴミだらけのオフィスでは腸内細菌たちも可哀想。腸内細菌に、綺麗な職場を提供してあげて、 栄養のあるご飯をあげて、いい仲間を増やしてあげるのが、あなたの役目です。自分が「大腸の社長」 だという意識を持ってもらうように便秘外来では指導しています。

ゴミが溜まったオフィスを想像するだけでゾッとしますよね。環境が悪いと、便秘改善に効果を発揮する善玉菌が減り、便秘を招く悪玉菌が増えるのも想像できますよね。

便秘外来に来る患者さんは、お腹が張る、体がむくむ、体重が増えるといった見た目についての悩みが多く、特に若い女性にはその傾向が強いです。しかし、便秘は見た目だけの問題ではなく、全身の健康に悪影響を及ぼします。近年、腸内細菌を遺伝子レベルで研究できるようになった結果、便秘などによる腸内環境の乱れは、免疫力やアレルギーといった腸の機能に直結する領域に限らず、糖尿病や脂質異常症、さらには眼や脳機能に対する影響も指摘されています。実際に腸内環境が改善することで、血液の質が改善することや腸内細菌の代謝産物である短鎖脂肪酸の抗炎症作用などによって、様々な疾患が改善することが明らかにされてきています。
実際に患者さんの便秘の改善に取り組んだ結果、糖尿病や脂質異常症の数値が改善した、認知機能が高まった、肥満が良くなったといった例は数多く経験しています。患者さんの中には、糖尿病の主治医から「こんなに数値が改善していますが、何をやったのですか」と聞かれるといったことは20年前から数多くありました。腸内細菌の働きについては、まだ全貌がつかめていませんが、健康にとって非常に重要なものだということで、様々な疾患の専門医が関心を向けはじめています。

運動や食事制限の前に「腸内環境」で痩せ体質に

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便秘を改善するためにも、便秘にならないようにするためにも、お腹の中で毎日一生懸命働いてくれている腸内細菌を意識することが大切です。腸内細菌には、善玉菌と日和見菌、悪玉菌の3つがあり、それぞれがバランスを保ってすんでいますが、便秘の方の腸内細菌は、悪玉菌の比率が高まっています。悪玉菌が増えて腸内環境が悪化すると、腸の中で有害物質が発生し、それが腸壁から血液に取り込まれます。 すると、血液はドロドロと汚れた状態になり、それが全身に運ばれることになってしまいます。便秘になると肌が荒れたりするのも、このことが原因です。
便秘を改善するためにも、日頃から善玉菌の代表であるビフィズス菌が入ったヨーグルトを積極的に取り入れてみてください(ヨーグルトの中にはビフィズス菌が入っていないものも意外と多いのでチェックを)。実際に便秘気味の女性にビフィズス菌入りヨーグルトを食べてもらった結果、排便回数が大きく上昇しました。これは2週間続けて食べた結果ですので、まずは2週間チャレンジしてみて、自分のお腹に合うか確認してみるのがよいと思います。

 

乳児の頃は腸内細菌の大半がビフィズス菌ですが、大人と同じ食事を摂るようになると全体の1〜2 割程度に落ち着いていきます。その後、成年期を過ぎ老年期になるとビフィズス菌は一層少なくなります。老年期の方の10人中3人はビフィズス菌がまったくいない状態になってしまうそう。


また、極端なダイエットによって痩せている女性も、ビフィズス菌の量がかなり減少している人が多いそう。ダイエットしても痩せないという理由は、腸内環境が関係している可能性大!
食事制限や運動を始める前に腸内環境を整え、脂肪を燃焼するビタミンやミネラルなどの基本的な栄養素をしっかり吸収し、エネルギー代謝のスイッチが入りやすい”痩せ体質”を作ることが大切なんですね。

「痩せない!」と悩んでいる人が確認すべき3つのポイント

腸内環境を整え、便秘を解消することが”痩せ体質”を作ることにつながりますが、さらに痩せ体質を維持するためのポイントを3つご紹介します。

(1)ビフィズス菌を摂取する

ヨーグルトやサプリメントなどで、継続的にビフィズス菌を摂取することで、腸内がキレイな状態を保つようにしましょう。
※ヨーグルトの中には、ビフィズス菌が含まれていないものが意外と多いため、購入する際は要チェック!

(2)オリゴ糖や水溶性の食物繊維を摂取する

便秘を改善し、痩せ体質にしてくれる善玉菌を増やすためには、それらの菌のエサとなる食材を食べることが大切です。オリゴ糖や水溶性の食物繊維は、小腸では吸収されず、大腸まで届き、善玉菌を育ててくれます。
水溶性の食物繊維は、長芋やオクラ、なめこなどのネバネバ食材や、海藻、アボカドに多く含まれています。

(3)腸周りの筋肉を動かす運動をする

腸の周りにある腸腰筋を動かすことで、血流がよくなり、体が温まることで腸内の良い状態をキープすることができます。無理のない軽い運動をすることで、痩せ体質を維持することができます。


いかがでしたか?女性が美しくあるには、女性ホルモンも大事ですが、腸内のビフィズス菌が減らないようにすることも、美容と健康には大事なことがわかりました。ダイエットをしたけど思うように痩せられない、リバウンドしやすいという方は食事制限や運動の前に、食生活から見直してみてはいかがでしょうか。

構成/鬼石有紀