管理栄養士に聞いた、免疫力もダイエット力も上げる食べ方のコツ
新型ウィルスの影響で、いつもよりさらに健康が気になる昨今。
うがい・手洗い、マスクのつけ方などを意識していて対策していても、体づくりで非常に重要なことをうっかり忘れていませんか?
健康も美容も、すべての基本となるのは「日々の食事」です。
ここがおそろかであっては、どんな対策をしても効果が薄くなってしまう……ということもあり得ます。
そこで、きちんと健康で美しい体を作るために重要な「食事」のコツを、管理栄養士の篠原絵里佳さんにうかがいました。
【前提】糖質オフしすぎはもうやめて、賢くきちんと栄養を摂ろう
「糖質を摂りすぎると太ってしまう」ということが強く刷り込まれているあまり、うっかり「糖質ゼロ」な食事をしていませんか?
でも、糖質は体にとって悪者ではありません。
「糖質」と「たんぱく質」をきちんと摂ることで、健康で美しい体が作られていきます。
【1】悪者扱いされがちだけど…そもそも「糖質」って何?
◆糖質のもっとも重要な役割
ダイエットでは悪者扱いされる糖質ですが、「活動のエネルギー」「生命維持のためのエネルギー」となる、非常に重要な栄養素です。
脳や赤血球などは、糖質しかエネルギーとして使うことはできません。
もちろん「摂りすぎ」はよく言われているように脂肪となって蓄積されるのですが、「摂らなすぎ」も健康上のリスクになり得ます。
◆糖質と腸内環境の関係性
美容面でも健康面でも「美腸」がフィーチャーされますが、この腸内環境においても糖質は非常に重要。
腸内環境は「いかに善玉菌を増やすか」がポイントですが、糖質はこの善玉菌のえさとなり、悪玉菌から出る有害物質(肌荒れの原因)を分解してくれます。
【2】過剰な糖質制限のリスク
過剰な糖質制限をしてしまうと、主に下記のようなリスクがあります。
◆本来体を作るべきたんぱく質が、エネルギーとして使われてしまう
よく知られているように、たんぱく質は体を作るモト。しかし、糖質制限によりエネルギーが不足していると、体を作る本来の働きを後回しにして、体はたんぱく質をエネルギー源とします。つまり、肉や魚などからたんぱく質を十分に摂っているつもりでも、糖質が不足していると「たんぱく質不足」になってしまいます。
過剰な糖質制限によってたんぱく質がエネルギーとして使われてしまうと、下記のようなことが起きます。
・体を作ることができなくなる
血液、骨、筋肉、臓器、皮膚……すべてはたんぱく質が作ってくれているため、貧血、筋肉量の低下や、美容面では肌荒れやしわ・たるみなどが起きやすくなります。
・体の機能を調整する物質を作ることができなくなる
ホルモンや酵素、免疫抗体なども作られにくくなり、さらに風邪や感染症にかかりやすくなるなど、悲しいこと尽くめ(特に感染症は今とても気になりますよね)。
つまり、いくらその他の予防を頑張っていても「糖質・たんぱく質が足りない食生活」をしていては非常にもったいないのです。しっかりと栄養を摂り、強い体を作りましょう。
・神経伝達物質を作ることができなくなる
GABAやセロトニン、アドレナリンなどが作られなくなり、メンタルに影響。イライラしたり集中力が低下したり、疲れやすくなったり……さらに抑うつぎみになったり、夜ぐっすり眠れないなどの影響が出ます。
・太りやすくなる
糖質をゼロにしてダイエットする……どころか、逆に太りやすくなる危険性があります。糖質制限によりエネルギーが不足すると、筋肉を分解してエネルギーに変えてしまうため、筋肉量が減り、基礎代謝が低下します。さらに体脂肪を燃やすのにも糖質が必要となるため、燃えにくい体に……。あらゆる面から「糖質ゼロ」はとても危険。
「糖質ゼロ」が長期化すると、さらに肝機能や腎機能にもダメージを及ぼすなど、体への影響は甚大。
「糖質をとにかく制限すればいい」ではなく「糖質と賢く付き合っていく」ことが非常に重要です。
【3】糖質の種類を知って、賢く使い分けよう
そもそも「糖質」と言ってもさまざまなものがあります。
◆すぐ吸収され、すぐエネルギーになる「単糖類」「二糖類」
