インフルエンサーは職場で嫌われる【インスタ映えで幸せになれますか?】Vol.1

【ゆとり以上バリキャリ未満の女たち】インスタ映えで幸せになれますか?【第4弾・瑠璃】


「ゆとり以上バリキャリ未満」を生きる女子のルポルタージュ・大好評につき第4弾がスタート!

20代は仕事も恋愛も思い通りにならないことばかり。崖っぷち気分がピークに達した29歳、瑠璃が起こした肉食系行動は?

今どきの「女の幸せ」ってなんだろう? 世代を超えて共感必至の、女の人生ルポルタージュ。

第4弾は「瑠璃」のVol.1をお送りします。

 

女の人生ルポ4

 

小林瑠璃(仮名)33歳/フリーランス SNSコーディネーター

1984年神奈川県出身、東京都豊島区在住
職歴/大学院修士課程修了後、アルバイトをしながらフランス語学校に通う。フランスに留学し、1年間服飾学校で勉強して帰国。大学院博士課程に入り研究者として活動。そのかたわら、SNSビジネスを開始。現在フリーランスのSNSコーディネーターとして活動中。
似ているタレント/堀北真希
理想のタイプ/三浦翔平
パートナー/結婚3年目。子ども(1歳)。
手取り月収/10〜30万円 預金総額/約500万円

 

Vol.1   インフルエンサーは職場で嫌われる

大学で研究に明け暮れる日々


瑠璃には、二十歳のときからつけている日記がある。今ではずいぶん古くなったその大学ノートの最初のページは、こんな言葉で始まっている。

「いつかファッションビジネスで独立する」

起業するなら、会社名は『LAPIS-LAZULI(ラピスラジュリ)』と決めていた。ラピスラジュリとは、フランス語で瑠璃色のこと。自分の名前・瑠璃からとったものだ。起業しないとしても、たとえばペンネームやハンドルネーム『LAPIS-LAZULI』で活動をするのも、いいかもしれない。

 

夕日

 

原宿の占い師に「独立する手相」と言われてから、自分でもその憧れがより強くなったけれど、一方で、専攻してきた海外服飾史の研究にも後ろ髪を引かれる。それが後にどんな形で結実するのか、そのころはまだ想像できなかった。

それを探しに留学することを決めたのは、28歳のときだった。

「フランスでファッションを学びたいけれど、やりたいことと現実の着地点は見えないし、彼氏もいなくて(笑)、気持ちはなんとなくブルーでした。学校は勉強が難しくて、学位を取るのも必死で、帰ってからどうしようという不安も絶えることはなくて。いつも何かに焦っている感じでした。

でも、パリはやっぱり華やかで、パリコレの時期は同じ街でその空気を感じるだけで楽しかったんです。それを取材しに来ている記者を横目で見ては、あんな仕事、私にもできるかなと考えてみたり。この経験をブログにつづり始めたり。服はあまり買えませんでしたが、トレンドを直に見て感じて、自分なりに分析してみたりして。ブログを書いているときは、ファッションジャーナリスト気分でした。

1年後に帰国したころは、同級生は結婚し始めているし、依然として彼氏はできないし。かといって、一般企業に就職する気持ちも起きなくて、大学の研究室に戻りました。勉強に集中して、研究を重ねて、論文を書く。それをやってるときが、将来の不安を考えなくてすむ幸せな時間でした。私は書くことが好きなんだと、気づき始めたのです」

 

 

「インフルエンサー」がバレた


まじめな研究者とは別に、瑠璃にはもうひとつの顔があった。知り合い伝いに紹介された、マーケティング会社の女性向け商品モニターに参加する、インフルエンサーという「顔」だ。パリ留学時代に書いていた、ジャーナリスト気分のブログも評価されて、モニターレポートを書く仕事も増えてきた。根は研究者なので、まじめな文章になってしまうこともあるけれど、案外それが評価された。

 

パリの町並み

 

「大学の研究室で、白衣を着て眼鏡かけて仕事をした後、華やかな場に行くのは、心躍るものがありました。もちろん、インフルエンサー活動は研究室には内緒です。地道な研究者と、ミーハーなブログ上の自分。ふたりの瑠璃が存在しているみたいで、そのギャップも楽しかったのです。

新ショップのオープニングイベント、映画の試写会、新コスメのお試し会、ファッションショー…。彼氏探しのための合コンも、週2くらいは行っていました。それらをレポートするブログのアクセスも増えてきて、わずかながら収入になってきたころ…」

ふたりの自分の両立は、長く続かなかった。大学の研究室の先輩のひとりが、瑠璃のブログを発見してしまったのだ。ブログは、LAPIS-LAZULIという名前で書いていたのだが、写真で瑠璃だとバレてしまった。名前は出さないものの、顔はバッチリ出して活動していたから。その日から、瑠璃へのパワハラが始まった。

 

仕事風景

 

「研究できちんと業績を残しても、『遊んでる』と非難されたり、早く帰った日は電話がかかってきて『派手な遊びをしていないか』と探りを入れられたり。あるときは、ご丁寧にブログの内容の間違いをチクチク指摘してきたり。研究室の先輩方は、華やかなことをしていること自体が許せないみたいでした。

読モの撮影がある日、巻き髪とピンクのワンピースで出勤したときは、ずっと怪訝そうにチラチラ見られてました。でも、目は合わせないんです。すごく陰湿でしょう。それが1年くらい続いて、さすがにメンタルが疲れてしまって、辞表を出しました。というか、だんだん行かなくなって、ほぼボイコットみたいな終わり方でした」

そのとき、瑠璃29歳。長年務めた大学の研究室を辞めたはいいけど、新卒と並んで就職活動をするには、不利すぎる。いい論文を書いた自負はあるし、フランス語も不自由なく使える。かといって、それを武器にアパレルやファッション関連で働くのは、どうなんだろう。留学を経た今、その業界の将来性もちょっと疑問だったりする。そもそも、アパレルに就職して何をやれるのか、イメージができないし、今から会社の体制やルールに自分がなじめるのかも、怪しい。研究室でのパワハラ体験は、思いのほか根深い傷になっていた。

そんなとき、瑠璃は日記の1ページめを見返した。

— 「いつかファッションビジネスで独立する」 —

「今がそのときなのかもしれない」と思った。

 

 

【ゆとり以上バリキャリ未満の女たち】第4弾「インスタ映えで幸せになれますか?」
Vol.1 インフルエンサーは職場で嫌われる
Vol.2 幸せな結婚するなら「一番普通の男」がいい理由
Vol.3 半年ごとのプロポーズと失恋
Vol.4 「インスタ映え」だけじゃ幸せになれない、でも
文/南ゆかり
「CanCam」や「AneCan」、「Oggi」「cafeglobe」など、数々の女性誌やライフスタイル媒体、単行本などを手がけるエディター&ライター。20数年にわたり年間100人以上の女性と実際に会い、きめ細やかな取材を重ねてきた彼女が今注目しているのが、「ゆとり世代以上、ぎりぎりミレニアル世代の女性たち」。そんな彼女たちの生き方・価値観にフォーカスしたルポルタージュ。

 

【ゆとり以上バリキャリ未満の女たち】連載一覧

 

【あわせて読みたい】

※【ゆとり以上バリキャリ未満の女たち】第1弾「貯金1,500万の女子」

※【ゆとり以上バリキャリ未満の女たち】第2弾「キラキラOLのはずが飛び込み営業に」

※【ゆとり以上バリキャリ未満の女たち】第3弾「あみだくじで決まった配属」

※【ゆとり以上バリキャリ未満の女たち】第4弾「インスタ映えで幸せになれますか?」