頼りになるのは「ゴルフおじさん」【がんばらないWワーク女子・千絵②】

【ゆとり以上バリキャリ未満の女たち】第8弾「がんばらないWワーク」Vol.2


「ゆとり以上バリキャリ未満」を生きる女子のルポルタージュ連載の第7弾がスタート!

今回の主人公は、28歳の千絵。千絵の長所はおじさんウケがすこぶるいいこと。保険の外交員をやっても、ゴルフに行っても、そつなく接して、近すぎず離れすぎずの距離感を上手に保つ。短所は理想が高いことと飽きやすいこと。だから彼氏ができにくく長続きしない。こんな千絵が幸せになれる場所はどこに?

>Vol.1「2年目で会社辞めました」を読む

●中田千絵(28歳)人材紹介会社勤務

1990年 千葉県出身、中野区在住(1人暮らし)
短大在学中からイベントコンパニオンやモデルのアルバイトを始める。卒業後、生命保険会社に就職し1年半で退社。現在の会社(人材紹介会社)は2年め。
似ているタレント:山本彩(NMB48)
理想のタイプ:大谷翔平
パートナー:なし
手取り月収:25万円

 

「がんばらないWワーク」vol.2【頼りになるのは「ゴルフおじさん」】

■ゴルフおじさんとの楽しい旅行


千絵が1年半働いた生保を辞めたいと上司に言ったとき、上司に引き止められたのは想定内だった。同時に本社の人事部に手紙を書いて、退職の気持ちを伝えた。

 

「丁寧めな退職願みたいな書面です。あ、テンプレをそのまま真似ただけですけどね。それがよかったのか、上司もしぶしぶ承諾してくれて、2ヶ月後にはめでたく退社。さてどうしようかな。ま、とにかく遊ぼう。それからコンパニオンの仕事を増やそう。あとゴルフももっと上達して、ゴルフ旅行に誘ってもらえるようにがんばらなくちゃ」

 

就職してからの1年半で、千絵は貯金を300万円増やしていた。食事代も家賃もかからない実家暮らしだったということは大きいし、服やバッグに大金を使うこともない。でもそれだけじゃ、ここまで貯まらなかっただろう。千絵には、遊ぶお金をすべて出してくれる存在、「ゴルフおじさん」と「ご飯おじさん」がいた。

 

ゴルフは短大に入った頃始めて、コースに出るようになったのは20歳頃から。それからは週1ペースでコースに出ている。スコアは100前後。小柄でパワーもないのでビッグショットはないが、荒れることなく安定して飛ばせる。そして千絵が好きなのは、男4女4で行くゴルフ旅行。

 

「生保に勤めていたときは、軽井沢や沖縄、辞めてからはグアムやハワイ、北海道……。誘ってくれるゴルフおじさんたちの予定に合わせて休める女子は、私をはじめコンパニオンやモデルが多いんです。その中でも、だいたい私がいちばん年下。で、ゴルフのスコアは真ん中くらい。」

 

「何が楽しいって、体育会系の合宿みたいに、ひたすらゴルフができること。けっこう真剣勝負です。早寝早起きで健康的な生活だし、そういえば買い物さえもあまりしなかったな。もちろん、旅費・宿泊費・食費、ぜんぶ男性持ちです。小遣いがプラスされるかどうかは、そのときどき。私は純粋にゴルフができればいいから、そこはあんまり気にしてません」

 

このころ、千絵はよく合コンにも行っていたが、特定の彼はいなかった。もしいたら、この贅沢な遊びを心底楽しめなかっただろう。心のどこかで、「彼氏ができるまでの期間限定の楽しみ」と決めていた。

 

■べテランさんと呼ばないで

ゴルフおじさんとの旅行は完全にプライベート。それに対して、登録制のゴルフコンパニオンは仕事として行っている。1回のゴルフコースに参加して1万円前後のギャラ。男性ばかりのラウンドだと華がないとき、ラウンド人数が足りないとき、ちょっと女の子と遊びたいとき、コンパニオン登録会社を通じて声がかかる。そのときスコア100くらいの千絵はちょうどいい存在らしい。ただ、仲間とのゴルフ旅行とは違って、クライアントであるゴルファーのスコアを上回らないように気を使うのも大事な仕事。

 

つい先日は、千絵が前半48の好スコアで回ったら、50叩いてしまったクライアント(50歳前後のおじさん)は明らかに機嫌を損ねた。なので、後半は千絵がわざと池ポチャするなど、気を遣わなくてはならなかった。ゴルフの後に食事も付き合うときはさらにギャラがプラスされるが、これは義務ではない。気乗りしないときは断ればいいだけだ。

 

保険の外交員を辞めてから現在の会社に就職するまでの約5年間、千絵はゴルフコンパニオンのほかに展示会やイベントのコンパニオンなどを仕事にしてきた。学生のときから数えたら8年になる千絵のコンパニオンキャリアは、大規模なイベントでは頼られることも多い。

 

携帯電話の新機種の展示会コンパニオンとなると、事前に新機種の勉強会や研修がある。千絵にとっても得意ジャンルだし、何年も続けてやっている仕事なので、がんばりたい気持ちもある。けど、仲間から「お姉さん」「先輩」と呼ばれることが増えたのは、やる気を削がれる。最悪な呼び名は「ベテランさん」だ。となると、千絵はまた思う。

「いやいや、勘弁して。そんなつもりないんですけど、私」

 

>次回へ続く

 

文/南 ゆかり
「CanCam」や「AneCan」、「Oggi」「cafeglobe」など、数々の女性誌やライフスタイル媒体、単行本などを手がけるエディター&ライター。20数年にわたり年間100人以上の女性と実際に会い、きめ細やかな取材を重ねてきた彼女が今注目しているのが、「ゆとり世代以上、ぎりぎりミレニアル世代の女性たち」。そんな彼女たちの生き方・価値観にフォーカスしたルポルタージュ。

 

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