働く女性にとって悩みの種になりがちな、セクハラ問題。
セクハラは本来あってはならないものですが、とは言えまだまだ「社会から完全になくなった」とは言えません。
職場や飲みの席で不快な思いをする女性は今もたくさん存在しますし、誰にも言えずにひとりで抱え込んでしまっている人もいるでしょう。
そこでCanCam.jpでは、「性」にまつわるさまざまなアイテムを扱う株式会社TENGA(以下、TENGA社)で働く、ふたりの女性にインタビュー。おふたりが働く中で培ったセクハラ対策のコツを教えていただきます。
今回は、セクハラ被害を予防する「スキを見せないためのコツ」について伺っていきましょう。
▼セクハラには「真顔で淡々と返すべし」と言われる理由
前回に引き続きお話を聞かせてくださったのは、株式会社TENGAの広報を務める西野芙美さん、工藤まおりさん(※取材当時)のおふたりです。
(※工藤さんは現在退職されています。)
広報として「性」にまつわる商品をPRするのが仕事のおふたり。セクハラする側の心理について、ご自身の経験に基づきこう語ります。
西野芙美さん(以下、西野さん):お客様向けの展示会やSNSでのセクハラ経験を経て思うのは、セクハラをする人というのは無意識に「言いやすい相手」を選んでいるということです。
CanCam.jp編集部(以下、編集部):「言いやすい相手」とは具体的にどんな人でしょうか?
西野さん:たとえば無表情の女性より、笑顔で気配りする女性のほうがターゲットになりやすいです。また、恥ずかしがってもじもじしてしまう女性も狙われやすいですね。
「俺のことを受け入れてくれそうだ」とか「反撃しなさそうだ」というイメージの女性を無意識に選別しているんだろうなと感じます。
工藤まおりさん(以下、工藤さん):たぶん恥ずかしがっている女性を見るのが好きなんですよね。
西野さん:そう、恥ずかしがると相手を喜ばせてしまうことが多いです。
だから私の場合は、何か言われたら真顔で「わー、恥ずかしいー」って棒読みしたあと、「……っていう反応がほしかったんですよね?」って言っちゃったりします。そういう反応はつまらないらしくて、それ以上は何も言ってこなくなります。
だから基本的には、セクハラには真顔で淡々と返すのが効果的だと思います。
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恥ずかしがるそぶりを見せず、真顔で淡々と対応するのがセクハラ対策には有効。
……でも恥ずかしがらないほうが良いとわかってはいても、顔に出てしまうこともありますよね。
「恥ずかしさが顔に出やすい」
「どうしても赤面してしまう」
「変なことを言われたらどぎまぎしてしまう」
そんなふうに悩んでいる女性も多いはず。その場合はどうしたら良いのでしょうか?
▼今日から実践!簡単な「スキを見せない3つの工夫」
真顔で淡々と対応する……というのが難しくても、大丈夫。他の方法でもセクハラ対策はできます。
おふたりは、「そもそも性的対象として見られないために、スキを見せないコツがある」と語ります。そのコツとは、身だしなみ、メイク、姿勢や話し方、といった身近なことなのだとか。
西野さん:ナンパ師は靴が汚れている女の子に声をかける、っていう話が昔からありますよね。向こうの勝手なイメージではありますが、身だしなみにスキがあると「イケそう」「落としやすい」と思う人がいるのは事実です。
だから「つけこむスキを見せない」というのも、セクハラを回避するひとつの大きなポイントだと思います。
編集部:スキを見せない身だしなみとして、実際に工夫されていることはありますか?
西野さん:すごく細かいことですが、ブラジャーのストラップやシルエットが見えないような服を着るとか、ストッキングが破けてしまったらすぐ履き替えるといったことですね。
工藤さん:ジャケットを着てきちんと感を出すのもおすすめです。
西野さん:セクハラする側は、こういう些細なことから無意識に「言いやすい相手かどうか」を感じ取っています。メイクも同じで、スキのあるメイクとないメイクを場面によって使い分けるとよいですよ。
編集部:ちなみに、スキのないメイクで心がけていることは?
工藤さん:私は強めのメイクを意識します。
西野さん:百貨店のメイクコーナーにいるBAさんを参考に、アイラインを気持ち濃いめに引いたり、口紅の色をちょっとはっきりさせてみたり、少しキリッとしたメイクをするとよいでしょう。
編集部:他にもスキを見せない工夫はありますか?
