上司への相談や質問って難しすぎ!「なんでも聞いて」「それくらい自分で考えて」を同時に言う人の真意はコレ【職場の悩み相談室】

誰でも、新社会人になって働き始めた頃は分からないことばかり。質問したいけれど上司はいつも忙しそうで、声をかけるタイミングがつかめない……。特に新人・若手のみなさん、そんな悩みを抱えていませんか?

「仕事には報連相(報告・連絡・相談)が大事だ」という言葉はよく聞きます。でも学校では報連相など必要なかったし、職場でやり方を教えてくれるわけでもないし。どうしたらいいのか分かりませんよね。

報連相

そこで今回は、職場の悩みのエキスパートに「報連相のコツ」について詳しく伺いました。上司に質問・相談をするのに最適なタイミングや、好感度の高い声のかけ方を教えていただきましょう!

▼お悩み:「質問や報連相のタイミングが分からない」

■新人Gさんの悩み

「いわゆる報連相のタイミングが分からず困っています。上司に『なんでも聞いて』と言われたので分からないことができるたびに質問や相談をしていたのですが、上司が少し迷惑そうな顔をすることが増え、最近は『それくらい自分で考えて』と言われるようになりました。

いつも忙しそうなので、話しかけたら迷惑なのかもしれません。そう思って上司が暇そうになるまでタイミングを待っていたら、今度は『自分から動かない人』と言われてしまいました。いったいどうしたら良いのでしょうか?」

Gさんの悩みは「報連相がうまくいかない」というもの。仕事に関する質問も、報連相の中の「相談」の一種です。

同じような経験を持つ新人・若手の方はかなり多いのではないでしょうか? 忙しい職場では、上司や先輩に声を掛けるタイミングを図りづらいですよね。

今回、解決策を教えてくださるのは、株式会社リクルートマネジメントソリューションズの桑原正義さん。新人・若手の育成ノウハウ研究の第一人者で、企業向けのセミナーも多数開催。研究者というフラットな立場から新人サイドと上司サイド、両方の悩みに日々直接触れている、まさに職場の悩み解決のエキスパートです。

■桑原正義
1992年、人事測定研究所(現リクルートマネジメントソリューションズ)入社。営業、商品開発、マーケティングマネジャー、コンサルタント職を経て、現在は「新人・若手の育成」をメインテーマとした企業向けトレーニング・研修の開発に携わる。育成ノウハウの体系化に取り組むと同時に、上司・育成担当者向けのセミナーを広く開催。時代に即した新たな「育成のアタリマエ」の普及に尽力している。https://www.recruit-ms.co.jp

桑原さんいわく、「質問や報連相をスムーズに行うためには、タイミングと声のかけ方が大事です」とのこと。質問を含む報連相のコツを教えていただきましょう!

「なんでも聞いて」「それくらい自分で考えて」はどちらも本音


仕事の基本として有名な「報告・連絡・相談」略して報連相。報連相がうまくいくと、仕事の効率が格段にアップします。

でも働き始めたばかりの時期は、なかなかスムーズにいきません。とくに気になるのがGさんと同じパターン。「なんでも聞いて」と言われたのに、いざ質問すると「それくらい自分で考えて」と返される。

新人の我々としては「結局どっちなの?」と戸惑ってしまいますよね。

桑原さんに伺うと、「じつはどちらも本音なんですよ」とのこと。いったいどういうことなのでしょうか?

◆報連相で上司が期待していること

桑原さんいわく、上司が期待しているのは「いったん自分なりに考えてみて、それでも分からないことがあれば質問しに来てほしい」ということなのだとか。

上司の仕事は、部署全体を把握して業務をスムーズに回すことです。だから必要なことはなんでも報告・連絡・相談してほしい、と心から思っています。とくに経験の少ない新人・若手は分からないことだらけですから、そのまま進めて大きなミスをするよりは早めに相談してほしいと考えているのです。

ただし、新人・若手の自主性を育てることも上司の仕事の一つです。自主性とは自分で考えて動ける力のこと。なので「いったん自分で考えてほしい」という気持ちも、上司の中にあります。

つまり上司が期待しているのは、いったん自分なりに「こうかな?」と考えた上で、「本当にこれで合っているのか知りたい」「ここから先は分からないのでアドバイスが欲しい」という形で質問にくること。

