コロナ禍で増!「マスク頭痛」はなぜ起きる?シーン別頭痛の対処法も教えます

日本では、成人のうち約4割※1が頭痛に悩んでいるという調査結果があるそう。特に季節の変わり目は頭痛に悩まされるという方も多いのではないでしょうか。

頭痛は「体質だから」「すぐ治まるから」などといった「たかが頭痛」の考えはやめて、自分の症状に合った対処法や治療をすることが大切なんだとか。

今回は、頭痛の種類や対処法についてご紹介したいと思います。

※1 Sakai F, Igarashi H. Prevalence of migraine in Japan : a nationwide survey. Cephalalgia 1997; 17(1):15-22.

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頭痛の種類は大きく分けて3つ

頭痛は命に別状はない「一次性頭痛」と、命に関わる心配のある「二次性頭痛」に分けられます。二次性頭痛は、くも膜下出血、脳出血、髄膜炎などの頭痛の症状が出るもので、すぐに病院を受診する必要がありますが、一次性頭痛は、一般的に多くの人が悩まされている次の三つに分類されます。症状によって対処法や服用するお薬が異なりますので、チェックしておきましょう。

(1)片頭痛

症状:ズキンズキンという拍動性の痛み、吐き気、動作で悪化

原因:睡眠不足や寝過ぎ、光や大きな音などの刺激、月経周期に伴うもの

対処法:暗くて静かな部屋で安静にする

お薬:鎮痛剤、トリプタン製剤、 皮下注射、漢方薬「呉茱萸湯(ごしゅゆとう)」

(2)緊張型頭痛

症状:締め付けるような痛み、動作で改善

原因:⻑時間同じ姿勢 運動不足、肩こり、首こり

対処法:ストレッチや体操、体を温める

お薬:筋弛緩薬、漢方薬「葛根湯(かっこんとう)」

(3)三叉神経・自律神経性頭痛

症状:ズキッと針で刺すような痛み

原因:寒冷刺激による血流悪化、肩こり、水ぼうそうのウイルスが体の神経に潜んでいて、体力が落ちたときに悪さを起こす

対処法:規則正しい生活、体を温める

お薬:抗けいれん薬、漢方薬「五苓散(ごれいさん)」

その他、胃腸虚弱の方の頭痛には「桂枝人参湯(けいしにんじんとう)」、高血圧気味で肩こりやめまいを伴う頭痛には「釣藤散(ちょうとうさん)」といった漢方薬も処方されます。

自己判断でお薬を選ぶと、症状を悪化させる恐れもあります。市販薬が効かない場合や、効いても1カ月に6日以上薬を飲むような頭痛がある場合は、一度クリニックを受診して、自分に合うお薬を処方してもらうようにしましょう。

また、漢方薬はクリニックで処方してもらうものは、市販の漢方薬よりも成分量が多いという特徴があります。慢性的に頭痛がある方は、漢方薬もクリニックで処方してもらうことをおすすめします。

「天気痛」「マスク頭痛」って知ってる?

続いて、季節や気候の変化に伴う「天気痛」、最近増えている「マスク頭痛」など、頭痛の対処法をシーン別でご紹介していきたいと思います。

教えてくれたのは…
らいむらクリニック院長 來村 昌紀(らいむら まさき) 先生
医薬学博士、日本脳神経外科学会脳神経外科専門医、国立病院機構認定臨床研修指導医、日本頭痛学会頭痛専門医・指導医、国際頭痛学会認定、Headache Master、日本東洋医学会 漢方専門医、千葉大学臨床教授

