押切もえ最新刊は「大人も心打たれる」子どもの成長物語【独占インタビュー】

エッセイ、そして小説と、自身を反映させながら同世代の共感を呼ぶヒット作をつくってきた押切もえさん。

このたび発売された最新刊『わたしから わらうよ』は、なんと児童書。文章はもちろん、表紙や文中の挿絵もすべて手がけおり、話題になっています。

執筆のきっかけは、鳥取での素敵な人たちとの交流から。現地での出会い、そして本を通して伝えたかったことまで、今の思いを独占インタビュー!

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■押切もえ単行本インタビュー!子供のころは「人より人見知りでした」


CanCam編集部(以下、編集部) 最新刊『わたしから わらうよ』は、もえさん初の児童書。これまでの作品とは異なった本になりましたね。

押切もえさん(以下、もえ 小説を書き始めたころの自分は、ずいぶん気負っていたなと、今は思います。少しカッコつけてて、それを崩すのは意外と難しくて。それから数年たって、力を抜いて文章や絵と楽しく向き合えたのが、今回の作品です。『わたしから わらうよ』の主人公は小学3年生の女の子・桜(さくら)。同じくらいの子どもにも読んでほしいですが、桜を通して大人が気づくことも多いのです。もちろん、私自身も。

 

編集部 物語は、主人公・桜がおばあちゃんの家にひとりで滞在している間に起こったことが中心で、短い夏休みの間の成長や気づきがテーマになっています。主人公・桜の存在は、もえさんご自身をダブらせているのでしょうか?

 

もえ 主人公と私を完全にダブらせてはいませんが、私自身が小学生のときに過ごした山形のおばあちゃんの家の記憶は、随所に反映されています。親が先に帰ってさみしい思いをしたこと、手づくりの味噌やおかずが、家の味と違って感じたこと。おかずが茶色いものばっかりでイヤだったこと…。どれも、はっきりと覚えていて、本の中にも出てくる光景です。

もえ 3年生のころといえば、自我が芽生えてくるときで、人との関わり方も変わってくるとき。この多感なころの思いは、だれもが経験していることだと思います。私はほかの子よりも人見知りだったので、ひとつずつの人との関わりが自分にとってすごく大きな出来事でした。もっとたくさん交流をすればよかったな、と思うこともあるけれど、人見知りだったからこそ敏感に察知していたこともある。そのあたりの思いは、この本の根底に流れています。

 

■「好きなこと」を堂々と言い、やり続けることの大切さ


 

編集部 本のベースとなっている鳥取での出会いについて、思い出深いものを教えてください。

 

もえ 2014年から鳥取県の「愛サポート運動(※)」という障がい者支援活動に参加してきて、自分の趣味でもある絵を通じて一緒に作品をつくってきました。2015年にはバレンタインに発売するチョコのパッケージの絵をみんなで描いたりもしたんですよ。活動の中で、筋ジストロフィーという難病をもちながらコンピュータフラフィックで絵を描いている山本拓司さんという方に出会いました。拓治さんにインタビューさせていただいたとき、「好きなことをやれているから幸せ」と力強くおっしゃっていて。何を聞いてもネガティブなことや泣き言は一切言わず、前向きな生き方に私は励まされました。

 

編集部 本の中にも登場される方ですね。

 

もえ 同じ地元の高校生たちに対しては「好きなことを一生懸命やってください」と目を輝かせて言っていた拓司さん。私は、涙が止まりませんでした。このときの思いは、本の中の大きなメッセージとなっている「好きは壁を乗り越える」につながっています。

※あいサポート運動…鳥取県知事の平井伸治氏の発案で始まった運動で、「障がいを知り、共に生きる」をテーマに、障がいのある方も暮らしやすい社会を一緒につくることを目的としている。

編集部 そのメッセージを受け取って、もえさん自身に変化はありましたか?

 

もえ 「好きなこと」を堂々と言うことは、ときに恥ずかしかったりするけれど、臆せず口にして、そしてやり続けること。その大切さを拓治さんから教えられました。今の私自身も、好きな仕事があって、それを続けることができている。なんとなく働くのではなく、かみしめながら、ひとつずつの過程を愛おしく思えるようになりました。また、雑談の中で拓治さんが「壁をつくらない」と言ったことからも、ずいぶん考えさせられました。「壁をつくらない」ためには、どうしたらいいんだろう? 「つくらないように」と意識してしまうことが、そもそも壁じゃないかとか。かといって意識しないようにと思っても、また不自然…。何が正解なのかはわからないけれど、こんなふうに感じたり考えたりしていくうちに、自分なりの正解に向かっていくのかな。そんなことにも気づかされました。

 

編集部 最後に、これから本を手にするCancam.jp読者にメッセージをお願いします。

 

もえ 私が自分の子ども時代を思い出したり、拓治さんさんの話から新しい気づきをもらったように、読者みなさんにも、自分なりの「何か」を感じてもらえたら。また、主人公の桜と同じ小学生に戻って、たとえば「バリアフリーって?」など純粋な目線で読んでみるのも、また新しい気づきがあるかもしれません。大人になるほど、新しい気づきに鈍くなったり、新しい世界に踏み込むことが怖くなったりするものです。「感じる」心を大事にして、だれか他の人の立場を思いやる。想像してみる。それだけで、世界は少し変わって見えると思います。

『わたしから わらうよ』発売中
著者/押切もえ 本体価格1,400円+税(ロクリン社)

小学3年生の桜は、友だちにも家族にも気を使ってばかりの女の子。自分に自信ももてない。そんな桜が、鳥取のおばあちゃんの家にひとりで行くことに! 家族と離れ、不安と戸惑いがいっぱいの夏休みは、さまざまな人との出会い、冒険によって、桜を大きく変えることに。押切もえ自らが、執筆はもちろん表紙絵・挿絵も手がけた。

押切もえ PROFILE
1979年生まれ、千葉県出身。高校在学中から雑誌のモデルを始め、2001年22歳から『CanCam』、2007年から『AneCan』の専属モデルに。2013年長編小説『浅き夢見し』(小学館)で小説家デビュー。2015年に絵画作品『咲くヨウニ』が二科展に入選。2016年発表の2作目小説『永遠とは違う一日』は第29回山本周五郎賞候補となった。モデル業をはじめ、テレビ・ラジオ出演、絵画や執筆活動など多方面で活躍中。2016年プロ野球選手の涌井秀章さん(千葉ロッテマリーンズ所属)と結婚。最新刊は『わたしから わらうよ』(ロクリン社)。
撮影/川原崎宣喜 インタビュー/南ゆかり

 

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