おしゃれの幅が広がる、田中絢子さん流おしゃれ哲学
身長150cm前後の小柄さんに向けて2018年にローンチされたブランド『COHINA』のディレクターを務める田中絢子さん。ブランド立ち上げ当時から、小柄さんにターゲットを絞り、妥協なく心の底からファッションを楽しめる商品づくりを試行錯誤。今では、SNSやインスタライブを中心に販売される洋服や小物が、発売直後にSold outとなることも稀ではない。
今回のインタビューでは、小柄さんから絶大な支持を集める人気ブランド『COHINA』についてうかがったVol.1に続いて、自身のファッションへのこだわりやリアルなコーデ術など、おしゃれが楽しくなるヒントについて聞きました!
週末は翌週のコーディネートを組むのがルーティン
「小柄さんから、“コーディネートを決めるのに時間がかかる…”という相談をいただくことが多いのですが、身長が低いと、スタイルが良く見えるかとか、ヘアメイクとのバランスはとれている…?と、忙しい朝の服選びはひと仕事ですよね。TPOに合った服装をパパッと決める、というわけにもいかないので、私の場合は1週間分のコーディネートを週末にまとめて組むようにしています。それをお話すると、え?大変そう!と言われることもありますが、コーディネートを考えるのは楽しいし、翌週の身支度がとてもスムーズになるので苦にならなくて。スケジュールや活動シーンを思い浮かべてコーデを考える、それが週末のルーティンになっています。
撮影がある日は着替えやすい服、久しぶりのお友達に会う日は少し大人っぽく…と、イメージを膨らませて。週末にゆっくりコーディネートを組むと、着回しやすい服や好きなデザインが分かってきたり、逆に、なんでこの服はあまり着ていないのかな? 着こなしが難しいから?と考えられたり、クローゼットの内容や似合うものを把握することができるんです。こういう色があったら良さそうだな、とワードローブに必要なものも見えてくる。着るものを決めておくと忙しい朝の時短にもなるし、写真に撮っておくのでコーディネートのストックにもなります」
週末に翌1週間分のコーディネートを決めておく、忙しい毎日を送る田中さんらしい習慣は平日の時短にも効果的。時間がなくて服選びがつい適当に…、毎日同じトップスばかり流用してる…そんな失敗も避けられるので、ファッションの楽しみも満足度も高まるはず。増えていく洋服がしっかり管理できると、出番の少ない服を把握したりクローゼットを循環させることもできるのだそう。
「なかなか着る機会のない服は、うまく着こなす方法を考えてみるのですが、何度かトライしてもしっくりいかないときはお別れをすることも。服を手放すときは素敵に着て下さる方に譲ることが多いです。クローゼットの循環をよくしておくのも大切なことなので」
ヘアメークの仕上げは…“全身を鏡に映す”がMyルール
「洋服だけでなく、メークもシーズンごとにトレンドを意識するようにしています。質感かカラーか、取り入れやすいものから試してみる。大きな変化ではなく、ちょっとしたことから始めて、少しずつ似合うものを見つけていく。あと、小柄さんはヘアの悩みも多いのですが、ロングでも前髪の分け方を工夫するとバランスが良く見えたり、小柄=ショートカットが鉄板!ということではないと思うのでいろいろと試しています」
小柄さんというだけで選択の幅を狭めがちなヘアスタイル。田中さんは前髪のアレンジやメイクの足し引きでロングヘアも素敵に魅せられる、とさまざまなアイデアを提案。全身のバランスをより良く仕上げるためにやっている、田中さんのこだわりとは…。
「全体の印象や完成度を左右しやすいパーツなので、私はヘアとリップは最後に仕上げる派です。顔だけが映る鏡ではなく、全身が映る姿見を使ってコーディネートとのバランスをチェックします。そうすると、“前髪を分けて抜け感を出そう”とか、“ボリュームのあるコーデだから髪をまとめよう”、“カジュアルだからヘアオイルを多めにつけてツヤ感を出してみよう”と、いろいろなアイデアがわいてきます。
小柄さんに限らず、メイクがうまくできた!と思っても、外出先で全身を鏡に映すと、あれ?と思うことってありませんか? ヘアメークとファッションが合っていない、バランスが悪い!など、ちぐはぐな感じがしたり…。身支度をするときのポイントは、“引いて見る”こと。全身を確認して、帽子を足したり靴を変えたり…そんな最終調整がとても大切だと思います」