何も考えないうちに「分からないので教えてください」と丸投げするのがNGなのですね。

 

◆「考えて出した答え」なら間違っていても大丈夫

まだ仕事のことをよく知らないのに、正しい答えを出せる自信なんてない……と思うかもしれません。でも、それでOKなのだと桑原さんは語ります。

桑原さん「自分なりに考えて『こう思います』という答えを用意した。この、用意したという事実が大事です。答え自体は間違っていても大丈夫。仕事に慣れていない新人が、何のヒントもなく正解にたどり着くのは難しいですよね。それは上司も分かっていますから、答えに自信がなくても安心してください」

答えが合っているかどうかよりも、「いったん自分で考える」という行動や自主性そのものの方が重要視されるのですね。

報連相は上司のためのアクションでもある


忙しい上司や先輩に声をかけるタイミングも、新人・若手が悩みがちな問題です。「忙しそうだな」「今声をかけたら迷惑かな」と、常に気を遣って声をかけられない。そんなあなたに、桑原さんから大きなヒントをいただきました。

桑原さん「声をかけづらいと感じている場合は、報連相の目的を切り替えてみましょう。新人さんの場合、『自分のために上司の時間を使うなんて申し訳ない』と遠慮してしまいがちです。でも、報連相って本来は自分のためだけじゃなく、上司のためのアクションでもあるんですよ」

部下が何をしているのか把握するのも上司の仕事。報連相がなくて困るのは部下だけでなく、上司も同じなのです。「報連相は仕事の一環」「報連相は上司のためでもある」と考えて、遠慮せず堂々と声をかけましょう!

……でも実際、質問をすると迷惑そうな顔をされてしまう、というGさんの例もあります。どうすれば上司にスムーズに受け入れてもらえるのでしょうか?

ベストなタイミングと声のかけ方を、桑原さんに教えていただきました!

報連相に最適な3つのタイミング


質問をはじめとした報連相を行うのに最適なのは、次の3つのタイミングです。

相談
(c)Shutterstock.com

◆タイミング1.指示を出されたとき

最初に指示を出されたときは、質問をする絶好のチャンスです。その時点で分からないことは全部質問しておきましょう。

たとえば「企画書をつくる」という仕事を指示されたけれど、やったことがなくて手順がさっぱり分からないという場合。こうしたときには、素直に「経験がなく手順が分からないので、何か参考になるものはありませんか?」と伝えます。

「分からないので教えてください」と丸投げするのは、基本的にはNGです。が、指示を出されたタイミングでは大丈夫です。本当に右も左も分からない状態のときは、最初にそう伝えるのが正解。上司も業務をスムーズに進めたいので、ざっくりと「この手順でやってね」と説明してくれるか、「この先輩に聞いて」といった指示をもらえるはずです。

 

桑原さん「とくに大事なのがアウトプットイメージの確認です。何を期待されているかという点について『きっとこうだろう』と思い込みで解釈したり、曖昧なままで進めたりすると、できあがったものが上司のイメージとズレてしまう可能性があります。これを避けるためには、最初の段階で分からないことをどんどん聞いてしまった方が良いんです。

『ちゃんと指示が伝わったな』という安心感は、上司にとって教える手間を上回る大きなメリットです。スムーズに業務を進めるために積極的に動ける部下は、好感度も上がります」

 

指示を出された段階で、「進め方」と「上司の考えている完成形」がなるべく具体的にイメージできるよう、しっかり質問しておきましょう。

◆タイミング2.作業が30%くらい進んだとき

上司の考える完成形のイメージを把握したつもりでも、できあがったものを持っていったら「全然違うよ」と言われてしまうことがあります。せっかく終わらせた仕事がやり直しになることも……。

こうした事態を防ぐためには、仕事が30%くらい進んだ状態で一度上司に見せましょう。目的は、「この方向性で合っているか」を確認することです。

桑原さん「新人のときは上司を気遣うあまり『こんな中途半端な状態で持っていったら怒られるのではないか』と思い、確認を後回しにしてしまいがちです。完成してから持っていこう、せめて70%くらいは出来上がってから……と考える方が多いのですが、じつは30%くらいの段階で方向性を確認するのが理想的です。ちょうどこのくらいの時点で一度チェックしたいと思っている上司も、案外多いんですよ」

