大切な人との死別から立ち直るための心理テクニック

大切な人との死別から立ち直るための心理テクニック

人はいずれ必ず死に直面します。情報伝達が発達した昨今においては、メディアを通して誰かの死を目にしない日はありませんよね。でも、その相手が自分にとって特別な感情を持ったひとだったとしたら……。そこで今回は、キューブラー・ロスによる5段階モデル(死の受容モデル)を参考に「人の死のニュースに立ち会ったときに立ち直るためのステップ」をご紹介いたします。

■第1ステップ:否認と孤立

大切な人の死の事実に衝撃を受け、それを頭では理解しようとするものの、感情的にその事実を否認(逃避)しているステップがここに当たります。「間違った情報かもしれない」というような反論を心の中でするものの、それが否定しきれない事実であることは実は分かっている……。周囲は、その事実にもとづいて進んでいくため、そうした情報から距離を取り、自分を孤立させようとします。

■第2ステップ:怒り

大切な人が死んでしまったという事実は認識できたとして、でも「どうして悪いことをしていない人がこんな結果になるのか」というような怒りにとらわれるのが、このステップ。場合によっては、他の嫌いな人に対して「もっと悪いことをしている人が選ばれなかったのだろうか」と、どこか皮肉めいたことを考えることも。その根底にはやはり「なぜ、あの人が……」という、死に選ばれたことへの強い批判があります。

■第3ステップ:取り引き

仮に信仰心がなくても神仏にすがって、死の結果を無かったことにして欲しいと願うのがこのステップ。死んでしまったことは頭ではわかるものの、もう少し待ってほしいという気持ちに支配されます。何とか、死を回避することができないか、模索し取り引きをしてあがいてしまいます。初めは「死を遠ざけてほしい」という願いが「何かをするからあと少しだけ」という方向へ、取り引きの条件が自分に不都合なほうに変わることも。

■第4ステップ:抑うつ

「これだけ願ってもダメなんだ」「この世に奇跡はないんだ」と、祈っても死という事実の回避ができないことを悟るステップ。絶望に打ちひしがれ、憂うつな気分になってしまいます。頭で分かっていた死が、感情的にも腑に落ちて納得できるようになります。神仏を否定的な目で見てしまう場合もあり、心にぽっかりと穴が開いたような気持ちに支配されることも。

■第5ステップ:受容

それまで大切な人の死の事実を拒絶し、なんとか否定しようとしていたとしても、いつか命がついえることは自然な流れなのだという気持ちになります。自分の中で生命観や人生哲学のようなものを形成し、自分自身もその中の一部として位置づけることもあります。人の人生の終わりを静かに見つめることができるようになり受容し、心の中に平穏が訪れます。

キューブラー・ロスによる5段階モデル(死の受容モデル)は、本来自分自身の死に相対した時にどんな心持ちで克服するかを説明したものです。しかし、自分にとって大切な誰かの死に直面した時にも喪失感を乗り越える上で応用できる部分も少なくないと思います。自分がどのステップにあるのか、次はどう進むかに注目してみて下さい。どうしようもないこと、理不尽なことを受け入れていくためにはステップを踏むことが必要です。すぐに受容できなくても、時間をかけて少しずつ痛みを克服していくことで納得できるようになるのです。(脇田尚揮)

脇田尚揮
認定心理士。Ameba公式No.1占い師として雑誌やTVなどに取り上げられ、テレビ東京「なないろ日和」にてレギュラーコーナー担当。また、自身が監修したアプリ 「マル見え心理テスト」はTBS 「王様のブランチ」 などでも紹介され、120万DL。著書『生まれた日はすべてを知っている。』(河出 書房新社)。