「仕事の相談が苦手」なあなたに、絶対に知っておいてほしい相談のコツ【精神科医監修】

仕事をする上で避けられないのが「相談をすること」。自分ひとりでは決められないことや、先輩や上司の意見を聞きたいこと。迷い、トラブル、悩み…さまざまな「相談したいこと」が日々やってきます。

でも、つい「先輩も忙しそうだし、今相談したら迷惑なんじゃ?」「こんなこと聞いていいのかな…」「相談しても話を聞いてもらえないから、それなら自分でなんとかしたほうがいい」とモヤモヤ考えて、なかなか相談できずにひとりで抱え込んでしまう…。そんなケースはよく耳にします。

このお悩みを解決する方法について、「おおざっぱに笑って健康に生きる」をモットーに活躍する「ラフドクター」、精神科医・産業医の井上智介先生にうかがいました。

お話をうかがったのは…

井上智介先生
精神科医&産業医
「おおざっぱに笑って健康に生きる」をモットーにした「ラフドクター」として活躍中。書籍多数。近著に『がんじがらめの心がラクになる 「呪いの言葉」の処方箋 』など。

◆「相談するのが苦手」なあなたに、知っておいてほしいこと

Q.「今相談したら迷惑にならないかな?」と、どうしても相談が苦手でひとりで抱え込んでしまう癖があります。連絡するのにも「どう言ったらいいんだろう」と悩んでしまい、それなら言わずにひとりでなんとかしたほうがいいと思ってしまいますが、そろそろ限界です。改善するコツや、人に上手に助けを求めるコツ、相談されても相手が迷惑に思わない相談のしかたはありますか?

産業医・精神科医としてたくさんの方のお話を聞いているとき、常日頃、本当によくいただくのが、この「相談についての相談」です。

「相談したら迷惑になるんじゃないか」と考えている人にひとつお伝えしたいのは、原則として「人は、相談して頼ってもらえると嬉しい気持ちになる」ということです。だから、まず「相談=迷惑」の考え方で自分を苦しめる必要はありませんよ。

でも、これまでずっとお悩みだったなら、きっとこう言われてもなかなか気持ちが切り替わらないですよね。

それならば、「相談のコツを知る」と、「自分は誰かに相談してもいい、という免罪符を与えてあげること」のふたつの視点で解決していくのはどうでしょうか?

【1】「何に困っていて、相手に何を求めているのか」をセットで伝える

これが「相談」において非常に重要です。
相談が苦手な方は「起こっている事実」だけを伝える傾向があると感じます。

たとえば「仕事が多くて大変です」と言うとき。本人は大変だからどうにか状況を変えてほしいと訴えたつもりでも、「夜も遅いし、休日出勤も多いし、大変です」などと事実だけを並べられていると、聞いた側からすると「担当を変えてほしいのか、誰かをサポートをつけてほしいのか、それとも頑張れと背中を押してほしいのか」がわかりません。他にも「お客さんが怒ってるんです」とだけ言われても、言われた上司は何を求めているのか判断できません。

そのときの上司の反応としては「それで?」となってしまいがちです。この「それで?」は、突き放しているように聞こえるかもしれませんが、そうではありません。「一緒に行って謝ってほしいのか、謝り方を教えてほしいのか、過去の事例を教えてほしいのか、いったいどうしてほしいのか」を聞いています。

あなたが「相談したはずなのに、突き放されている」と感じたときを振り返ってみてください。この「事実だけを伝えて終わり」のパターンになっていた可能性はありませんか?
相談した側は「大変なことを伝えたのに、何もしてくれなかった」、された側は「何か言っているけど、何をしたらいいのかわからない」というズレが生じています。

「何に困っていて、何を求めているのか」までセットで伝えることが、相談です。

とは言っても、いっぱいいっぱいだと「いや、でも、何に困っているのかも、どうしてほしいのかも、相談の仕方もわからないくらい混乱しているんです」ということもあるでしょう。
そんなときの魔法の言葉をお伝えします。

「どこから手をつけていけばいいか困っているので、一緒に状況を整理してくれませんか」

です。これは非常に万能なセリフなので、ぜひ覚えておいてください。言われた相手も何を求められているのかわかるので、「じゃあ、ひとつずつ聞いていこうか」と親身になってくれるはずです。

また、相談が苦手な方は、面と向かってお話をすると緊張してしまい、頭が真っ白になるというケースをよく聞きます。緊急性がなければ、基本はメールで相談するようにすると、自分の頭が整理できて、まとまりやすいです。

【2】「自分は誰かに相談してもいい」という免罪符を与える

それでも、どうしても相談することに遠慮してしまう、という方におすすめなのはこちら。
「普段からこんなに頑張っているんだから、これくらい相談したって全然問題ないよな」と思えるような仕組みを作ることです。

毎日、ちょっとした親切を積み重ねて「相談してもいいんだポイント」を、意識的にコツコツ貯めておくこと。たとえば、仕事関連の人には自分から「お疲れ様です!」とあいさつをする、共有スペースの整理整頓をする、会議が終わったら会議室の原状回復をする…。そうやってポイントのようなものを貯めておくと「これだけやってるんだから、ちょっとくらい相談してもいいかな」と、相談が苦手なあなたの背中をきっと押してくれるはずです。

でも、本当はそんな免罪符を作らなくても、誰かに相談して大丈夫なんですよ。「何に困っていて、何を求めているのか」。これをセットで伝える鉄則を守ること。困ったら魔法の言葉「一緒に状況を整理してくれませんか」を使うこと。ぜひ意識してみてください。

構成/後藤香織 写真/(c)Shutterstock.com