仕事をしていてやってきた、人生でいちばんうれしい瞬間【キラキラOLのはずが飛び込み営業に】Vol.2

広報レディ誕生


会社でたったひとりの広報担当。

それが、桜子の新しい肩書きだ。「大変でしょ」「ひとりでさびしくない?」と同期からは言われるし、営業しかやってこなかったキャリアを考えると、不安なことは山ほどある。けれど、ようやく念願かなった本社勤務。自分で乗り越え、自分で道を拓くしかない。まずは目の前の与えられたことを全力でやること。最初に任せられたのは、会社の認知度向上。会社がやっていることを「リリースにまとめてマスコミに配り、メディアに取り上げてもらうこと」だった。

 

「リリースってなんだろう? マスコミって、具体的に何をさすんだろう? こんな基本的なことからスタートです。PR会社に研修に行き、リリースなるものを作成しました。社外に向けて、伝えたい情報を完結にまとめたニュース速報みたいなものです。そして、マスコミ電話帳からピックアップした新聞・雑誌・ネットニュースにアポを取り、会いに行き、リリースを渡しつつ会社のPRをします。

どの方法が正しいのかはわからなかったから、とにかく片っ端からあたる作戦。営業のときから、ローラー作戦は得意なんです。

会ってもらえなかったとしても、リリースをメールして、機会があれば記事として取り上げてもらうよう、丁寧にアプローチしました。全部で200社以上は電話をしてアポを取り、プレゼンをしました」

 

その後も新サービスが出るたびに、リリースをつくり、マスコミ各社に売り込み、取材を受け、その数は異動1年目、2年目と、右肩上がりで増えていった。3年目以降はSNSの運用、採用プロジェクトの仕事も加わった。また、会社の株式上場に向けての準備が始まってからは、外部に発信するニュースも増えて、さらに忙しくなった。

それでも、片道2時間かけていた通勤時間は本社勤務で30分になったので、全然ツラくない。それどころか、ますます自分の中から力がわいてくるような、いくらでも働けるような気がしていた。目一杯働いて、夜9時、10時から飲みに行くなんていうのも、よくあること。夜遅くまでやっているジムを探して通ったりもしていた。

マスコミ勤務の彼・松也も同じで、寝る時間ももったいないくらい、仕事をして、そして遊んでいた。地方ロケに行って戻ってきたその足で桜子の家に会いに来ては、荷作りに自分の家に帰ってまた別のロケに出かけて行く。

松也も桜子もそれぞれ、東京で働くことの楽しさを24時間感じていた。

 

Vol.3「頑張る女子が、男よりもマラソンにハマる理由」につづく

 

文/南 ゆかり
「CanCam」や「AneCan」、「Oggi」「cafeglobe」など、数々の女性誌やライフスタイル媒体、単行本などを手がけるエディター&ライター。20数年にわたり年間100人以上の女性と実際に会い、きめ細やかな取材を重ねてきた彼女が今注目しているのが、「ゆとり世代以上、ぎりぎりミレニアル世代の女性たち」。そんな彼女たちの生き方・価値観にフォーカスしたルポルタージュ。

 

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