ヘアメイクの仕上げにも全身が映る姿見を使う、という田中さん。“引いて見る”習慣こそがおしゃれのレベルアップに繋がるのだそう。今でこそ小柄さんのスタイルアップ術に定評のある田中さんも、ファッションに迷走していたころは失敗の経験も多かったという。
「似合うものが分からなかった頃は、かわいい系に偏ったファッションをしていたのですが、当時の私は“小柄さんはかわいい服しか似合わない”という思い込みが強すぎたな、と今は思います。引いて全身を見る習慣もなかったので、巻き髪だけが目立っている、眉毛のメイクと服が合っていない、なんてこともざら…。ゆるっとした服や大人っぽいシンプルカジュアルも似合わないと決めつけていましたし、失敗から学んだことはたくさんあります。ブランドの立ち上げをきっかけに、ファッションへの思い込みをやめてみたら似合うものが確実に増えたんです」
「むしろ、苦手なアイテムが得意なものに変わったりも。書籍の中でも、小柄さんが苦手としているアイテム、例えば、デニム・Tシャツ・シャツといったベーシックアイテムをあか抜けて着こなす方法を紹介していますが、小柄であることを受け止めたうえでどう取り入れるかは、コツさえ掴んでしまえば難しいことではないんです。私自身、堅く見えたり借りてきたみたいに見えてしまって、以前はジャケットを苦手としていましたが、選び方やあか抜けて見える着こなしがわかってからはジャケットの収集癖が止まりません(笑)。
ジャケットは、小柄さんの体型を意識してやや落ち感のある素材を選ぶ、肩位置や袖丈が合うものをきれいに着る、メイクをいつもより少し強くしてリップだけ暗めにする…など、ちょっとしたポイントに気をつけるだけ。インナーとのバランスやヘアを工夫して、堅い印象になりすぎないよう気をつけています。あとは、シーズンごとに気になるトレンドカラーを取り入れて、カチッとしたコーディネートをやわらかく魅せられたら、と」
自身のブランドを立ち上げ、好きな服を着る喜びを身をもって体感する日々。諦めることより挑戦する気持ちを大切にした結果、ファッションに悩む小柄さんに“着たい服”を届ける、という夢も叶うことに。小柄さんならではの視点を活かした田中さんの服づくり、ファンが絶えないその理由は…?
小柄さんのこだわりを詰め込んだCOHINAの新作
「COHINAで毎シーズン人気のトレンチコートは、サイズ感だけでなく細かいディテールにたくさんのこだわりを詰め込んでいます。身長が148cmの人と153cmの人では同じ小柄さんでもシルエットが変ってきますし、体型によっても似合うデザインは異なります。
小柄さんの服=着丈が短い、サイズが小さい、という単純な発想では“似合う”服は作れないので、デザインはミリ単位で調整をしています。襟の幅を狭めに、コートのボタンを小さめにして”着られてる感”のない仕上がりに。
あえて袖丈は少し長めにしているのですが、そのゆとりは小柄さんにも必須。全体的にコンパクトにするだけではこなれた雰囲気にならないので、部分的にオーバーサイズも取り入れています。
後ろ姿は、ベルトの位置を高めに設計。ロング丈のアウターをすっきり着こなせるアイデアを散らして、一人でも多くの小柄さんに春のおしゃれを楽しんでもらえたらうれしいです」
小柄さんが苦手とする、ベーシックやシンプル系のアイテムも積極的にデザインしているCOHINA。選び方や着こなし次第で“なりたい自分に近づける”という信念のもと、毎シーズン大ヒットアイテムを展開中! 発売がスタートした春夏の新作も気になるところ…♡
次回も、“COHINA”ディレクターの田中絢子さんが、お気に入りのインテリアやクローゼットの整理術、失敗しない買い物テクなど、自身のおしゃれ哲学を語ってくれます! お楽しみに。
<INFORMATION>
ブランドの立ち上げから5年、多くの小柄女性から愛されるブランド“COHINA”。たくさんの経験とリアルな声から導き出されたノウハウをまとめた初の著書「148cmディレクターと学ぶ 小柄が輝くおしゃれの本」が、主婦の友社より発売中。総勢1,000名の小柄女性からリサーチした、ファッションの知恵やメソッドは必見!