【トラウデン直美×軍地彩弓さん】好きだと誇れるものを持つのがカッコいい。コロナ禍で変わった”ファッション観”

トラウデン直美×軍地彩弓さんの「ファッションとSDGs」

今、世界中で注目されている「SDGs」という言葉。これは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の頭文字を合わせたもので、世界193か国が貧困や環境問題の改善を2030年までに達成するために掲げた17の目標のこと。去年からスタートした連載では、CanCamモデルのトラちゃんことトラウデン直美が「SDGs」について読者の皆さんと考える機会を作っています!

今回のテーマは、コロナ禍で変わりつつあるファッションについて。ファッション業界を見つめ続け、エシカルな知識も豊富な軍地彩弓さんをお招きして語り合いました!

(右)軍地彩弓さん/雑誌のエディトリアルアドバイザーや、ドラマ・映画のファッション監修、企業のコンサルティング、情報番組のコメンテーターなど、おしゃれにまつわる様々な分野で活躍!
 
(左)トラウデン直美/高校時代に環境問題に興味を持って以来、エシカルな生活を模索しているCanCam専属モデル。『SDGs』にまつわる勉強や発信、取材にも力を入れている。環境省サステナビリティ広報大使。現在慶應義塾大学法学部に在籍中。

おしゃれは、もっとライフスタイルの一部になっていくはず

軍地 トラちゃんお久しぶり。以前ファッションショーでお会いしたとき、「いつかエシカルなファッションの話についてじっくり語りましょう」ってお話ししましたよね。

トラ あの約束を叶えたくて、軍地さんを連載にお招きしました! またお会いできて、すごくすごくうれしいです♡

軍地 私も再会できてうれしいです。しかも今日は“自分なりのサステイナブルファッションを身につける”っていうドレスコードがあったので、よりウキウキしました。

トラ 私は、サステイナブルな取り組みをしているブランドさんのアイテムをお借りして身につけてみました! そういう企業を応援したくて。軍地さんのワンピースもとっても素敵ですね。

軍地 この服は大好きな『KEITA MARUYAMA』のもの。どの服もずっと大事にしていて、ていねいにクリーニングしたりお直ししながら使い続けているんです。

トラ 大事に長く使うのも、エシカルですもんね! そういえば最近、急にみんながサステイナブルファッションに注目するようになったなって感じていて。軍地さんはいかがですか?

軍地 生活が一変し、前よりさらに意識が高まっています。ライフスタイルも、エシカルな方向に一気にシフトチェンジしました。コロナ禍によって一度立ち止まって考える時間ができ、「このままではいけない!」と思うきっかけになったんです。

トラ 私も今、ライフスタイルを含めたファッションについて興味があるんです。ただかわいいを消費するファッションは終わりを迎え、エシカルな考え方や生活がきちんと落とし込まれたファッションが大きな価値を持っていく気がしています。

軍地 これからは、今以上に心の充足が求められるようになり、自然とサステイナブルな服が増えるはず。最初は矛盾をはらみ表面的なものもあるかもしれませんが、まずは始めて積み重ねていくのが大事かな。人の考え方も流通する衣服も一気にすべてを変えるのは難しいですが、エシカルな活動を地道に続け、段々とよい連鎖を広げることは可能なはず。

トラ すでに今、ファッション業界は変わり始めていますよね! 20代の女のコたちも、おしゃれについて改めて考えている人は多いなって、SNSなどを見ていて感じています。

軍地 これからのファッションはどんなふうに変わっていくのか…ふたりでもう少し深く考えてみましょうか。

トラ ぜひ! 具体的な例なども教えてください!

ファッションと環境問題~実はこんな現状が!~

■服の洗濯によって、海にマイクロプラスチックが流れている!

ゴミだけでなく、衣服の洗濯もマイクロファイバーが出る原因。現在、河川や海洋のプラスチック汚染が深刻化し、対策を講じないと2050年までに海洋中に存在するプラスチックの重量が魚の重量を超えるとも言われている。

■みんなが手放した服の68%は、ゴミになっている!

日本の家庭で廃棄される服は、年間約48万トン。平均すると、1日あたり大型トラック約130台分の服が焼却・埋め立て処分されている計算になる。廃棄された衣服の処理も環境負担になっており、廃棄量の削減が今後の課題。

■服1着を作るのに、こんなにも資源がかかる!

