「職場に仕事ができない人がいて困る」人が取るべき行動
何かとストレスが多い「仕事」のシーン。
みんながみんな「仕事ができる人」ならうまく回るけれど、人にはそれぞれ得意不得意があるもの。何度言っても覚えられない人がいたり、同じミスを繰り返したり……。「なんであの人はあんなに仕事ができないんだろう」と思ってしまう人と一緒に仕事をしなければいけない、となると、結構なストレスですよね。
今回は読者の方から寄せられたお悩み「職場に仕事ができない人がいるときの対処法」について、「精神看護学」や「ポジティブ心理学」を専門とし、「セルフ・コンパッション」を研究テーマとしている東京医療保健大学の秋山美紀先生にうかがいました。
【今回のテーマ】職場に仕事ができない人がいて困っています。どうすればいいですか?
Q.職場にどうしても仕事ができない人がいて、すごく困っています。悪い人ではないのですが、何度注意をしても同じことでミスをしてイライラしてしまいます。
頼み方を変えればいいのか、諦めたほうがいいのか……どう対応すればいいのでしょうか?
A.「失敗しても責められずに安全な環境であること」を実感させてあげてください。
いつもおつかれさまです。
何度注意しても同じことでミスをしてしまう……という人がいると、注意するほうはイライラしてしまいますよね。それは自然な感情で、悪いことではありません。
ただ、ここで気を付けたいのは、そのイライラが相手に伝わってしまうと、相手がどうしても萎縮してしまう、ということ。萎縮すると、その人は「次は失敗しちゃいけない」と自分にプレッシャーをかけてしまい、さらに次も失敗する……という悪循環になってしまうことがあります。
まず、相手がまた失敗したのを見て、感情にまかせて口調が荒くなったり表情に出してしまう前に「ああ、私、今、イライラしているな」と自分の感情に気づいてください。「イライラしている……イライラ……そう、だって注意してもこの人はまた同じミスするんだもの……私、イライラしているなぁ……」と、ほんの1~2秒の時間でも構いません。ふと立ち止まってください。この1~2秒が大事です。
そして一度立ち止まったら「さて、私はこの人の成長のために、どういう対応をすべきか?」と考えてください。
このように、まるで神様が天から下界の人間を見ているように、自分自身が自分を冷静に見ることを「メタ認知」といいます。
イライラしたときに、感情にまかせてイヤな顔をしたり、嫌みを言うことは、とても楽なことです。
でも、それは果たしてその人の成長につながることでしょうか。
あなたが目指すのは「その人を責めることで自分のストレスを解消すること」ではなく「その人にきちんと仕事を覚えてもらうこと」だと思います。
悪い人ではない、とのことですから、きっとその人もミスをしたときに「あぁ、またやってしまった」と自分を責めていることでしょう。時間がなければ、その瞬間はいったん一度仕事を肩代わりして切り抜け、時間があるときに、コーヒーでも差しだしてその人の気持ちを聞いてみましょう。冷静に「どんなところが難しいと感じるか」「次に同じことをするときに、具体的にどうしたらいいと思うか」本人の想いを聞いてあげましょう。そしてあなたが「その人の成長を願っている」こと、「そのために役に立ちたい」ことを話し、そのために「自分はあなたに何ができるか」「どんな風に関わったらよいか」を聞いてみましょう。
たとえ自分が失敗しても、責められずに安全な環境であること。周りのみんなが自分を応援してくれること。それをその人が実感できれば、次は前よりはちょっぴり自信を持って仕事ができるはずです。
東京医療保健大学 医療保健学部 准教授 秋山美紀先生
保健学博士、看護師、保健師
精神看護学・ポジティブ心理学を専門とし、「セルフ・コンパッション」を研究テーマとしている。