ドラマみたいなキラキラ職場に憧れて入社。…のはずが、配属は埼玉営業所での汗だく飛び込み営業!
でも、そこでヘコむ桜子ではない。憧れの自分に近づくための決死の逆転劇が、ここから始まった。女の人生ルポルタージュ2人目、Vol.2!
Vol.1 キラキラOLのはずが、飛び込み営業マンに
Vol.2 仕事をしていてやってきた、人生でいちばんうれしい瞬間
Vol.3 頑張る女子が、男よりもマラソンにハマる理由
Vol.4 今どき「がむしゃら」はカッコ悪い。31歳が選んだ「カッコいい」働き方
南 桜子(仮名)31歳/IT企業 広報
1986年生まれ、東京都港区在住(ひとり暮らし)
職歴/音楽大学卒業後、IT企業に入社。約2年3か月間の営業職を経て、広報担当に。現在入社9年目。
似ているタレント/木村文乃
理想のタイプ/大沢たかお
Vol.2 仕事をしていてやってきた、人生でいちばんうれしい瞬間
運を貯める
ちょうど入社3年目にさしかかったある日、桜子は勤務地の埼玉の営業所から本社のMビルに向かっていた。営業のボスから面談に呼ばれたのだ。
「いよいよかな」
営業成績は全国でも上位には入っていた。営業トークも工夫してチームで協力し、会社の利益に貢献した。それが認められて表彰されたり、成績優秀者旅行に連れて行ってもらったりもした。それだけじゃない。会社の飲み会では雑用も含めてテキパキ働いて、印象を残した。本社に行きたい! という強い思いを込めながら…。
営業のボスとの面談内容を要約するとーー、
「今後会社を大きくしていくために、6月から新たに広報の担当を置く。それを、桜子さんに頼みたい。ゼロから仕事をつくっていくことになるが、君ならできる」
ということだった。
「私、人生でいちばんうれしかった。涙がこぼれそうになったけど、ガマンして、思いっきりの笑顔で、『ありがとうございます! 頑張ります!』って言いました。営業を頑張ってやってきて、よかった。本当に、よかった」
その日のことを思い出すと、今でも目頭がジーンと熱くなる。
同期は「本当によかったね!」と自分のことのように喜んでくれた。なぜなら、桜子がやってきた努力をずっと近くで見ていてくれたから。仕事だけでなく、雑用も周囲の人のお世話も、だれよりも一生懸命やっていたのは、桜子だった。
桜子が最近好きだったお仕事ドラマ『重版出来』で、いいことを言っていた。だれも見ていなくても、毎日小さないいことをして「運を貯める」と。奇跡なんてなくて、小さな積み重ねをすることで、運が開ける。桜子のおばあちゃんがよく言っていた「お天道さまは見てる」というのと、同じだ。
その週末、桜子は7センチと9センチのヒールのパンプスを買った。埼玉で営業をしていたときは、5センチだったけど、本社Mビルでキラキラ女子になるためには、もっと盛りたい。ちなみに、身長168センチの桜子がハイヒールを履くと、男性社員の身長を追い越してしまうこともある。いつしか、好みの男性は「背の高い人」と言うようになっていたが、その真意は「頼れる人」を求めているんじゃないかと、自分では分析している。
サトルと別れてからつきあった今の彼は、大学時代のアルバイト先で仲良くなった常連のお兄さん、松也(仮名)。身長183センチ。桜子さんがハイヒールを履いてちょうどいいバランスだ。マスコミの仕事をしていて、お互いに忙しさが同じくらい。見た目もアクティブさも趣味も好みもすべて一致。初めて結婚したい! と思える相手だった。