「政治の話って、シンプルに楽しい!」と実感。トラウデン直美×アクティビスト・能條桃子さん【SDGs連載】

アクティビスト・能條桃子さんと語り合う20代と政治

今、世界中で注目されている「SDGs」という言葉。これは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の頭文字を合わせたもので、世界193か国が貧困や環境問題の改善を2030年までに達成するために掲げた17の目標のこと。2020年からスタートした連載では、CanCamモデルのトラちゃんことトラウデン直美が「SDGs」について読者の皆さんと考える機会を作っています!

今回は、様々な社会課題に提言を行っている、同世代のアクティビスト・能條桃子さんをお招きして〝政治〟についてとことん語り合いました! 政治って、堅くて難しそう…そんなイメージを一新する関わり方を、政治・社会の教科書メディアを運営する能條さんと一緒に探ってみました。

能條 桃子さん/デンマーク留学などを機に、2019年に若者の政治参加を促すSNSメディア「NO YOUTH NO JAPAN」を設立。慶応義塾大学大学院で学びながら団体の代表理事を務め、社会問題について意見を発信している。
トラウデン直美/高校時代に環境問題に興味をもって以来、エシカルな生活を模索しているCanCam専属モデル。『SDGs』にまつわる勉強や発信、取材に力を入れ、情報番組コメンテーターとしても活躍。2022年3月慶應義塾大学法学部を卒業。
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社会は誰かが勝手によくしてくれるわけじゃない

トラ 若い人の政治離れは何年も前から話題ですが、ど真ん中で取り組んでいる能條さんに、ぜひお話をうかがいたくて。

能條 うれしいです! CanCam読者の方にも興味をもってもらえたらいいな。

トラ 能條さんは、私たちが生きていく上で政治に関心をもつことの大切さを、どのように考えていらっしゃいますか?

能條 政治にできるのは、社会ルール=法律をつくること。そして、お金をどれだけ集めてどう再分配するか決めること。みなさんも社会に対してモヤモヤすることっていっぱいあると思うんですよ。でも、実は政治の世界にいる人は気づいていないことが多くて。社会って、誰か偉い人が勝手にいい感じにつくってくれるものじゃないから、自分から「これをやってほしい」と伝えなきゃ変わらない。そういう思いで活動しています。

トラ 今の政治は、高齢の方向けの政策が多い印象です。

能條 そうなんですよ。政治家の事務所でインターンをやってみたら、候補者が30代でも支援者は高齢の人ばかりで。そうすると、「票をとるためには高齢者向けにこういうことを言ったほうがいい」となってしまうんです。若い人が関心をもたないと、政治家も政策を変えられないんだなと気づきました。

トラ 大学で政治学を学んでいても「投票しても世の中変わらないから選挙には行かない」という人がけっこういます。でも、話を聞いてみると社会課題への思いはあるんですよね。

能條 社会課題を考えることって実はめっちゃ政治! 自分の生活や人生が政治とつながっている実感をもてるといいのかな。

若者の投票率が80%以上のデンマークに学ぶ政治の本質

能條 今は社会課題を「ビジネスで解決しよう」と、就活でも自分の課題感と合う会社を選びたい人は増えていますよね。

トラ 私も含め、政治で解決できるという意識は薄いのかも?

能條 18~24歳の投票率が80%を超えるデンマークに留学して驚いたのが、何か問題があると同世代でも「これは政治家に言ったほうが早いね」という話になること。例えば、デンマークでは医療費が無償だけど、メンタルヘルスに関しては有料でした。でも、10代、20代はむしろメンタルヘルスの疾患が多い。無償にすれば専門家のサポートを受けやすくなるという発想で若い人たちが政府に働きかけて、実際に制度が変わったんです。それを見て羨ましいな、日本でも実現したいなと。

トラ すごい! 日本ならではの難しさはありますか?

能條 やっぱりデモの文化はないですよね。小学生の頃から「訴えたいことがあればデモに参加すればいい」という意識がある国と比べると、開かれていなくて参加しづらい。

トラ たしかにヨーロッパだと街の人が窓から応援していたり、散歩ついでにふらっと参加したり、変な目で見られることもないんですよね。私は日本で育っているので、小さい頃、選挙のときになにげなく母に「誰に投票したの?」と聞いたら、「そういうことはあまり人に話さないものなんだよ」と、教えてもらえず。どこか政治はタブーという意識があります。

能條 デンマークでは家族はもちろん、学校の先生も授業で気軽に話題にするんです。焦って「そんなこと生徒に言っていいんですか?」と先生に質問したら、「僕が言ったとおりに投票するほど子供たちはバカじゃないよ」と返ってきました(笑)。

トラ わー! 子供を信頼しているんですね。

能條 日本の感覚だと悪い影響を受けちゃうんじゃないかと心配だけど、ちゃんと自分で考えられるように育てようとしている。意見と人格を切り分ける、というベースがありますね。いちばん衝撃的だったのが、41歳の女性が首相になって、「すごい!」と感動していたら、次の日のニュースで「若い」とか「女性」とか「2児のママ」「旦那さんはどんな人」なんてことは全然話題になってなくて、淡々と政策を取り上げていたんです。