洋服の製造工程では、様々な材料を使うだけでなく、原料となる植物の栽培や染色などによって大量の水が使用されている。その量なんと、服1枚あたり浴槽約11杯分! さらに原料調達や製造段階でCO2が排出され、余った生地などが廃棄物に…。ちなみにこちらも服1枚あたり、500mlのペットボトル約255本製造分のCO2が排出されている現状が。服の供給量は年々増え続けており、それに伴い環境負荷も増え続け、問題になっている。

トラちゃんと軍地さんが予想! SDGsなファッションの未来予想

心を豊かにしてくれるファッションに価値が出る!

トラ ひと昔前まではダイヤモンドや毛皮みたいな、何かあったら換金できそうなザ・高いものに価値がありましたよね。でも、もうそういう時代じゃないなって。今後、ラグジュアリーアイテムってどうなるんでしょう?

軍地 高価なものはなくならないと思いますが、よりエシカルな素材や製作法にこだわった“精神性がラグジュアリーなもの”に価値を感じるようになるはず。さらに、大切な人から受け継いだ思い出のある品も、個人的なラグジュアリーとして大事にされる気がしますね。

軍地さんのお気に入りは、リサイクルレザーを使った『メゾン・マルジェラ』の“レチクラ”バッグ。エシカル素材で作られたこのバッグは、「世界に数個しかない希少性もあり、使うたび出合えたことに感謝する特別な品です」(軍地さん)

トラ おばあちゃんの形見のアクセサリーをよくつけているのですが、普通のアクセサリーをつけるより、なぜか心が豊かになる感じがしていました! 私もいつか誰かに素敵なものを譲り渡せるように、いいものこそお手入れしながら使おうって決めてます。

軍地 次の世代につなげるために、いいものを買って大事に使うという考え方も支持を集めそうですね! 人生の価値って、心の中に“自分の満足”をどれだけ詰められるかにある気がします。天国にはお金も服も持ってはいけないからこそ、心に豊かさを残せるストーリーのある品を身につけて大事にしていきたいですね。

自分に必要不可欠なブランドを着ることこそおしゃれ

軍地 コロナ禍になってから、エッセンシャル(必要不可欠な)という単語をよく聞くようになりましたよね。ファッションの分野では、“自分にとって本当に必要不可欠な服とは何か”を、多くの人が改めて考え、その結果に従って買い物しているように感じています。

トラ 私も、なんとなくで買い物しないように前より一層気をつけるようになりました。

軍地 やはりトラちゃんもそうなんですね。私も実は、昨年引っ越しする際に洋服の棚卸をしてみて、同じようなことを思っていたんです。長く使っているものや今後も使い続けたいと感じる服は、作り手の思いを知って手に入れた思い出深いものばかりでした。これからは、作り手の考え方に賛同できるブランドのものだけを買うようにしていこうと思っています。

トラ 時代の流れ的にも、トレンドものを持っていないと恥ずかしいではなく「好きだって誇れるものを持つのがカッコいい!」っていう風潮になっている気がします。適当な服をどんどん消費するより、愛すべきブランドの商品を買って大切に着るほうがおしゃれって時代になっていきそうですね!

仮想空間でもおしゃれをしよう!服がつなぐネットコミュニケーション

軍地 コロナ禍で出かける機会が減り、今まで以上に“おしゃれの重要性”に気づくことがありました。久しぶりに誰かに会うとき、「何を着よう?」ととてもワクワクしている自分がいたんです。

トラ ファッションって、実はコミュニケーションにも関わっていますよね!

軍地 ファッションは元々自分を表現するための大切なツールで、人とのコミュニケーションをさらに楽しくするものだったのですが、慌ただしい生活でそれを誰もが忘れかけていた気がします。でも、ニューノーマルな暮らしの中で、改めてその重要性をみんな思い出したはず。ネットでは、アバターのファッションアイテムを人気ブランドが手がけ、大人気になっているんです。

着せかえアプリ『ポケコロ』と ファッションブランド 『KEITA MARUYAMA』の コラボレーション
着せかえアプリ『ポケコロ』とファッションブランド『KEITA MARUYAMA』のコラボレーションが話題に!実際のブランドアイテムが、アバター用の着せ替えアイテムになりました(アイテムの販売は終了しています)。/© cocone corporation,©KEITA MARUYAMA

 
トラ おしゃれから話が弾むこともたくさんあるし、バーチャルの世界のファッションは今後もっと発展しそうですね! 仮想空間のファッションアイテムは、エコの観点からみてもメリットが多そう。いつかは、アバター服でおしゃれするのが当たり前になるかもしれませんね。

ロングライフなモノ&サービスが増えていく!

