【ゆとり以上バリキャリ未満の女たち】第7弾「転機の社会人留学」Vol.4
「ゆとり以上バリキャリ未満」を生きる女子のルポルタージュ連載の第7弾がスタート!
今回の主人公は、開発職として安定した仕事につきながら、32歳にしてアメリカへMBA留学を決めたエミリ。
「留学中には旅行で貯金を全部使い切ってもいい」そう決めたエミリの理由とは?
>Vol.1 1,000万使い切るほど旅したい【転機の社会人留学】
>Vol.2 短期留学で得られたもの、得られなかったもの【転機の社会人留学】
>Vol.3 今どき、専門分野だけじゃ生きていけない【転機の社会人留学】
●原エミリ(32歳)製薬会社勤務
1985年生まれ 大阪府出身 杉並区在住
大学の薬学部卒業後、大学院でバイオサイエンス研究を専攻。修士課程修了後、外資系製薬会社に入社。2年勤務して現在の会社に転職。現在5年目。研究開発職。
似ているタレント:松たか子
理想のタイプ:小泉孝太郎・進次郎
パートナー:あり(未婚)
手取り月収:33万円
「転機の社会人留学」Vol.4 仕事や他人に振り回されないためにやるべきこと
■彼抜きの旅行計画
エミリがボストンに留学して、4か月がたった。この冬のアメリカ東海岸の寒波は、歴史的な異常気象だった。もちろん、ボストンも豪雪に見舞われた。大寒波が過ぎ去って、ボストンでも桜の開花が待たれる3月、待ちに待ったスプリングブレイク(春休み)がやってきた。息つく間も寝る時間もままならない4ヶ月を過ごして、クラスメイトみんながようやくひと息つけるときだ。
エミリは1年前から姉と計画を立てていた、南米旅行に出発した。滞在予定は約1ヶ月だ。
「いちおう彼を誘ってみたけど、『お金もったいない』『仕事あるし』って。私とはまったく価値観が違うので、それはそれで。私としても、楽しんでくれる人といったほうが時間もお金も有意義に使えますから。だから、いつもひとりで行くか、姉を誘います。姉は、私がアメリカにいるうちに、自分もできるだけいろいろ行ってみたいというアクティブ派です。春休みなので、小学生の子供も連れて。そして姉の旦那さんはお留守番で。ボストンで姉と合流してから、ペルーのマチュ・ピチュ、ボリビアのウユニ湖、ブラジルのイグアスの滝、それからイースター島も。移動が多いので、地図とにらめっこしながら、安いルートを探して、手配して。食費やいろいろ入れて、予算は約100万円です」
数えきれないくらいのひとり旅をしてきたエミリにとっては、旅の手配は特技のひとつ。コストをぎりぎり抑えるところ(たとえば交通費)、ケチらず楽しむべきところ(食費!)をきっちり分け、荷物を小さくまとめる術も完璧だ。ちなみにエミリはキャリーケースではなくバックパック派。ひとり旅や移動の多い旅では、身軽に動けることが必須条件だ。貯金残高を見ながら、留学中にあと何回、旅行ができるかな、と早くも考えたりもする。これもまた、幸せな時間だ。
■事実婚か入籍か
留学も残りあと8か月。まだ3分の1を過ごしたところだが、少しずつ自分の考えが変わってきていることに、エミリは気づいていた。
「日本で復職したらまた、研究開発の仕事に戻ります。でもそれだけでなくて、職場環境をよくするとか、さまざまな人材をどうマネージメントしていくか、どう組織をつくっていくか、そこの重要性を感じています。仕事は一生続けますが、開発職との関わり方は少しずつ変わっていくんでしょうね。もちろん、子供ができても仕事は休まず続けます。私、きっと自分のやりたいことが次々あったからだと思うんですけど、ずっと子供が欲しいと思えませんでした。でも、ずっと一生子供がいらないのかというと、私自身もわかりません。だから、ここは彼に委ねてみようかと。彼には、私が留学から戻るまでに子供が欲しいか、考えておいてと伝えました。ただし私は仕事を続けたいから、家事や育児は協力し合わないといけないし、彼の時間も今のように自由ではなくなる。それでもいい? って。彼は、『わかった。考える』と言っていました。考えた結果、それでも彼が子供を欲しがったら結婚するし、仕事を辞めてほしいというならお別れするしかない。子供はもたないけど、このままふたりで暮らしていくなら、事実婚のままでもいい。私自身は念願の留学が実現したことで、やりたいことはだいたいやり遂げた気がして、どこか清々しい気持ちです」
エミリの南米旅行と同じころ、地球の裏側の日本では、政府や官僚の不正・改ざん・虚偽・忖度といった話題が毎日のニュースを賑わせていた。忖度しながら人付き合いをするのは、どこの家庭も職場も同じだ。けれど必要なのは、仕事や他人に自分が振り回されないこと。仕事をコントロールし判断するのは、あくまでも自分。もちろん、結婚も人生も。
エミリが広い世界を見て人と触れ合うのは、自分の判断が近視眼的になって道徳に反しないようチューニングするため。ネットで知ること以外に、見るべき世界はたくさんある。それを怠った瞬間から、目の前のことに振り回される。世の中とズレ始め、周囲に対する想像力が働かなくなる。人として、それがいちばん怖いことなんだとエミリは思う。
※この連載は今回で終了です。
>Vol.1 1,000万使い切るほど旅したい【転機の社会人留学】
>Vol.2 短期留学で得られたもの、得られなかったもの【転機の社会人留学】
>Vol.3 今どき、専門分野だけじゃ生きていけない【転機の社会人留学】
「CanCam」や「AneCan」、「Oggi」「cafeglobe」など、数々の女性誌やライフスタイル媒体、単行本などを手がけるエディター&ライター。20数年にわたり年間100人以上の女性と実際に会い、きめ細やかな取材を重ねてきた彼女が今注目しているのが、「ゆとり世代以上、ぎりぎりミレニアル世代の女性たち」。そんな彼女たちの生き方・価値観にフォーカスしたルポルタージュ。