成果物が30%くらいできたら、一度上司に確認しにいきましょう。その段階なら、上司としても「この方向性でOK」「ここをもう少し変えた方がいい」といった指示を出しやすいのです。何もない状態では漠然とした指示になりがちですが、30%でもできているものがあると完成形のイメージもより掴みやすくなります。

もし中途半端なものを見せるのが不安な場合は、指示を受けたタイミングで「このくらいできた時点で一度見て頂いてもいいですか?」と、先手を打って確認しておけば安心です。

 

◆タイミング3.「考えても分からないこと」が発生したとき

作業中に分からないことが出てきて、自分なりに考えたけれどやっぱり分からない、という場合。なんとなく「こうかな」と思うけれど、合っているのか自信が持てない場合。

そんなときも、上司に確認をとりましょう。

あやふやなまま仕事を進めてしまって、もし間違っていたら大変です。最後の最後にやり直しになってしまいますし、部署全体のスケジュールが遅れてしまうこともあります。それを回避するためにも、分からないことが出てきた段階で確認するのが一番です。確認は自分のためではなく、良い仕事をするため、相手のためでもあることを思い出して、進んでやっていきましょう。

頻繁に質問すると迷惑かなと思う場合は、いくつか質問を溜めておいてまとめて訊くという手があります。でも「この答えが分からないと次へ進めない」という状況のときは、やはりその場で確認することがおすすめです。

でも実際に迷惑そうな顔をされたら質問する勇気がしぼんでしまいそうですよね。上司に質問や相談を持ちかけるときは、気分良く受け入れてもらうために「声のかけ方」にひと工夫してみましょう。

上司が気分よく答えてくれる「声のかけ方」の簡単なコツ


桑原さんいわく、声のかけ方には2つのポイントがあります。

◆ポイント1.相手の都合を最初に聞く

声をかける際に、「今お時間よろしいですか?」と、まず最初に相手の都合を確認しましょう。忙しくて手が離せない仕事や集中したい作業をしている場合には、上司は「15分後でもいい?」などと答えることができます。

上司も、自分のペースを邪魔されることがなければ気分よく対応しやすいものです。仕事が一段落したら、「さっきは悪かったね、今ならいいよ」と向こうから声をかけてくれるかもしれません。それならばこちらからも安心して質問できますね。

◆ポイント2.概要を先に伝える

詳しい状況を説明し始める前に、簡単に「今声をかけた目的」を伝えましょう。

たとえば「企画書の件で質問がありますが、今お時間よろしいですか?」と先に目的を伝えて、「いいよ」と返ってきたところで「具体的には……」と状況を話し始めます。

冒頭で何を相談したいのかを示すことで、内容がぐっと伝わりやすくなります。説明にも無駄な時間がかかりませんし、上司にとっても「この質問なら数分で解決できそうだな」と目安時間を計算しやすいため、喜ばれます。

いきなり詳しい状況説明から話し始めてしまうと、結論にたどり着くまで相手は何の話をされているのか分かりません。

「これをやって、あれをやって、今はこうで……」ととりとめなく続く話は、結局何を伝えたいのかちんぷんかんぷんに聞こえます。いつ終わるのかも分かりませんし、やっと質問を口にしたときには「よく分からなかったから、もう一回説明してくれる?」ということにもなりかねません。

話し始める前に「お時間よろしいですか?」と相手の都合を聞くこと。
話の最初に「何を質問したいのか」「何を相談したいのか」を簡単に伝えること。

この2つがスムーズな報連相のポイントです。これは上司に対するときだけでなく、仕事上のどんな会話においても使えるコツなので、どんどん活用していきましょう!

まとめ:報連相するときはタイミングと声のかけ方を意識する


報連相は、上司のためでもある行為。「申し訳ない」と遠慮することはありません。より良い成果を出すことは上司にとってもあなたにとっても優先順位の高い、共通の目的です。仕事の一環として堂々と声をかけましょう。

その際には「3つのタイミング」と「2つの声のかけ方」を意識すると、上司も気持ちよく対応ができます。お互いのため、またスムーズに業務を進めるため、ぜひ取り入れてみてくださいね。

(取材・文/豊島オリカ)

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