台風ってどうして突然カーブして日本に向かってくるの?気象予報士に聞いてみたら…

夏になると発生し、私たちを困らせる厄介な存在なのが、そう、台風です。

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日本に近づいたり上陸したり、進路によっては甚大な影響をもたらす、できるだけ発生しないことを祈るしかないもの。でもそんな「台風」って、結局のところ何なのでしょうか? そして、どうして途中でカーブして日本に沿うような形で進むことが多いのでしょうか?
気象予報士の佐藤可奈子さんにうかがいました。

お話をうかがったのは…

気象予報士 佐藤可奈子さん

大学卒業後、通信販売会社「ジャパネットたかた」に就職し、テレビショッピングのMCとして商品紹介を担当。エアコンが売れ出す時期に夏の到来を感じたり、夜の冷え込みが厳しくなると羽毛布団が売れたりと、天気の影響力を生放送の通販で体感。2017年より気象予報士としてのキャリアをスタート。現在はNHKジャーナルやNHKきょうのニュースなどで天気予報を担当。掃除スペシャリストや整理収納アドバイザーの資格も活かし、快適な生活を提案する気象予報士として活躍。


Q.そもそも「台風」って何ですか?

A「熱帯の海の熱」をエネルギーに雲が発達して、渦まいている状態です。

熱帯の海上で発生する低気圧を「熱帯低気圧」と呼びます。その中で(赤道より北、東経180度より西の)北西太平洋か、南シナ海に存在し、最大風速の10分間平均が17m/s以上のものを「台風」と呼びます。

赤道付近で起きると言われますが、実は「赤道直下」では台風は発生しません。どんなに赤道上が暑くても、熱を渦にするためのエネルギーがないと台風にはなりません。赤道より少し北か南に行かないと、地球の自転による遠心力が効かないんです。

台風が発生から一生を終えるまでは、おおむね2回の進化があります。

まず「熱帯低気圧」として生まれ、それが大きくなり、10分間平均の最大風速がおよそ17m/s以上になると「台風」と呼ばれるようになります。その後日本では、北からやってくる冷たい空気とぶつかて「温帯低気圧」に変わることがあります。

一見「温帯低気圧」という名前が穏やかなのと、一般的には日本列島から離れながら温帯低気圧に変わるので、「温帯低気圧になればひと安心」のような印象で「イケイケの強いギャルがコンサバファッションの優しいお姉さんになった」くらいの変化に見えますが、温帯低気圧は台風以上に大きくなることもあるので、温帯低気圧がもし直撃すると、大きな被害をもたらすこともあります。

 

Q.どうして台風の予報円はどんどん大きくなっていくんですか?

A.進路が定まっていない証拠です

勘違いされている方も結構いるのですが、「台風が強くなるから、予報円が大きくなる」ではありません

台風の予報円は「台風の中心が70%の確率で向かう範囲」を示しているため、予想がある程度固まった翌日・翌々日程度はかなり小さい予報円が出ますが、予想が固まっていないと行く可能性が大きい地域が広がるため、予報円がどんどん大きくなります。予報円が小さいと「いつ、どこ」がはっきりしていて信頼度が高く、大きいとその逆です。
「土曜日の18時に渋谷で会おう」と誘う人(いつどこはっきり、信頼度高)と、「夏までに1回集まりたいね」と誘う人(いつどこざっくり、信頼度低)では、実際に会う確率がかなり違うようなものです。

 

Q.どうして台風はいつも日本に沿うように途中でカーブして進みがちなんですか? 日本が好きなんですか?

A.台風は自分で進路を決められず、「レール」に沿う性質があるからです

2023年の台風2号の例。こういう感じで、突然日本に向かってくる進路はよくあります。

予報円が大きくなる話と少し連動しますが、実は台風は自分では進路が決められず、周辺の気圧配置に行き先を影響される、いわば「流されやすい性格」です。沖縄の南あたりにいるときは自ら進む力を持たず「私はここで回るしかないわ…」くらいのエネルギーしか持っていないため、ほぼ停滞することもあります。ゆっくり北上する傾向にあるのは、地球の自転の関係です。

それが途中で、急に日本に沿うようにグイン! と角度を変えて近づき速度もアップするのは、太平洋高気圧という「レール」を見つけ、それに乗るからです。時計回りの風に乗るため、急に時計で言うと「1時の方向」に曲がります。
台風は海からのあたたかい空気をごはんにしているため、北上する、もしくは上陸すると自然とごはんがなくなり、衰えて消えます。
たまにある謎の進路の台風は、「同時期に別の台風が発生していて影響しあっている」ケースが多いです。2023年の台風6号は、太平洋高気圧に乗る前に、高気圧が壁となり進路を阻まれているのと、台風を動かしてくれる要素である偏西風もかなり北にあることが迷走の要因と見られています。

Column 気象予報士あるある「台風の擬人化」
ここまでも台風について少々擬人化してお伝えしてきましたが、台風を擬人化してとらえる人が私以外にも気象予報士にはそこそこいます。台風の目が大きくなってくると「この子、おめめぱっちりしてきたね!」という言葉が飛び交うこともあります。
構成/後藤香織