どうして熊谷市は猛暑になりやすいの?「夏の気温」の疑問を気象予報士に聞いてみた

夏の気温関連のニュースで、非常に有名な場所が埼玉県熊谷市。観測史上歴代1位の高温記録の41.1度が2018年7月23日に観測されたのをはじめ、日頃関東の気温を見ていても平均的にとても高い気温が予測されていることが多い場所です。

でも、どうして熊谷市は非常に高い気温になることが多いのでしょうか? 気象予報士の佐藤可奈子さんにうかがいました。

お話をうかがったのは…

気象予報士 佐藤可奈子さん

大学卒業後、通信販売会社「ジャパネットたかた」に就職し、テレビショッピングのMCとして商品紹介を担当。エアコンが売れ出す時期に夏の到来を感じたり、夜の冷え込みが厳しくなると羽毛布団が売れたりと、天気の影響力を生放送の通販で体感。2017年より気象予報士としてのキャリアをスタート。現在はNHKジャーナルやNHKきょうのニュースなどで天気予報を担当。掃除スペシャリストや整理収納アドバイザーの資格も活かし、快適な生活を提案する気象予報士として活躍。

 

Q.どうして熊谷市はものすごく暑くなりやすいの?

A.地形と都市化が影響しています

埼玉県熊谷市は、観測史上1位の気温41.1度が観測されるなど、非常に気温が上がりやすい地域として有名です。下記3つの条件が重なっているため、相乗効果で高温になりやすくなっています。

・熊谷市は関東平野の奥まったところにあるため、涼しい海風が届きにくい
・東京都心の「ヒートアイランド現象」であたためられた空気が流れ込みやすい
・山が付近にあり、風が山を吹き降りるときに空気が圧縮されて気温が上がる「フェーン現象」が起きやすい

熊谷市以外にも、同じく歴代1位の最高気温41.1度が観測された静岡県浜松市のほか、大分県日田市、群馬県前橋市など、気温が高くなりやすい場所は、「フェーン現象」が起きていることが多いです。

 

Q.「気温は平年より高くなる」というニュースを見かけました。ところで「平年」っていつですか?

A.過去30年の平均。2023年の今は、1991〜2020年分から出した平均です

1か月をだいたい10日に区切ったものを「上旬・中旬・下旬」と呼び、たとえば7月1日ならば「7月上旬」の気温を平年値として、比較しています。
この平年値は、気象庁が10年ごとに10年ぶん新しいデータを取り入れて、過去30年分の平均から算出しています。2023年の今は、1991〜2020年分から出した平年値です。
2021年5月19日から現在のものに切り替わったのですが、1981年〜2010年分から算出していた前回の平年値と比べ、年平均気温は全国的に0.1〜0.5度ほど高くなり、降水量は多くの地点で10%ほど上がりました。
次回は2031年に、2001〜2030年分のデータに切り替わります。

 

Q.夏、同じ気温でも快適な日と外に出たくない日があるのはどうして?

A.湿度の違いです。

夏は湿度によってかなり体感温度が変わります。
そこで近年導入された便利なものが、「気温・日射・湿度」をもとに算出された、熱中症予防の指数「暑さ指数」。「熱中症警戒アラート」は、この「暑さ指数」をもとに危険な日に発表されます。

日々の暑さ指数については熱中症予防情報サイトで地点ごと、時間ごとに確認できます。

同じ28度でも、湿度40〜60%程度であれば過ごしやすいと感じることもありますが、湿度100%だと熱中症の危険が跳ね上がる暑さということが示されています。
熱中症は「気温28度以上、湿度70%以上」で起きやすいので、日々のお天気ニュースで発表している熱中症警戒アラートをぜひ意識的に見てみてください。

年間平均を出すと、台風より、豪雨より、大雪より、命を落とす人が多い災害が、「高温」。暑さは音のない災害です。熱中症で亡くなる方は年間平均1000人前後です。「爪を押して、離して、3秒以上ピンクに戻らず白い場合」は脱水症状を起こしている可能性があるため、しっかりと水分を取り、涼しいところで休みましょう。

構成/後藤香織 写真/(c)Shutterstock.com