トラ 洋服って、直しながら使うほど愛着が出ますよね。

軍地 私もお気に入りのものは、必ず直しながらずっと使い続けています。さらに最近はファッションアイテムがムダに傷まないように配慮するようになりました。

トラ そういえば最近、買った後も商品を修理してくれるブランドが増えていますよね。

軍地 作り手と消費者の関係性も変わってきていて、売った後から始まるつながりにもスポットが当たるようになってきたんです。最近感動したのは『M.HIRAMATSU』のアイテム。刺しゅうを取り外して服と別々にメンテナンスできるように作られていて、さらに刺しゅうが傷まないようにクリーニングしてくれるお店も教えてくれるんですよ。

『M.HIRAMATSU 』

M.HIRAMATSU』 のファッションアイテムは刺しゅう部分を取り外して洗え、長く愛用できる工夫が! インドの刺しゅう職人の作品を持続可能な形で紹介したいという思いを込めて作られたブランド。

トラ それは素敵なアイディアですね! そういう服がもっと増えたらいいな。

軍地 日本には古くから、循環型社会が根付いていました。それが今、最新技術と掛け合わされて発展しています。これから私たちは、便利なものをある程度は残しつつ、ていねいな暮らしをだんだんと取り戻していくのでしょう。

トラ それって、「SDGs」が掲げる目標により近づくために必要なステップな気がします!

ファッションって、思っているより重要!

衣食住の3つの柱に入っているくらい、ファッションって生活に必要なもの。欲望のままに食べたら太るように、ファッションも欲にまかせて消費したらダメなんじゃないかと思います。自分を好きでいるために、私たちは作られ方や捨てた後のことまで考えて、ヘルシーにおしゃれをしていこうね♡

【トラ】ワンピース¥67,100(アナ スイ ジャパン<アナ スイ>)、靴¥16,500(シードコーポレーション<ヴェジャ>)、ピアス¥8,800・チャーム[片耳ずつ]各¥7,150(ノジェス)【軍地さん】すべて本人私物
 

目指せ「SDGs」!トラちゃんの今月の一歩

今月の1冊は…『女たちのポリティクス 台頭する世界の女性政治家たち』

『女たちのポリティクス 台頭する世界の女性政治家たち』

近年増えてきた“政界の女性指導者たち”が、男社会と言われる政治の世界でいかに闘ってきたか解き明かす評論エッセイ。

著:ブレイディみかこ/¥990/幻冬舎

■育てている野菜、たくさん収穫できました♡

収穫した野菜を使って作った料理

気温が上がり、通っている農園の野菜がグングン成長! 収穫したナスやピーマンなどで料理しました。地産地消する旬の野菜って、エコだし新鮮で美味しくて素晴らしい♡

■お洗濯で使える「SDGs」なアイテムGET

洗濯ネット

洗濯のときに、マイクロプラスチックなどの繊維くずが出るのを防ぐネットを使い始めました。ネットのおかげで服も傷みにくいし、海洋汚染も低減できるし、いいことづくめ。

コロナ禍で変化した価値観は、生活様式だけでなくファッションにも当てはまるはず。トラちゃんと一緒に、もっとSDGsについて考えてみたい! という方は、ぜひ雑誌CanCamで連載中の「私たちとSDGs」もチェックしてみてくださいね♪ 

身近に、わかりやすく。SDGsをもっと知る!>

CanCam9月号「トラウデン直美と考える 私たちと「SDGs」より」撮影/資人導(vale) スタイリスト/鈴木千春 ヘア&メイク/MAKI モデル/トラウデン直美(本誌専属) 構成/衛藤理絵 Web構成/平田真碧
◆この特集で使用した商品はすべて、税込み価格です。