①お酒を飲んだ後や二日酔いの頭痛

お酒を飲んだ後の頭痛はアルコール誘発頭痛という分類になります。この中にさらに二つの分類があり、即時型アルコール誘発頭痛遅延型アルコール誘発頭痛で、この遅延型がいわゆる二日酔の頭痛になります。頭痛を起こすメカニズムとしては、飲酒による心拍数の増加や血流の増大、またお酒を飲むとアルデヒドという有害物質が発生するのですが、それが頭痛をおこす原因になるとも言われています。このアルデヒドを分解する酵素の量が人によって違うためお酒に強い人、弱い人がでてきます。また飲酒をすると利尿作用が強まるため脱水症になり頭痛がおこります。対処法としては基本は過度な飲酒はしない、あるいは脱水を防ぐため、お水などで水分をしっかりとることも重要です。また二日酔を効果にもつ五苓散や黄連解毒湯などの漢方薬もあり、市販でドラッグストアで買えるものもあります。
(※ドラッグストアで購入する場合は、ご自身の体質や症状にあっているか薬剤師や登録販売士に相談しましょう)

②気象の変化によってもたらされる「天気痛」

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季節の変わり目や、梅雨や台風シーズンなど、気象の変化によって引き起こされる体調不良は一般的に「気象病」と呼ばれています。
症状は、倦怠感や肩こり、めまい、頭痛、関節痛など。その中でも痛みを伴うものを「天気痛」といいます。

「天気痛」の中で代表的なものは頭痛です。 天気の変化に伴う頭痛は、温度や湿度、気圧が大きく変化すると耳の奥 にある「内耳」と呼ばれる気圧センサーが作動し、自律神経が乱れて起こります。 この頭痛は、たいてい片頭痛を持っている人に多いのが特徴です。他に、冷えやむくみがある人、乗り物酔いしやすい人も、天気の影響を受けやすい傾向にあります。
ひどい人は、台風がはるか遠くで発生しても敏感に反応して頭痛が発症するケースもあります。千葉県に住んでいるのに沖縄県に台風が上陸しただけで頭痛を発症する人もいるそう!
天気痛の症状は人それぞれです。 そもそも動物は雨や嵐がくると巣穴にこもって外に出ませんよね。天気が回復するまでじっとしているのです。でも人間は 天候にかかわらず、傘をさしてカッパを着て仕事や学校に出掛けて活動をしなければいけません。そこに無理が生じているのです。
そこで、天気の変化とうまく付き合っていくために、行動しなければいけない時は天気予報を確認したり、気圧予報のアプリなどを活用するのがよいでしょう。事前に天気情報が分かっていれば、薬を準備しておいたり、早寝早起きするなど計画にゆとりがもてます。頭痛で約束をキャンセルしたり、計画を諦めたりしなくてすむのです。 また、乗り物酔いしやすい人は、三半規管周辺の耳の血行をよくするため、耳のマッサージもおすすめです。

③コロナ禍で気をつけたい「マスク頭痛」

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新型コロナウイルスの感染対策としてマスクをする生活が日常となっていますが、このマスクが原因で頭痛を訴える人が男女ともに増えています。 マスクを着けておかなければいけない、というストレスや圧迫感、物理的な息苦しさを感じることで、緊張型頭痛を発症します。 また、⻑時間マスクのゴムを耳に掛けていることから、耳裏の神経を圧迫し、血流が悪くなり神経痛の頭痛を引き起こします。同じマスク頭痛でも対処法や治療が異なりますので、一度かかりつけ医に相談をしてみましょう。

④生理周期での頭痛

生理周期の頭痛はエストロゲンというホルモン量が変化することで起こります。月経時にのみ起こる純粋月経時頭痛と排卵時や月経前後にもおこる月経関連片頭痛があります。この頭痛はホルモンの影響で通常の片頭痛の特効薬であるトリプタン製剤や一般の解熱鎮痛薬が効きづらく治療抵抗性があることが特徴です。そのため、トリプタン製剤や解熱鎮痛薬、制吐薬などを同時に早めに飲む方法や頭痛を予防する予防薬も併用する場合もあります。また月経周期を整えたり、月経時の様々な不調を軽減する当帰芍薬散や桂枝茯苓丸、加味逍遙散などの漢方薬を症状に応じて処方する場合もあります。またナッツ類やうなぎなどに含まれるビタミンE、ひじきやわかめなどの海藻類やエビや貝、大豆に含まれるマグネシム、大豆に含まれるイソフラボンなどの植物性エストロゲンなどの食品をとる事も有効です。これら頭痛によいビタミンやミネラルを総合的に含んだ頭痛のサプリメントなども市販されています。またエストロゲンの変化がなくなる妊娠中や閉経後は、この頭痛は楽になることも特徴です。