糖が単体で存在している「単糖類」や、2個結合した「二糖類」と呼ばれるものは、吸収が早く、血糖値が急上昇しやすい傾向にあります。この「血糖値が急上昇する糖質」は、運動前などすぐにエネルギーが必要なときなどにはいいものの、肥満や生活習慣病の原因となるものなので要注意。
たとえば「果物」や「砂糖」「水飴」など。お菓子やジュースなどもここに含まれます。
ただし「フルーツはたくさん食べたほうがいい」と言われるのは、食物繊維やビタミン・ミネラルが含まれているから。何か甘いものが食べたいときはフルーツを選ぶのが賢い選択です。
◆吸収が比較的穏やかな「多糖類」や「オリゴ糖」「糖アルコール」
一方で、糖が数万〜数百万個結合した「多糖類」などは、単糖類に比べると吸収が比較的穏やかです。
白米や白パン、パスタ、いも類などがここに含まれます。
さらに、精製度が低い玄米や雑穀、ライ麦パンを選ぶと、吸収はさらにゆるやかになるのでおすすめ。
また、「オリゴ糖」は吸収されにくく腸内細菌のえさとなり、キシリトールなどの「糖アルコール」は、単糖類ではあるもののこちらも吸収されにくく血糖値にあまり影響を与えないので、このあたりの吸収されにくい糖質を選んでみると◎。
【4】「糖質+たんぱく質+食物繊維」を心がける
ここまで「糖質なし」のリスクを説明してきましたが、かといって「糖質のみ」もみなさんご存じのようにNGです。
ついつい「朝ごはんはパンとコーヒー、昼ごはんはうどん」など、私たちの生活は糖質のみになってしまうことがありますが、これは血糖値が急上昇してしまうエネルギーバランスが悪い食事。
糖質と賢く付き合うには「食物繊維」と「たんぱく質」をプラスすることが重要です。
◆食物繊維5分前ルール
野菜や海藻、きのこ類、豆などの食物繊維はできるだけ「5分前」に。
よく「野菜から食べるといい」と言われますが、これは食物繊維を摂ることで、糖質が胃から腸に流入するのがゆっくりになり、腸からの糖の吸収がゆるやかになるから。つまり「血糖値の上昇をゆるやかにすることができる」のです。
食物繊維を摂取してから5分以上経過することで効果が得られると言われているため、できれば糖質を食べる5分前に食物繊維を食べるようにしましょう。
とはいえ忙しいランチタイムでそれはなかなか難しい……という場合は、食物繊維が入った飲み物がコンビニなどでも売られているので、それをオフィスで飲んでからランチに出かける、などでもOK。
◆超重要!「たんぱく質」を絶対にプラスして
たんぱく質をきちんと摂ることで、ここまで説明してきた「体を作る」はもちろんですが、下記のようないいことがあります。
・「糖質・たんぱく質・脂質」の栄養素がすべてそろうと使われやすい体に。エネルギーバランスが整い、栄養不足や糖質の過剰摂取を回避し、糖質の燃焼効率が上がります。
・たんぱく質が豊富な食品(肉・魚・卵・大豆製品・乳製品)は、糖質を燃やすビタミン・ミネラルも豊富。
・たんぱく質が代謝に必要な酵素を作ってくれる
などなど。
◆ランチでも工夫してたんぱく質を
外食時には「うどん!」「ラーメン!」ではなく、できるだけ肉や魚を食べられる定食ものを選ぶのがベター。
さらにコンビニランチでもこんな工夫ができます。
・おにぎりを選ぶなら、鮭やツナマヨ、明太子、納豆巻きなどたんぱく質が入っているものを選ぶ
・サラダなら、野菜だけでなく、卵入りやツナ入りのものを選ぶ
・カップ麺・ラーメンを食べるなら、卵やチャーシュー、野菜をトッピング
・うどんを食べるなら、卵や唐揚げでたんぱく質を、わかめやきのこで食物繊維をプラス
日々のちょっとした心がけで、栄養はプラスできます。
きちんと栄養バランスを考えた食事を摂り、しっかり眠る。そんな基本こそ今改めて考えていきたいもの。是非明日から気にかけてみてくださいね。(後藤香織)
管理栄養士 篠原絵里佳さん
総合病院、腎臓・内科クリニックを経て独立。長年の臨床経験とアンチエイジング(抗加齢)医学の活動を通して、体の中から健康と美を作る食生活を見出し、分かりやすく発信することを得意とする。
https://ericashinohara.com
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