トラ 日本だと報道にゴシップ感が出てしまうけど、それも政治で変えていける部分。メディアのあり方も問われそうです。

心に浮かんだ違和感を大切に、自分の意見をもとう

トラ メディアでコメントすると、上の世代からは「若い女性が社会に意見するなんて」という見方を感じることも。若者代表でも女性代表でもなく、一個人の意見なんだけどなと思います。

能條 すごく共感します。でも、ラベルをつけないと理解できないくらい、政治の世界に若者も女性もいないんですよね。

トラ もっともっと発言する人が増えていくといいな。だからこそ、「若者だから政治に関わらなくてもいっか」というレッテル貼りを自分にもしちゃいけないなと思います。NO YOUTH NO JAPANでは、発信時に気をつけていることはありますか?

能條 「こう思ってほしい」と誘導するのではなく、「こういうことがあるよ」という提起で留めています。政治や社会を考えるには自分のスタンスをもつことが必要ですが、育った環境で価値観はまったく違うので、全員に合うひとつの正解はない。誰しも偏見や間違うことはある。私自身、違うと気づいたときに直そうと思える素直さをもっていたいなと。

トラ 私も自分の意見を言う怖さはずっとあるし、傷つくこともあるけれど、「あなた、こういう面は知らないでしょ?」という指摘は勉強の機会をもらえたと考えるようにしています。ただ、「現状に満足しなさい」と言われたら、何も変えることはできない。今あるものに感謝することと同じくらい、これはおかしいんじゃないかと問うことも大事だと思うんです。

能條 本当に違和感って大切! 若い人が違和感を抱きやすいのは、現時点でいちばん新しい教育を受けているから。一方で、違和感を捨てるのが上手な人ほど社会に適合できてしまう。

トラ 今の感覚を忘れないでいたいですね。

能條 環境やジェンダーの問題も、私たちの生活すべてが関係しているもの。敵を見つけて倒せばいいわけではなく、自分もシステムの中に組み込まれているんですよね。

トラ ゲームなら、「スマブラ」ではなく「あつ森」みたい!

能條 まさに! 仲間になって一緒に社会をつくっていきたいです。NO YOUTH NO JAPANの現メンバーは約70人、学生だけでなく、美容師さんや看護師さん、海外在住者、LGBTQの当事者もいます。気づくポイントがみんな違うので、ありがたくて。

トラ 多様な価値観で、中立の目が磨かれていくんですね。

能條 ひとりでどうにかできることじゃないけど、日本が好きだからこそ、よりよくしていけたら。以前は「意識高いね」と言われて距離を感じることも多かったのですが、活動を始めて2年のうちに友達が政治についてすごく話しかけてくれるようになったので、少しは前に進めてるかな。

トラ 友達の困りごとも政策で解決できる可能性がありますよね! 選挙にはどう向き合っていくのがいいでしょうか?

能條 すべて理想の政策を選ぶなら自分が選挙に出るしかないけれど、まずはメインの政策で応援したい候補者を見つけてみてください。若い人が政党の名前を知らなくてもスタンスをもてるように、私たちも情報を届けていきます!

インスタで解説!意外と身近な政治トピック

世の中で起きていることを若者目線で!

能條さんが立ち上げた、NO YOUTH NO JAPAN(@noyouth_nojapan)では、政治や社会の課題をわかりやすく発信。トラちゃんも大学2年の頃から情報源にしているそう。「ここで知ったトピックをさらに調べてみると、自分事になって考えがより深まります」(トラ)。

若者の投票率は約3割。高齢者の声が届きやすい現状

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自分から知ろうとすれば、政治って実は身近で楽しい!

私自身、大学の政治学科で勉強しているつもりでも、今の政治に心がグッと寄っていかない部分がありました。でも、能條さんとお会いして「政治の話って、シンプルに楽しい!」と実感。タブーだと思わずに、身近なことがどう政治に関わってくるのか、自分から知るために意識していきたいです。

目指せ「SDGs」!トラちゃんの今月の一歩

■木を集めて、火をおこし焚き火でごはんづくり♪

自然と触れ合って雄大さを感じています。仕事で行ったキャンプでは、着火剤などを使わずにイチから火起こしを体験。エネルギーを生み出すことの大変さが身にしみました!

今月の1冊は…『世界史を大きく動かした植物』

一粒の麦から文明が生まれ、時には戦争の引き金にもなった植物。その視点で世界を見ると、人類の歴史や食への見方が変わって面白い! 

著:稲垣 栄洋/¥1,540/PHP研究所
2021年CanCam11月号「トラウデン直美と考える 私たちと「SDGs」より」 撮影/田形千紘 スタイリスト/鈴木千春 ヘア&メイク/秋山 瞳(PEACE MONKEY) モデル/トラウデン直美(本誌専属) 構成/佐藤久美子 WEB構成/坂元美月 ◆この特集で使用した商品はすべて、税込み価格です。