⑤長時間パソコン作業をした後の頭痛

長時間の同じ姿勢でのパソコン作業は肩や首の血流が悪くなり、筋肉が緊張することでおこる緊張型頭痛の原因にもなります。また目の疲れである眼精疲労からくる頭痛の原因にもなります。対処法としては猫背などの姿勢にならないように気をつけたり、長時間作業して長く休む(例えば1時間作業して15分休む)よりは短時間の作業でこまめに休む(15分作業して5分休む)のが有効です。目の疲れを防止するブルーライトをカットするパソコン用の眼鏡を使用したり、パソコンの画面の明るさを少し暗めに設定するなども有効です。また作業の合間にできる簡単な頭痛予防の体操もあります。

⑥ストレスで起こる頭痛

最近は新型コロナウイルスの外出自粛などのストレスの影響で頭痛の患者さんが増えています。ストレスがかかると自律神経の中の交感神経の緊張がおこります。そのことで血管が収縮し、肩や首などの血流が悪くなることで緊張型頭痛が起こってきます。対処法としては自宅でもできるラジオ体操やストレッチ、人混みの少ない時間や場所でのウォーキングなども効果的です。最近では携帯電話やパソコンでもテレビ電話などもできますので、お友達やご家族との楽しい会話も効果的です。音楽を聴いたり、映画をみたり、好きな本を読んだりしてうまくストレスを解消することも大切です。それでもつらい場合には神経がたかぶる人に用いられる抑肝散などの漢方薬や筋肉を緩める筋弛緩薬などのお薬もあります。

⑦睡眠不足で起こる頭痛

睡眠不足や逆に寝過ぎでも頭痛が起こります。これは睡眠と関係している脳の中にある神経伝達物質のオレキシンという物質の乱れによって頭痛がおこると考えられています。そのため、基本的には睡眠を規則正しくする事が大切です。例えば休みの前の日に夜更かしをしたり、休みの日の朝に寝だめするなども頭痛の原因になります。昼寝は15分から30分くらいの短い時間は有効ですが、寝過ぎると反って頭痛を悪化させてしまいます。快適な睡眠を得るためにコーヒーや緑茶などのカフェインを含む飲料は午後3時くらいまでにしておく、寝る1時間くらい前はテレビやパソコン、携帯電話などを控え脳に入ってくる情報を抑えておくのも有効です。また寝室の明るさや温度なども寝るのに適した環境に整えておくことも大切です。

⑧音や光に反応して起こる頭痛

耳から入る音刺激、目から入る光刺激は脳を興奮させます。その刺激があまりに過渡になると脳が興奮し、疲れて頭痛が起こってきます。映画館で映画をみたり、コンサートで大きな音を聞いたり、天気の良い日に人混みにいったりしただけでも頭痛がおこる人もいます。対処法は耳から入る音や目から入る光を物理的にカットするのが有効です。たとえば耳栓やイヤホン(音を出さずに耳を覆うために)を使用する、防止やサングラスや少し色のついた眼鏡などを使用するのも有効です。それでも辛い場合には頭痛を予防するため脳の興奮を抑え、脳をリラックスさせるお薬を使用する場合もあります。

頭痛にもさまざまな種類がある

症状別に対処法が異なり、頭痛薬を無闇に服用してはいけないのはもちろん、お薬を服用し過ぎることで頭痛が起きているケースもあるようです。治療が難しくなる前に専門医を受診しましょう。
また、もしかしたら「マスク頭痛」かもと思った方は、マスクのゴムの長さや素材を見直したり、頭掛けマスクなど耳に掛けないマスクなどもあるので、工夫しながらマスク生活を送ってくださいね。

取材・文/鬼石有紀