工藤さん:あとは姿勢を正したり、ハキハキしゃべるのも良いですね。性的対象として見られたくない相手と会話するときは、背筋をピシッと伸ばして、はい、はい、とハキハキ受け答えします。座敷での飲み会なら正座しちゃうのもいいです。
飲み会で酔ってゆらゆらしたり、ゆっくり喋ったりすると、どうしてもスキがあるように見えてしまいます。心配なときは「飲まない」という選択肢も視野に入れるといいですね。
西野さん:よく「スキがあるほうがモテる」って言いますが、もちろん自分が好かれたいと思う相手にはスキを見せていくのもいいと思うんです。
でも「この人には性的対象として見られたくないな」と思ったら、スキを見せない工夫をするのがおすすめです。どういう自分を見せたいのか考えて、相手によって使い分けるのがいいと思います。
▼「そもそもなぜ恥ずかしいの?」と自問自答するのも一手
セクハラ対策に有効な手立てとして、おふたりからもうひとつアドバイスをいただきました。
西野さん:セクハラを受けて恥ずかしがってしまうということは、当たり前ですが自分の中でセクシュアルな話題=恥ずかしい、と感じているということですよね。だから逆に、「なんで私はこれを恥ずかしいと思うんだっけ?」とたまに自分に問いかけてみるのもよいかと思います。
編集部:なぜ恥ずかしいと思うのか、ですか。言われてみれば考えたこともないかもしれません。
西野さん:きっとそういう女性が大多数ですよね。
もちろん「恥ずかしい」と感じるのは悪いことじゃないし、それが顔に出てしまうのも全然悪いことじゃないです。ただ、もしそれで困るシーンがあるのなら、「自分はなんでこれを恥ずかしいと思うんだっけ?」と一度自分に問いかけてみるのもいいんじゃないかと思います。
恥ずかしいというイメージがあるから、もじもじしてしまう。もう条件反射でもじもじしてしまうという状態なら、改めて一度考えてみることで変わるかもしれません。
工藤さん:私は、女性同士でもっと気軽にセクシュアルな話をできればいいなと思うんです。セックスの話やマスターベーションの話をもっと「普通のことなんだよね」という感覚で話せるようになれば、セクハラの相談もしやすくなるかもしれませんし。
編集部:たしかに、誰かに相談したいけどできないと悩む人は多いですよね。
西野さん:百貨店でTENGA社商品のポップアップストアをひらくと、女性のお客様からのお悩み相談をたくさん受けるんです。「子どもを産んでから感じ方が変わってしまった」とか「セックスレスで悩んでいる」とか、そうしたお悩みをスタッフに相談される方が多くて、性の悩みは一般的に思われているよりもたくさんの人が抱えているんじゃないかと感じます。
もちろん、話したくないのに無理に話す必要はありません。ただ、信頼できる友達と性の話をちょこっとしてみることで、「セクシュアルな話題は恥ずかしい」という自分の中の意識が変わっていく可能性はあります。
話す内容は、情報交換でも悩み相談でもよいと思います。
自分の中の意識が変われば、表情や態度も変わっていきます。それが結果的にセクハラ対策に繋がっていくことは充分あり得ますよ。
無理に変える必要はないけれど、「性的なことは生理現象で、当たり前のことなんだ」と感じることができるようになれば、状況が良い方向へ変わっていくかもしれません。
▼スキを見せないための3つの工夫・まとめ
では、情報をまとめてみましょう。
●スキを見せない「身だしなみ」
ジャケットを着るなど、きちんと感を出す。下着のストラップやシルエットが見えないように気をつける。ストッキングが破れたらすぐ履き替える、など。
●スキを見せない「メイク」
キリッとした強めのメイクをする。強めのアイライン、濃いめの口紅など。
●スキを見せない「姿勢や話し方」
背筋をピシッと伸ばして、ハキハキと受け答えする、など。
相手によって、スキを自分でコントロールするよう工夫するのがおすすめです。
また余裕があれば「そもそもなぜ恥ずかしいと思うのか?」と自問自答したり、信頼できる女友達と普段から「性」にまつわる情報交換や悩み相談を少しずつしてみることで、そうした話題への苦手意識が減っていく可能性があります。もちろん、無理のない範囲で大丈夫です。
ときには、「どうして被害者側がこんなに頑張らなきゃいけないの?」と感じることもあるかもしれません。でも、自衛できれば自分自身が楽になるはず。
できそうなことから取り入れて、セクハラを上手に回避していきましょう。
次回は、セクハラを上手にかわす「相手の期待と違う反応をとるコツ」について伺います。
■取材協力 株式会社TENGA
※内容はすべて2019年3月7日(木)当時の情報です。
(取材・文/豊島オリカ)